#279 前額面のパフォーマンスUPのために、まずは矢状面メインのストレングスエクササイズで筋力を上げてみる、という考え方

公開日: : 最終更新日:2015/08/07 S&Cコーチとしての思考, プログラムデザイン, 競技特異性


 

20120105 Tim Hardaway Jr vs Victor Oladipo

 

前額面における動き、つまり横方向の移動能力が重要な競技は色々とあります。じゃあ、前額面におけるパフォーマンスを向上させるため、サイドランジ等の前額面メインのストレングスエクササイズをガシガシやらせるのかというと、私はそうでもありません。

むしろ、矢状面メインのストレングスエクササイズ(例:スクワット、デッドリフト)をガシガシやってベーシックな筋力を上げておく戦略を取ります。そのうえで、前額面の動きを直接鍛える時は、横方向のジャンプ系エクササイズを用いてパワーを鍛えたり、スライドボードを用いて持久力を鍛えたり、という形で、向上させた筋力を前額面での動きに転化させていくイメージです。

なぜ、前額面のパフォーマンスUPのために、サイドランジのような前額面メインのエクササイズをガシガシやらせないのか、について考えてみます。

 

前額面メインのエクササイズをガシガシやらない理由

①筋力向上のポテンシャルという点で矢状面メインのエクササイズより劣る

サイドランジ等は横の動きに特異的に見えるかもしれません。しかし、スクワットやデッドリフト等の矢状面メインのエクササイズと比べると、扱える重量や可動域が圧倒的に小さいため、単純な筋力向上効果という意味でのポテンシャルで劣ります。だったら、筋力向上に適したスクワットやデッドリフトをガシガシやって筋力を上げておいたほうが、はるかに効果的だし有効な時間とエネルギーの使い方だと私は考えます。

 

②横方向の移動は股関節外転よりも股関節伸展がメインの動き

先日もTwitterでつぶやいたのですが、横方向の移動はパッと見、股関節外転が重要そうに見えます。そこで、前額面メインのサイドランジ等のエクササイズを実施して股関節外転の筋力やパワーを直接的に鍛えれば、パフォーマンスUPに直結しそうな感じがします。

しかし、横方向の移動は実際には股関節伸展がメインの動きなんです。そのような考え方をサポートする研究データも存在します(例えばコレとかコレ)。


ということは、筋力向上効果のポテンシャルがはるかに高い矢状面メインのスクワットやデッドリフトを使って股関節伸展の筋力を向上させることが、前額面でのパフォーマンス向上に繋がりうるということです。つまり、見た目が似ていない矢状面エクササイズを用いることで、前額面でのパフォーマンスUPを達成できる可能性があるのです。

これまでも私は、見た目が似ているかどうかはトレーニング効果とは関係ないという主張をしてきましたが、前額面でのパフォーマンスUPというテーマについても、あまり見た目の特異性とか類似性にこだわりすぎるのはどうなのかしら?と思うのであります。

 

③力の発揮方向&負荷がかかる方向が異なる

横方向に移動する場合、地面に対して発揮する力のベクトルをできるだけ寝かせて、水平成分を大きくしてあげることが重要です(もちろん、自体重を支えるために必要な最低限の力を垂直方向に発揮したうえでの話です)。しかし、サイドランジ等で負荷を増やすためにバーベル等の重量を担いでしまうと、水平方向よりも垂直方向の負荷が増してしまいます。その結果として、見た目(kinematics)が似ていたとしても力の発揮方向(kinetics)は実際の動きからはドンドン離れてしまいます。

したがって、実際の前額面のパフォーマンスとの動きの類似性を根拠にサイドランジのような前額面メインのエクササイズを選択するのは、ナンセンスです。だってkineticsが異なるのですから。それも、負荷を増やせば増やすほどkineticsが変わってしまうのです。

動きの類似性という理屈が失われてしまったならば、筋力向上効果のポテンシャルで劣る前額面メインのエクササイズをスクワットやデッドリフトよりも優先する理由は見当たりません。

※ちなみに、「ケーブルやスレッド(そり)等を用いて水平方向に負荷を加える前額面でのエクササイズを採用すれば良いのでは?」という考えもあるでしょう。個人的には、それだったらまだ考える余地はあるかなと思います。例えば下の動画みたいなやつとか。

 

 

まとめ

ということで、私が前額面でのパフォーマンスUPのために用いる戦略は:

  • 矢状面メインのエクササイズをガシガシやって筋力を鍛える
  • 横方向のジャンプやスライドボードを用いて、筋力を前額面でのパワー等に転化させる

ということに今のところは落ち着いています。いかがでしょうか?

 

 

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【編集後記】

腰痛は思ったほどひどくなく、RDLみたいに上体を前傾させるエクササイズ以外は、そこそこやれています。腰に負担のかからないエクササイズを選択する時に頭に入れているキーワードは「モーメントアーム」です。モーメントアームについても将来、ブログで解説できればと考えていますが、まだどんな感じで書こうか自分の中でまとまり切っていないので、もうしばらくこのネタは寝かせておこうと思います。

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  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

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