ボックスジャンプは着地衝撃による筋や関節へのダメージを最小限におさえつつ、ジャンプ動作をトレーニングできるエクササイズです。
ボックスの上に乗るという目標があるのもこのエクササイズのミソで、ただ単純にその場でジャンプをするよりもモチベーションがUPする可能性があります。
このボックスジャンプで世界記録と主張しているパフォーマンスの動画を発見しました。
ただ単純に見世物として見るとスゴイな〜という感想を持つのですが、S&Cの専門家として見ると、いろいろと考えるところがあります。
ボックスジャンプでよくある問題点
上記の動画は1つの例ですが、他にも共通してよく見かけるボックスジャンプの問題点を挙げます。
- 問題点①:ジャンプの高さだけでなく、股関節屈曲の柔軟性&筋力の勝負みたいなところがある
- 問題点②:ボックスの高さが足りなくなって、バンパープレートを積み重ねている
- 問題点③:飛び乗った後に、飛び降りている
まず問題点①について、ジャンプ能力がまったく同じアスリートが二人いたら、股関節屈曲の柔軟性&筋力の高いアスリートのほうがボックスジャンプ勝負には勝つでしょう。
でも、そもそもアスリートがボックスジャンプを実施する場合、ジャンプ能力や下半身トリプルエクステンション動作における爆発的パワー向上が目的のはずなので、股関節屈曲を使ってより高く足を引き上げることができるかどうかはそれほど重要ではないはずです。
逆に、上記の動画の着地の瞬間を見るとあまりにも不自然な体勢での着地となり、限界ギリギリの所でパフォーマンスをしているという事を考えると、ケガにつながるような気がしてなりません。
上記の動画の人の場合は、ボックスジャンプをトレーニング手段ではなく1つの競技として捉えているフシがあるので、その場合は、他の人よりも高いボックスに飛び乗れれば何をしてもいいとは思いますが。
問題点②については、単純に崩れたらあぶね~という感想です。
問題点③については、着地衝撃をおさえるためにボックスジャンプをやっているのに、飛び降りたら意味無いじゃんという感想です。
これまた、上記の動画の人の場合は、着地衝撃をおさえるためにボックスジャンプをやっているのではなく、高いボックスに飛び乗ること自体が目的になっているので、当てはまらないかもしれません。
しかし、トレーニング手段としてボックスジャンプを用いているアスリートの場合は、飛び降りないほうがいいケースが多いと思います。
じゃあどうすれば良いのか?
上記の問題点を解決するために私が考える解決策を紹介します。
- 解決策①:ボックスジャンプの試技成功の条件を「着地時のスクワットの深さがパラレル以上」とする
- 解決策②:バンパープレートを使わず、安定したボックスのみを使用する
- 解決策③:飛び降りない
まず解決策①について、この方法は、パワークリーンとクリーンの違いを定義する時にキャッチ姿勢の深さがパラレル以下か以上かで判断するのと似ています。
着地時の姿勢があまりにも深すぎた場合は失敗試技とみなすことにより、股関節屈曲の柔軟性&筋力が関係なくなるし、変な姿勢で着地してどこかを痛めることもないでしょう。
たとえボックスの上に着地できたとしても、上の動画のような着地姿勢であれば「アウト!!」としてしまえばいいのです。
解決策②について、解決策①のような条件を導入すれば、そもそもそんなに異常な高さを利用する必要がなくなるので、動画のようにバンパープレートを高く積み重ねる必要もなくなります。
解決策③について、まあ当たり前のことです。
たとえば、着地するのに使うボックスの横にそれよりも低いボックスを用意しておいて、階段を降りるような形にすれば飛び降りる必要はなくなります。
あるいは、着地したボックスの上で一度お尻をついて、そーっと降りるのも良いでしょう。
まとめ
1つのパフォーマンスとして見ると上の動画は面白いです。
ボックスジャンプ自体が目的となっていて、多少のリスクを覚悟のうえで世界記録を目指すのであれば、私としては文句を言うつもりは一切ありません。
しかし、S&Cコーチとして、アスリートをトレーニングする手段の1つとしてボックスジャンプを取り入れるのであれば、ケガのリスクを最小限に抑えつつトレーニング効果を高める事を考える必要があるでしょう。
2019/9/26追記:必要以上に高いボックスに飛び乗ろうとすると起こりうるリスクがこちらです↓
Looking like a folding chair pic.twitter.com/JfLwXOHAKa
— Barstool Sports (@barstoolsports)