#353 学術論文を批評的に読むということ①


 

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3週間のリオ出張から帰国後、ドッと疲れが出て体調を崩し、1週間ほど寝込んでいました。そのため8月中はブログの更新が滞りました。ネタが尽きたっていうのもありますが・・・。

 

 

学術論文を批評的に読む具体例の紹介

さて、私は以前から「S&Cコーチも学術論文を自力で読めるようになりましょう!」と啓蒙してきました。そして、そのためには以下の4つのステップを踏む必要があると説明しました(#338 S&Cコーチとして学術論文を読めるようになるまでのプロセス):

  1. 英語の文章を読んで意味を理解できる
  2. 「学術論文」という特定のタイプの文章を読める
  3. 論文を批評的に読んで自分なりの解釈をする
  4. S&Cコーチとしての立場で、研究結果を現場で活用できる

 

このうち、3つ目のステップである「論文を批評的に読んで自分なりの解釈をする」は、大学院で自身で研究をした経験がないと、なかなかどういうことなのか理解するのが難しいです。しかし、このプロセスをパネルディスカッション形式で実践している動画が公開されているのを発見したので、紹介します。

すべて英語だし結構長いんですけど、とても参考になると思うので、がんばって最後まで見てみてください。

この動画を見たからといって、 論文を批評的に読む能力が身に付くわけではありません。しかし、「河森が言っている『論文を批評的に読んで自分なりの解釈をする』とは一体どういうことなんだ?まったく意味が分からない!」と思われている人にとっては、この動画を見れば私が言わんとしていることが一発で理解できるはずなので、とても参考になるでしょう。

 

 

取り上げられている論文の内容と筆者の主張

このパネルディスカッションで取り上げられているのは、以下の論文です。無料でPDFをダウンロードできるので、是非読んでみてください。 

Morton et al. (2016) Neither load nor systemic hormones determine resistance training-mediated hypertrophy or strength gains in resistance-trained young men. J Appl Physiol 121(1):129-38.

実は、私自身も、この論文について本ブログで取り上げようと思っていたところです(「論文レビュー」シリーズの1つとして)。その理由としては、論文筆者の主張がS&C業界でかなり議論を呼びそうな内容だった点と、しっかりと自分で批評的に論文を読む力がないと筆者の主張を鵜呑みにする危険性があるな〜と考えた点が挙げられます。ま〜、つまりは、私は動画のパネラーと同様に、この論文の筆者の主張に対して「いや、そんなこと言えないでしょ!」という批判的な意見を持っているということなんですが・・・。

とりあえず、研究の内容と筆者の主張を簡単にまとめてみます。

 

①被験者

49名の健康な若い男性。少なくとも過去2年以上は週2回以上のトレーニングを継続しているトレーニング経験者。

 

②研究デザイン

被験者を2つのグループに分けて、週4回のレジスタンストレーニングを12週間実施し、その前後に筋力(レッグプレス、ベンチプレス、マシンニーエクステンション、マシンショルダープレスの1RM)や筋の太さ・量(筋バイオプシーによる筋線維の横断面積、DEXAによる脂肪・骨を除いた体重)の測定を実施した。

2つのグループは、トレーニング内容(重さとレップ数)が異なるプログラムを実施した:

  • HR(high repetition)グループ:「3セット x 20-25レップ」を30-50% 1RMの負荷で実施。各セットをvolitional failureまで実施して、レップ数が20-25の範囲内に収まるように負荷を調整。
  • LR(low repetition)グループ:「3セット x 8-12レップ」を75-90% 1RMの負荷で実施。各セットをvolitional failureまで実施して、レップ数が8-12の範囲内に収まるように負荷を調整。

両グループとも、同じエクササイズを実施し(1セッションあたり5種目)、セット間レストは1分だった。また、12週間のトレーニング期間の前後だけでなく、トレーニング期間中も3週間毎に1RMの測定を実施した。 

 

③研究結果と筆者の主張

特に関連のある結果を箇条書きでまとめてみます:

  • 筋肥大の指標のトレーニング前後の変化量は、グループ間で差がなかった
  • 1RMの変化量は、ベンチプレスを除いて、グループ間で差がなかった
  • ベンチプレス1RMについては、LRグループのほうがHRグループよりも変化量が大きかった
  • LRグループのトレーニング量(すべてのレップ数 x 負荷の重さ)はHRグループの62%だった

これらの結果をもとに、論文筆者は「volitional failureまでセットを実施するのであれば、筋肥大や筋力向上といったトレーニング効果に対して、トレーニングで用いる負荷の大きさは影響を与えない。重い重量を使わなくても、軽い重量をたくさんのレップ数こなせば、同じくらいの筋肥大や筋力向上効果が期待できる」といった主張をしています。

 

 

次回に続く

ということで、今回は「論文を批評的に読んで自分なりの解釈をする」というプロセスをパネルディスカッション形式で実践している動画の紹介と、そこで取り上げられている論文の内容と筆者の主張についてまとめました。

だいぶ長文になってきたというのと、私が病み上がりで長文を書く体力が回復していないという理由から、今回はここで終了して残りは次のブログで続けたいと思います。次回のブログでは、この論文の研究内容や筆者の主張に対して、動画で紹介したパネラーの皆さんがどのように批評を加えているのかについて紹介する予定です。乞うご期待!

 

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【編集後記】

いや〜、久しぶりに食欲がなくなるまで体調を崩しました。赤いきつねを食べきれずに残してしまったほどです・・・。いつもだったらおやつにもならないくらいなのに・・・。

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  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

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