#364 ウエイトトレーニング中にベルトを使うべきか?

公開日: : 最終更新日:2016/10/25 S&Cコーチとしての思考


 

LiftingBelt

 

前々回のブログで、レッグプレス(LP)とスクワット(SQ)のトレーニング効果を比較した論文を紹介しました。簡単にまとめると「SQのほうがLPよりも、ジャンプパフォーマンス向上に結びつきやすい」という内容でした。

その理由についての私の予想の1つが

SQでは脊柱+骨盤の体幹部の剛性を高めた状態での脚伸展の出力が求められるが、LPでは体幹部がマシンのシートに固定されているため剛性を高める必要性が低く、同じく体幹部の剛性を高めた状態での脚伸展の出力が求められるジャンプ動作へのトレーニング転移効果は前者のSQのほうが高かった

というものでした。

これと同じ考え方は「ウエイトトレーニング中のベルト使用の是非」という議論にそのまま当てはまるのではないか?と、ふと思ったので、そんな内容のブログを書いてみます。

 

 

ベルトを使ったほうが挙上重量はUPするけど・・・

まず、最初に言っておきますが、ベルトを使うと、ウエイトトレーニングで持ち挙げることのできる重量は増えるでしょう。ある程度ちゃんとしたテクニックが身についている人であれば、数%程度は挙上重量がUPするはずです。逆に、ちゃんとしたテクニックが身についていない人の場合、ベルトを付けることで10%以上挙上重量がUPする可能性もあります(それはそれで危険だと思うのですが・・・)。

なので、挙上重量を競い合うパワーリフター等が勝つことを目的にするのであれば、ベルトは使ったほうがよいでしょう。ルール上認められているのであれば、使わない手はありません。

しかし、私はそんなことに興味はありません。私がS&Cコーチとして興味があり、このブログで書いているのは、アスリートが競技力向上の手段としてウエイトトレーニングを実施する場合に、何がベストなのか?ということです。

なので、ここからはそのような視点で議論を進めます。

 

 

パフォーマンス向上のためにはベルトを使うべきか?

もし、LP(マシン)と比較したSQ(フリーウエイト)の優位性が「体幹部の剛性を高めた状態での脚伸展の出力向上」にあるのであれば、同じ議論を「ベルトありSQ vs. ベルトなしSQ」の比較に当てはめて考えることができそうです。

つまり、ベルトという外的なサポートに頼らずにSQを実施したほうが「体幹部の剛性を高めた状態での脚伸展の出力向上」に結びつくはずで、それが結果として、股関節からの出力を体幹部を固めた状態で受け止める必要があるジャンプ動作やその他のスポーツ動作のパフォーマンス向上に繋がるのではないか?ということです。

私がアスリートのトレーニングとしてベンチプレスよりも腕立て伏せを好んでプログラムに入れる理由も、後者のほうが「体幹部の剛性を高めた状態での上肢プッシュ出力の向上」に結びつきやすいと考えているからです。※それ以外にも肩甲骨のスタビリティ等の理由もあります。

#119 腕立て伏せ vs. ベンチプレス

 

こうした主張に対する反論として「ベルトをしたほうがより重い重さでSQできるんだから、『体幹部の剛性を高める』能力はさておき、脚伸展の筋力UPという点ではそちらのほうが効果があるはずで、それがジャンプ等のパフォーマンスUPにも繋がるのではないか?」という考え方もあるかもしれません。

たしかに一理あります(特に前半部分)。

でも、それを言うなら、LPのようなマシンエクササイズのほうが、ベルトを巻くだけよりも外的な体幹部サポート効果ははるかに高いからより重い重量でトレーニングできるはずで、同じロジックで考えると『体幹部の剛性を高める』能力はさておき、脚伸展の筋力UP効果は高いはずです。

しかし、仮にそうだったとしても、それがジャンプパフォーマンスへの転移に結びついていないのは、前々回のブログで紹介した研究で示されているとおりです。

 

 

まとめ 

したがって、ベルトを使わずにSQを実施して「体幹部の剛性を高めた状態での脚伸展の出力」という能力を向上させることは、たとえそれが挙上重量DOWNや単純な意味での脚伸展筋力向上効果DOWNに繋がったとしても、ジャンプ等のスポーツ動作のパフォーマンスUPという点ではより効果がある(つまりtransfer of training effectが高い)と考えられるのです。なので、アスリートの競技力向上という観点から言うと、ウエイトトレーニング中にベルトは使わないほうが良いと私は主張します。

逆に言うと、ボディビルダーのように、パフォーマンスUPには興味がなく、単純に脚を太くしたいという目的のためにウエイトトレーニングをやるのであれば、ベルトを使ってより重い重量でトレーニングをするのもありだと思うし、LPのようなマシンエクササイズを上手に活用すればよいでしょう。

さらに言うと、ラグビーのフォワードのように体重を増やすことも重要なアスリートであれば、ベルトなしのSQ等のフリーウエイトエクササイズをやったうえで、『体幹部の剛性を高める』ことがそれほど求められずに脚伸展にフォーカスしやすいエクササイズをやっても良いでしょう。ただしその場合、ベルトなしでSQやってから、今度はベルトありでSQやるのもなんなので、私だったらLPのようなマシンエクササイズをやらせると思います。

 

 

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【編集後記】

 今日はアスリートのサポート予約がゼロだったので、ずーっと座って事務作業をしていました。そのおかげで、腰からケツからハムにかけてガチガチです・・・。

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  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

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