#633 筋トレにおいて、「できるだけ高重量を挙げるためのフォーム」と「競技力向上のために強化が必要な筋群にトレーニング刺激を与えるためのフォーム」は違うというコンセプトをRDLを例に説明してみる

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筋トレにおける「正しいフォーム」は何なのか、というのはたびたび議論になるところです。

たとえば

  • できるだけ高重量を挙げるためのフォーム
  • 競技力向上のために強化が必要な筋群にトレーニング刺激を与えるためのフォーム

というのは、どちらもある意味「正しいフォーム」ではあるのですが、実際の動きは異なります。

 

パワーリフティングやウエイトリフティングで競技者として試合に参加するのであれば、前者を追い求める必要があります。

一方、それ以外の競技アスリートが筋トレをやる場合は、後者を追い求めたほうが競技力向上に繋がる可能性が高まるはずです。

たとえ、持ち上げられる絶対的な重量が下がったとしても。

 

どちらが良い悪いという話ではなく、目的によって適切な手段が異なるということです。

で、私は競技力向上のためのトレーニング(=S&C)の専門家なので、後者の考えで正しいフォームを追求しているわけです。

 

 

正しいフォームが目的によって異なることをRDLで説明してみる

これに関連した話は、「スクワット」を例にあげて、以前にブログでも書きました。

#292 できるだけ重い重量を挙げるためのフォーム vs. できるだけ健康的に効率よくトレーニング効果を上げるためのフォーム

 

ただし、「スクワット」というエクササイズは、このコンセプトを説明するには、少しわかりづらい例だったかな〜と感じています。

というのも、スクワットというのは、パワーリフティングで競われる3種目の1つとして、高重量を挙げることを目指して実施している人もいて、一方で、競技力向上のための補強として実施している人もいて、そこが混同されやすいからです。

結果として、「できるだけ高重量を挙げるためのフォーム」を追求していけば、それによって向上される筋力や柔軟性が、バーベル競技以外のアスリートの競技力向上にも繋がるはずだ、と考える方もまだまだ多いような気がします。

 

そこで、もっとわかりやすい例として「ルーマニアンデッドリフト(RDL)」を使って、同じことを説明してみます。

RDLにおいてできるだけ高重量を挙げることを競う人はおそらくいないはずで、基本的にはそれ以外の目的のための手段として実施されているはずです。

そういったエクササイズを例として挙げて説明したほうが、伝わりやすいと思われるので。

 

まず、RDLというのは以下のようなエクササイズです。

競技アスリートがRDLを実施する主な目的は、「ハムストリングの柔軟性および筋力の強化」です。

それによって、ハムストリング肉離れのリスクを下げたり、走る・跳ぶ・止まるetcの動きの向上に繋げたいというのが、RDLの実施を通じて実現したい目標でしょう。

 

ハムストリングは以下の3つの筋肉から構成されています:

  • 半腱様筋
  • 半膜様筋
  • 大腿二頭筋

このうち、大腿二頭筋の短頭以外は、股関節と膝関節を介している「二関節筋」です。

ということは、股関節を曲げて、膝関節を伸ばすと、ハムストリングは最大限に引き伸ばされるということです。

 

そうしたハムストリングの特徴を考えたうえで、ハムストリングを狙ってトレーニング刺激を与えるために、上の動画のようなフォームでRDLを実施することになります。

具体的には、「膝関節は極力曲げずに(多少は緩みます)、股関節を曲げていく」という動作が、RDLの肝なわけです。

このようなフォームは、最初に分類したところの「競技力向上のために強化が必要な筋群にトレーニング刺激を与えるためのフォーム」にあたります。

 

逆に、「できるだけ高重量を挙げるためのフォーム」というコンセプトでRDLを実施しようとすると、どうなるでしょうか?

おそらく、膝をかなり曲げるようなフォームになるはずです。

そして、限りなく通常の「デッドリフト」に近いフォームになっていくでしょう。

そのほうがハムストリング以外の筋群(例:大殿筋、大腿四頭筋)も動員しやすいし、力学的にもより力を発揮しやすい姿勢になるので、高重量を挙げやすくなるはずです。

 

しかし、そのようなフォームだと「ハムストリングの柔軟性および筋力の強化」という効果は著しく下がってしまいます。

膝が曲がると二関節筋であるハムストリングは緩んでしまうので、しっかりとストレッチされなくなるし可動範囲も狭くなってしまいます。

また、他の筋群が動員されることで、相対的にハムストリングへのトレーニング刺激は下がると考えられます。

それでは、「より重い重さを挙げられるぜ」という自分のエゴを満足させることはできても、そもそもRDLを実施する目的を達成することはできなくなります。

 

 

まとめ

スクワットを例にしてしまうと、「できるだけ高重量を挙げるためのフォーム」が正解になる場合もあるので、そうではないRDLを例にして、説明をしてみました。

RDLの1RMを競う人はいないぶん、コンセプトの理解はしやすくなるのではないかと思います。

 

 

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【編集後記】

フリーランスとして働いていると、家にいる時間が長いので、娘の育児をする機会が増えて嬉しいのですが、家で仕事をする時間も削られるので、効率化を図らにゃアカンなと考えているところです。