#748 新型コロナによる自粛解除後に練習を再開して数カ月後に試合がある場合に気をつけること

 

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練習再開後は時間をかけて段階的に強度や量を戻していくべき

緊急事態宣言が解除され、今月あたりから練習を再開したチームやアスリートも多いのではないでしょうか?

私が契約をしているチームやアスリートも、徐々にトレーニングを再開し始めています。

 

数ヶ月間におよぶ自粛期間中は、たとえ自宅等で工夫をして運動を継続していたとしても、やはり通常どおり練習を継続していた場合と比べれば、運動量は大幅に落ちているはずです。

したがって、練習を再開したからといって、いきなり自粛前と同じレベルの強度や量に戻してしまうと、身体がそれについていけず、ケガ等が多発するリスクがあります。

また、時期的な問題として、熱中症のリスクも高まってしまうでしょう。

 

そこで、練習再開後の方針としては、軽めの練習からスタートして、時間をかけて段階的に強度や量を上げていくことが重要です。

たとえばNSCAなどは「50/30/20/10ルール」と称して、5週間かけて、トレーニング負荷を自粛前のレベルまで戻していくことを提案しています。

» 参考:COVID-19:アスリートのための安全なトレーニング再開に関するNSCAガイドライン

 

 

練習再開後にすぐに大会が予定されているケースが多い!?

その一方で、練習再開後すぐに大会が予定されていたりするケースも多いようです。

 

たとえば、インターハイや甲子園は中止されてしまいましたが、その代替大会をこの夏に開こうという動きが都道府県単位で見られます。

3年生にとって高校部活動の集大成となる大会を開いてあげたい、という大人たちの気持ちは痛いほどわかります。

しかも、3年生は大学受験をする人もいるはずだから、あまり先延ばしするわけにもいかない、という事情もよくわかります。

結果として、インターネットでざっと調べた感じだと、それらの代替大会は7月から9月あたりにかけて予定されていることが多いような印象を受けます。

 

また、高校の大会以外にも、たとえばフェンシングの全日本選手権は9月に実施されることが先日発表されました。

プロスポーツに目を向けてみると、プロ野球はすでに無観客で再開され、JリーグもJ2とJ3はすでに再開され、J1も来月から再開予定となっています。

 

 

 

新型コロナによる自粛解除後に練習を再開して数カ月後に試合がある場合に気をつけること

6月に入り練習を再開して、わずか数カ月後に大会が控えている、という状況に直面しているアスリートや指導者は以下のような気持ちを抱えているはずです:

  • 練習再開後は、時間をかけて段階的に練習やトレーニングの負荷をあげていくことで、ケガや熱中症のリスクを抑えたい
  • その一方で、練習再開後、わずか数カ月後に大会が予定されているから、そこに向けてガシガシと練習・トレーニングを実施して、一刻も早く失われた体力や技術や試合勘を取り戻したい

そのような一見矛盾した2つの気持ちの間で、一体どうしたらいいんだろうと悩んでいるアスリートや指導者も多いことでしょう。

 

そんな方に向けて、トレーニング指導の専門家であるS&Cコーチとして、私なりの意見をシェアしたいと思います。

  • ①最優先は感染リスクを抑えること
  • ②2番目に優先すべきは、段階的に戻していくこと
  • ③無理して練習・トレーニング量を増やさない

 

①最優先は感染リスクを抑えること

まず押さえておきたいのは、新型コロナウイルスの感染リスクを抑えることが最優先である、ということです。

アスリートは、アスリートである前に人間です。

競技におけるパフォーマンスよりも、健康や命のほうが大切です。

そこは間違えないようにしましょう。

 

そして、具体的な感染対策については、各競技団体等が発表しているガイドラインや、国・自治体の方針を参考にするのがよいでしょう。

 

 

②2番目に優先すべきは、段階的に戻していくこと

「時間をかけて段階的に練習・トレーニング負荷を自粛前のレベルまで戻していく」のと「大会に向けて体力等を取り戻すため一刻も早く練習・トレーニング負荷を増やしたい」というのは両立できません。

じゃあ、どちらを優先すべきなのかといえば、間違いなく前者です。

たとえ、大会までに準備できる期間が短かったとしても、段階的に戻していくことを優先すべきです。

 

「そんな悠長なことをしていたら、大会までに体力を取り戻せないじゃないか!」と思われるかもしれませんが、それはしょうがないです。

そもそも、練習再開後、大会までの準備期間が少ないからといって、無理やり練習・トレーニング負荷を増やしたところで、体力は急には向上しません。

もう一度言います。体力は急には向上しません。

 

仮に練習再開後、いきなり練習・トレーニング負荷を自粛前のレベルに戻したり、それを超えるようなレベルまで増やしたとしても、体力が急に向上するなんてメリットは得ることはできず、その一方で、ケガや熱中症のリスクは高まってしまいます。

つまり、ケガや熱中症のリスクを犯してまで、練習・トレーニング負荷を急に増やすメリットなんてないんです。

無駄な抵抗はやめて、おとなしくガイドラインに従って、段階的に戻していくべきです。

 

 

③無理して練習・トレーニング負荷を増やさない

仮に、練習再開後、5週間ほどかけて段階的に練習・トレーニング負荷を上げていって、自粛前のレベルまで戻したとします。

そして、この段階で、大会まであと1~2ヶ月の期間が残っていたとします。

「段階的に戻していって、ケガのリスクや熱中症のリスクは抑えることができたから、今度こそ残りの準備期間で練習・トレーニング負荷をドカンと増やしてガシガシとトレーニングして、一気に体力を上げていくぜ!」と思われる方もいるかもしれませんが、それも私はオススメしません。

その理由を説明します。

 

まず、なんとか我慢して、段階的に練習・トレーニング負荷を戻していったおかげで、再開後初期の段階でのケガのリスクはだいぶ抑えることができたはずです。

とはいえ、それはあくまでも5週間ほどかけて、自粛前に実施していた通常レベルの練習・トレーニングを実施するための準備を整えたにすぎません。

そこからさらに、通常レベルを超えるようなレベルまで練習・トレーニング負荷を一気に増やしてしまうと、身体はその準備はできていないので、ケガのリスクは高まってしまいます。

したがって、段階的に戻した後にできるベストの方法は、自粛前に実施していた通常レベルでの練習・トレーニングを粛々と続けることです。

 

また、ケガのリスクだけでなく、疲労が過剰に蓄積してしまうことも恐れておく必要があります。

体力は急には向上しない一方で、疲労は急に蓄積してしまう恐れがあります。

つまり、せっかく練習・トレーニングを増やしたとしても、プラスの効果(体力向上)はそれほど期待できないのに、マイナスの影響(疲労蓄積)は大きく出てしまう可能性が高いのです。

とくに、大会まで1~2ヶ月しかない状況で、疲労が過剰に蓄積してしまうと、その後、練習・トレーニング負荷を減らしたとしても、疲労回復が大会までに間に合わず、コンディションが悪い状態で大会に臨むことになりかねないのです。

高校3年生にとっては最後の大会にも関わらず、自分の実力を出しきれずに悔いが残る形で部活を引退することになるなんて、かわいそうじゃないですか。

 

やはり、無理して練習・トレーニング負荷を増やさずに、自粛前にやっていた通常レベルでの練習・トレーニングを粛々と続けるのがベストだと考えられます。

 

 

まとめ

少なくとも、体力面に関して、新型コロナによる自粛解除後に練習を再開して数カ月後に試合がある場合にできる最善の方法は:

  • ステップ①:最低5週間かけて段階的に練習・トレーニング負荷を自粛前のレベルまで戻していく
  • ステップ②:その後は、自粛前に実施していた通常レベルの練習・トレーニング負荷を粛々と続ける(それ以上増やさない)
  • ステップ③:大会前にテーパリングを実施する

という形だと思います。

これにプラスして、すべての期間を通じて、感染対策を実施するということです。

 

無理に練習・トレーニング負荷を増やしたら、ケガをしたり熱中症になったりして、そもそも大会に出場できない、もしくはベストの状態で出場できない、なんて最悪の結果になってしまう恐れもあります。

無理をせず、できることを粛々とするという姿勢が重要でしょう。

 

気合とか根性とか気持ちだけでどうこうすることができない場合があると私は思っているのですが、今の状況こそがまさにその「場合」です。

気合とか根性とか気持ちだけでどうこうしようとすると逆効果になりかねないので、十分情報を収集して、自分の頭で考えたうえで、与えられた状況の中で最善策が何かをとことん考えてみてください。

 

ちなみに、このような状況におけるテーパリングの最適なやり方は、通常の状況におけるテーパリングとは異なるかもしれません。

練習再開後、大会までの期間が短い場合、それほど疲労が蓄積していない可能性があるので、その場合は通常よりもテーパリングの期間を短くしたり、負荷の減らし方を弱めたりする必要があるでしょう。

あるいは、たとえ段階的に練習・トレーニング負荷を戻したとしても、想定以上に体力が落ちていて、通常レベルの練習・トレーニングをしていても思った以上に疲労が溜まっているなんてこともありえます。

その場合は逆に、テーパリング期間を長くしたり、負荷の減らし方を強めたりする必要があるでしょう。

テーパリングにマニュアルは存在しないので、目の前の状況を分析した上で、テーパリング計画の基礎となる「フィットネスー疲労理論」の知識を駆使して、ベストなテーパリング戦略を導き出していただければ。

 

ここからは少し宣伝になってしまいますが、テーパリングに関して、私は本を書いており、7月にはセミナーも企画しています。

もし、今日の記事でとりあげたような状況に直面していて、この期間中にどのように練習・トレーニングを進めていけばいいのかまったく見当もつかない、というアスリートや指導者の方がいたら、お役に立てるはずです。

本もセミナーも、専門家ではない方にもご理解いただけるよう、わかりやすくお伝えしています。

 

7/12 ピーキングのためのテーパリングセミナー【オンライン】

 

 

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【編集後記】

最近は2週間に1回のペースでオンラインセミナーを開催しています。

オンラインセミナーは自宅からお届けしているのですが、我が家は狭いので、幼い娘の泣き声等が音声に入り込んでしまう恐れがあります。

そこで、オンラインセミナーを実施する時は、前日から妻と娘に妻の実家に帰ってもらっています。車で1時間ほどの近くなので。

 

で、この機会を狙って、オンラインセミナー前夜に夜マックでダブルチーズバーガーのパティ倍を食べるのが密かな楽しみになっています。

この時以外はマック食べないことにしていますが、2週間に1度のこの機会はガッツリ食べています。

ダブルのパティ倍でパティが4枚入っています。最高です。