#174 【論文レビュー】ちょっとトレーニング中断しても、長期的な筋力アップにはそれほど影響しない?

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今回、紹介する論文は、短期間(3週間x2回)のトレーニング中断が長期的な(24週間)トレーニング効果に及ぼす影響について調べた研究です。

 

 

論文の内容

Ogasawara et al. (2013) Comparison of muscle hypertrophy following 6-month of continuous and periodic strength training. Eur J Appl Physiol. 113:975-975.

 

研究プロトコル

ベンチプレスのトレーニング(3セットx10レップ)を週3回、24週間継続したグループ(CTR)と、同じトレーニングを24週間にわたって実施したけど6週間トレーニングを継続する毎に3週間のトレーニング中断期間を設けたグループ(PTR:つまり「6週間トレーニング→3週間休み→6週間トレーニング→3週間休み→6週間トレーニング」ということ)を比較した。

本研究では筋横断面積やアイソメトリック最大筋力等、さまざまな変数を測定しているが、今回はベンチプレス1RMにフォーカスして紹介する。

 

結果

24週間後の1RM向上率を比較した場合、CTRとPTRの間で差はなかった。

ただし、PTRグループがトレーニングを中断している時期の1RMはCTRのほうが有意に大きかった。

下の図を見ると、わかりやすいと思います。

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考察

トレーニングを中断するとその間は筋力が落ちるけど、また再開したら筋力向上しますよという事です。

しかも、トレーニングを中断せずに継続するとだんだん筋力向上率が鈍っていくけど、トレーニング中断後に再開した場合は筋力向上率がまた鋭くなるから、長期的に見ると筋力向上率で差はないですよという事です。

 

じゃあ、この結果をどのように解釈して、実際のトレーニング現場に活用したら良いのでしょうか?

解釈の仕方はいくつかあると思いますが、競技アスリートに当てはめるケースを想定して、2つの解釈例を考えてみたいと思います。

  • 一時的なトレーニング中断が長期的な筋力向上率に大きなマイナスの影響がないのであれば、意図的にトレーニングをしない時期を定期的に設けてしまおう。そうすれば、その時期はいつもより多くの時間を競技練習に割り当てる事ができるし疲労も抑える事ができるから、大きなメリットだろう。
  • 一時的なトレーニング中断は長期的な筋力向上率に大きなマイナスの影響はないみたいだけど、やっぱりトレーニング中断期間中に筋力が低下するのは避けられないのか。という事は、トレーニング中断期間中は(トレーニングを継続した場合と比べて)筋力が落ちている状態で競技練習をしないといけない事になるから、それはデメリットだな。どうせなら筋力が高い状態で競技練習を実施したほうがケガのリスクも低いだろうし、体力向上が競技パフォーマンス向上に転移する可能性も高くなるだろうから、トレーニングはできるだけ継続することにしよう。それに、3週間トレーニング中断した後に再開したら、筋肉痛もスゴく出て競技練習にも影響しそうだし。

このように、同じ論文を読んでも、その解釈の仕方や活用方法が真逆になる可能性があります。

どちらかの解釈が絶対的に正しいということはありません。

競技特性やアスリートの特徴、その他の状況によって、正解は変わってくるでしょう。

例えば、シーズンが長くて年間を通じて定期的に試合があるような場合と、オフシーズンが長くて数少ない重要な大会に向けてピーキングをするような場合では、この研究結果の解釈の仕方は異なってくるはずです。

また、競技アスリートではなくて、健康や見た目を目的にトレーニングをしている一般人を想定した場合もまた、解釈の仕方が変わってくるでしょう。

 

 

まとめ

この論文を読んでみると、筆者の主張としては「総トレーニング量は少ないのに同等のトレーニング効果が出せるのだから、途中にトレーニング中断期間を設けるほうが良いのでは?」といった感じの論調で、上記の解釈方法で言うと1つ目のものに近いのかな〜と思います。

それはそれで、筆者の解釈としては良いのですが、それを読んだ我々が自分の頭で深く考えて自分なりの解釈をしようとせずに、筆者の解釈をそのまま受け入れてしまうのは危険です。浅いです。がんばって自分の頭で考えて、疑る習慣をつけましょう。

 

ちなみに、上記のような解釈の仕方だけでなく「1RMが50%もアップするなんて被検者は相当なトレーニング初級者だったんだな〜(普段からトレーニングやっているアスリートにそのまま当てはまるかどうかは疑問だな)」とか「3セットx10レップという同じプログラムを24週間もずーっと続けるなんて現実ではありえないんだけど〜(もうちょっと現実を反映したプログラムを用いて実験したら、継続してトレーニングしたグループのほうが筋力の向上率が大きくなったんじゃない?)」といった点にも敏感に気づいて疑る事が重要です。

そのような色々な要因をすべて考慮に入れた上で、研究結果の解釈をして、現場に活用する事ができて初めて、科学的なトレーニングと呼ぶことができるのだと思います。

科学的なトレーニングはそれほど簡単なことではありません。

 

 

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【編集後記】

ここ数日は、ブログネタがどんどん頭に浮かんできます。フィーバー状態です。いつまでも続かないだろうから、書けるうちにバリバリ書いちゃいます。