久しぶりの論文レビューです。
各種の運動の傷害予防効果についてメタ分析をした論文を紹介します。
論文内容
分析内容
ウエイトトレーニング、ストレッチ、固有受容器トレーニングの3種類の運動の傷害予防効果について、過去に発表された25本の論文(被験者総数26610人、傷害数3464)のデータ用いてメタ分析を実施。
結果
ストレッチには傷害予防効果が見られなかった。
固有受容器トレーニングと筋力トレーニングには傷害予防効果が見られた。
特にウエイトトレーニングは傷害数を1/3以下まで減少させる効果が見られた。
また、3種類の運動を組み合わせた場合も傷害予防効果が見られたが、その効果はウエイトトレーニングを単独で用いた場合ほどでは無かった。
Limitation
このメタ分析に用いられたウエイトトレーニングの効果に関する論文は4本、固有受容器トレーニングの効果に関する論文は6本、ストレッチの効果に関する論文は3本、残りの12本は運動を組み合わせた時の効果に関するものだった。
まとめ
このメタ分析によって、NSCAなどが提唱している「筋力トレーニングの傷害予防効果」がさらに裏付けられました。
具体的に言うと、ウエイトトレーニングを実施することでケガの発生率を1/3以下に減らすことができるということです。
一方で、ストレッチの傷害予防効果は認められませんでした。
しかし、これらの分析に用いられた論文数はそれほど多くないので、それを考慮に入れたうえで本研究の結果を解釈する必要があります。
それにしたって、ウエイトトレーニングの傷害予防効果は明白だと個人的には思うのですが、いかがでしょうか?
2017/8/5追記:大学のかな〜り下の後輩の佐々部くんがこの論文を1つの図にまとめていてわかりやすいので紹介しておきます
スポーツ傷害予防への運動介入の効果:ストレッチ vs 筋力トレーニング vs 固有受容器トレーニング
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【編集後記】
体幹トレーニングだけやっていればいいという風潮が嫌で嫌でしょうがないです。
「体幹は重要ですか?」と聞かれれば、「重要です」と答えるでしょう。でもその答えには続きがあって「脚も重要だし、お尻も重要だし、背中も重要だし、腕も重要です。全部重要です。体幹も重要だけど、あくまでも全身の一部に過ぎません」となります。
さらに言うと、「体幹は重要ですかって聞くけど、そもそもあなたの言う『体幹』って何ですか?定義を教えて下さい」ってツッコんでやります。ほとんどの人が明確に答えられないと思います。
以前、何度か質問・コメントさせていただいた本村広介です。
今回の記事の内容とは異なるのですが、編集後記の内容について意見・質問させて頂きます。
私もアンチ体幹トレーニング(知識の無い方々が行う)の立場です。しかし、体幹は重要だと思っています。
私の体幹の定義は、骨盤と脊柱の安定や可動に関与する部分だと認識しています。そのため、臀筋群、ハムストリング、大腿直筋、広背筋などの大筋群も体幹の一部と考えています。
なので、私にとって脊柱起立筋群や腹部の筋群にも負荷をかけることのできるスクワットは上質な体幹トレーニングであると考えています。Pull-upなども同じように考えています。
河森さんの体幹の定義、そして”現在流行の体幹トレーニング”を否定する根拠を教えていただけないでしょうか。
本村広介
月刊トレーニング・ジャーナルの連載2014年6月号で、まさにご質問頂いた件について書いていますので、そちらを読んでみてください。
返信ありがとうございます。
ぜひ読まさせていただきます。
佐渡さんとのやり取りも拝見させていただきました。お互いの研究者!?としての熱が伝わってきました。
私はスポーツトレーナー(S&C)として、研究者にリスペクトを忘れず、活動していけたらと思っています。
今後とも、どうぞよろしくお願いします。