#535 最新のスポーツ科学の研究結果をSNSやブログでまとめて発信してくれる人が増えている現在、それでもS&Cコーチが自分で学術論文を読めたほうがいい理由

 

Book books bookshelf 159621

 

私はS&Cコーチも学術論文を読むべきだと考えています。

もちろん、大学院で研究を自身でやって博士号まで取得している私ですので、そのようなバックグラウンドからくるバイアスもかかったうえでの意見ではあります。

それでも、自分が学術論文を読めて、それをS&Cコーチとしてアスリートのトレーニング指導に活かしてきた経験があるからこそ、言える意見でもあります。

#338 S&Cコーチとして学術論文を読めるようになるまでのプロセス

 

 

最新のスポーツ科学の研究結果をSNSやブログでまとめて発信してくれる人が増えている

もともと、「S&Cコーチも学術論文を読むべき」と私が主張していた一番の理由は、自分で読まないとその情報(=科学的知見)が入ってこなかったからです。

研究を専門にしているスポーツ科学者が学術論文を読んで、それを噛み砕いてわかりやすく現場で働くS&Cコーチに伝えてくれるのが理想です。

しかし、そんなことをしてくれるスポーツ科学者なんていませんでした。というのも、そんなことをしても、スポーツ科学者の評価には繋がらないからです。

スポーツ科学者の多くは大学の教員です。彼らは外部から研究資金を獲得してきて、それを使って研究をして、その結果を学術論文として発表することで大学から評価されます。べつに現場で働くS&Cコーチの役に立つようなことをやったからといって、大学からの評価があがることはありません。

したがって、スポーツ科学者の側にはS&Cコーチの役に立つようなことをするメリットがないんだから、そんなことをやってくれる奇特な人が現れるのを期待するほうがムリってもんです。

だったら、そんな奇特な人の出現を待ってないで、S&Cコーチも自分で学術論文を読めるようになったほうが手っ取り早いでしょ!というのが私の主張でした。

 

しかし、最近は風向きが変わってきました。

最新のスポーツ科学の研究結果を、SNSやブログでまとめてわかりやすく発信してくれる奇特な人が増えてきたのです。

私もその一人です。本ブログで【論文レビュー】と題して、定期的に学術論文の内容をまとめたブログ記事を書いています。

そして、私以外にも、ブログやTwitter等で最新の研究結果をわかりやすく発信している人が何人かいます。

私が【論文レビュー】で取り上げようと思っていた論文について、先にレビューされてしまう機会も出てきました。

個人的には、非常に良い傾向だと思っています。学術論文を自分で読まないと手に入らなかった情報が、より多くのS&Cコーチに届くようになってきたわけですから、喜ばしいことです。

 

 

それでもS&Cコーチは自分で学術論文を読めたほうがいい

自分で学術論文を読まなくても、代わりに読んでくれて、それをわかりやすくまとめて発信してくれる人が増えてきたのであれば、S&Cコーチは学術論文を読めなくてもいいのではないか?と思われるかもしれません。

しかし、私は、それでもS&Cコーチは自分で学術論文を読めたほうがいいと思います。理由は大きく2つあります。

 

①自分が知りたい情報をブログやSNSで発信してくれるとは限らない

たしかにブログやSNSで最新のスポーツ科学の研究結果を伝えてくれる人は増えましたが、どの研究を取り上げるかは発信者が決めることです。情報の受け取り側がコントロールすることはできません。

たとえば、あなたがS&Cコーチとして、ウォームアップに関する科学的知見を手に入れたいと思ったとしても、都合よく・タイミングよくウォームアップについての研究をピンポイントで取り上げてブログやSNSで発信してもらえるわけではありません。発信者が面白いと感じた研究について発表してくれるのを受動的に待つしかないのです。

また、ブログやSNSで取り上げられる研究は最新のものが多い傾向があります。5年前とか10年前に発表された研究を取り上げてくれる確率は非常に低いです。

つまり、ブログやSNSで科学的知見をわかりやすく発信してくれている人が増えて、ネット上で手に入る情報量は増えましたが、その情報だけであなたのニーズをすべて満たしてくれるわけではないのです。

やはり、自分が知りたい特定のトピックについての科学的知見を手に入れるためには、自分で学術論文を読むしかありません。

 

 

②同じ学術論文を読んでも、解釈の仕方は視点によって異なる

同じ学術論文を読んでも、解釈の仕方は視点によって異なります。

たとえば、◯◯というトレーニングを実施したら、筋肥大効果が高く、体重も増えたという研究結果があったとします。

身体を大きくしたいラグビー選手やアメフト選手を指導しているS&Cコーチであれば、この◯◯を取り入れようと判断するでしょう。

しかし、体重を増やしたくない競技(例:体重階級制のある競技)を指導しているS&Cコーチであれば、◯◯というトレーニングは避けたほうが良いと考えるはずです。

ブログやSNSで最新の研究結果を発信してくれている人の視点と、受け取り側であるあなたの視点は異なる可能性があります。それなのに、発信者の主張や解釈をそのまま取り入れて、アスリートのトレーニング指導に活用しようとすると、逆効果になってしまうリスクがあります。

そういうリスクを避けつつ、科学的知見を最大限に活用するためには、やはり、S&Cコーチも自分で学術論文を読んで、自分なりの解釈ができるような素養を身に付ける必要があります。解釈の仕方まで、情報の発信者にゆだねてしまうのは非常に危険です。

 

 

まとめ

最新のスポーツ科学の研究結果を発信してくれる人が増えたのはポジティブなことだし、そうした人たちをフォローしておけば受動的にさまざまな情報が入ってくるので、非常に役に立ちます。

それでも、S&Cコーチが自分で学術論文を読むことの必要性がゼロになったわけではありませんし、多分、今後もゼロになることはないでしょう。したがって、学術論文を読む能力を一度身につけておけば、それが無駄になることはありません。S&Cコーチとして活動している間は、ずーっと役に立つスキルになるはずです。

そのようなスキルを身につけるには、大学院に行って自分で研究をする経験をするのがベストであると、私は以前から主張しています。しかし、なかなかそこまでやるのが難しいというのも理解できます。

そこで、S&Cコーチを対象に、論文の読み方について解説する入門セミナーを実施しようと計画中です。あくまでも入門セミナーなので、それを受講していただいたからといって、すぐに学術論文を読むスキルが身につくわけではありません。そもそも、そうしたスキルを身につけるためには、数をこなさないといけません。

それでも、「論文を読んでみたいけど、どこから手を付けていいのかさっぱりわからない」という方にとっては、非常に良いキッカケとなるはずです。

また、入門編を実施したうえで、もっと詳しく学びたいというニーズがあるようでしたら、少人数に限定して複数回にわたる上級セミナーみたいなのをやってもいいかな〜と考えています。

とりあえず、入門セミナーを実施する時は、本ブログとTwitterで告知しますので、興味のある方はチェックしておいてください。

 

 

||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

【編集後記】

今年はNBAプレーオフをNHK BSで観れない・・・。楽天が放送権獲得したから・・・。今まで、NHKはずーっと放送してきたのに・・・。これがビジネスってやつか・・・。