#90 『5つの基本動作パターン』:持久系アスリートに対してレジスタンストレーニングを処方したり指導したりする時のフィロソフィー⑤

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シリーズは続きます。

 


第5条「5つの基本動作パターン」

レジスタンストレーニングのプログラムデザインをする時に、以下の5つの基本動作パターンから少なくとも1エクササイズずつピックアップして、全身のバランスを取りながらトレーニングをするようにしています。

まずは各動作パターンについて説明をして、その後それらをどのように組み合わせるかについてお話をします。

 

①スクワット系

説明:しゃがんで立ち上がるという基本的な動作パターンです。膝関節と股関節の両方が大きく動くのが特徴で、両関節周りの筋群をバランスよく鍛えられるのが特徴です。knee dominantエクササイズと呼ばれることもあります。

エクササイズ例:スクワット、フロントスクワット、オーバーヘッドスクワット等のいわゆる「スクワットブラザーズ」に加えて、片脚でのエクササイズ(スプリットスクワット、ブルガリアンスプリットスクワット、リバースランジ、ランジ、etc)もこのカテゴリーに私は分類しています。

※ちなみに、上記の片脚でのエクササイズを実施する時には、しっかりお尻を使って立ち上がるように指導しますし、膝はあまり前方に移動せず下腿は地面に対してほぼ垂直な角度がキープされので、いわゆるposterior chainと呼ばれる身体の後ろ側の脊柱起立筋群や殿筋群、ハムストリング等の筋群がかなり鍛えられる事になり、これらのエクササイズはスクワット系ではなくてこの次に説明するヒップヒンジ系なんじゃないかという議論もあろうかと思います。しかし、これらのエクササイズ中には膝関節もしっかりと動いて大腿四頭筋も動員されているので、私はスクワット系に分類しています。そもそも基本動作パターンの分類は、エクササイズ選択の時に勝手が良いから使っているだけで、どのエクササイズがどのパターンに分類されるべきかを細かく突き詰めて考えるのはナンセンスでしょう。

 

②ヒップヒンジ系

説明:スクワット系とは異なり、膝関節の動きは最小限で股関節の動きが主となる動作パターンです。身体の後ろ側の筋群(posterior chain)が主に鍛えられるのが特徴で、これらのエクササイズのことをposterior chain exercisesと呼ぶ事もあります。また、hip dominantエクササイズと呼ばれる事もあります。

エクササイズ例:デッドリフト、RDL、グッドモーニング、バックエクステンション、グルートハムレイズ、プルスルー、片脚RDLなど。

 

③押す系

説明:上半身の押す動作パターンです。もっと細かく考えるとオーバーヘッドプレスのように垂直方向に押すパターンと、ベンチプレスのように水平方向に押すパターンに分けて考える事もできます。

エクササイズ例:プレス、プッシュプレス、DBプレス等は垂直方向に押すエクササイズです。一方、ベンチプレス、DBベンチプレス、腕立て伏せ等は水平方向に押すエクササイズです。

 

④引く系

説明:上半身の引く動作パターンです。押す系と同様、もっと細かく考えると懸垂のように垂直方向に引くパターンと、ベントオーバーロウのように水平方向に引くパターンに分けて考える事もできます。

エクササイズ例:懸垂(順手、逆手、ニュートラルグリップ、etc)、ラットプルダウン等は垂直方向に引くエクササイズです。一方、インバーテッドロウ、ベントオーバーロウ、ワンハンドDBロウ、シーテッドケーブルロウ等は水平方向に引くエクササイズです。

 

⑤体幹

説明:いわゆる体幹を鍛えるエクササイズ群の分類の事です。「体幹」というのは動作パターンというより身体の部位なので、他の4つとは少し毛色が違いますが、プログラムデザイン上このような分類の仕方をしておくと便利なのでこのような形にしています。さらに細かく分類すると、動作パターンによって「anterior core」「posterior core」「lateral core」「rotary core」の4つのパターンを考えています。それぞれについての詳しい説明については以前のブログ記事をご参照下さい。さらに言うと、各4パターンにおいて、ストレングスエクササイズとスタビリティエクササイズの2種類のエクササイズを取り入れるようにしています。この体幹のトレーニングに対する私の考えをまとめようとすると、それだけでブログの1記事にできるくらいの長文になりそうなので、詳しいお話はまた別の機会に改めてしたいと思います。

エクササイズ例:プランク、サイドプランク、Pallofプレス、バックレイズ等。

 

 

動作パターンの組み合わせ方

さて、プログラムデザインでエクササイズ選択をする時には上記5つの動作パターンを考慮に入れて、基本的には各パターンから少なくとも1エクササイズずつを選ぶようにしています。

しかし、これは破ってはならないルールではありません。あくまでもアイデアとして、こういうふうに考えておくとプログラムデザインがしやすくなりますよ〜程度の事です。ルールというより方針とか目安といったほうがしっくりくる気がします。

上記動作パターンに当てはまらないエクササイズをプログラムに取り入れる事もありますし、特定の動作パターンからエクササイズを1つも選ばない事もあり得ます。結局のところ、アスリートや状況に合わせてケースバイケースで判断するようにしていますが、1つの道標として便利に使っています。

例えば、私の経験上、下半身を考えた時に、大腿四頭筋が発達しているけどお尻がぺしゃんこで臀筋群をうまく使えないアスリートが非常に多い傾向があります。こういうアスリートはヒップヒンジ系の動作パターンにおいて動作があまりうまくなく筋力も低い傾向があり、一方スクワット系の動作パターンのほうが得意です。そのような場合は、ヒップヒンジ系のエクササイズ数を増やしたり、ヒップヒンジ系のトレーニング量(セット数や頻度)を増やす事でバランスを取ろうと考えます。

同様に上 半身を考えると、引く系よりも押す系の動作パターンのほうが得意なアスリートが多い傾向があると思います。そうした場合は、引く系のエクササイズ数を増やしたり、引く系のトレーニング量を増やしてバランスを取ろうとします。

じゃあヒップヒンジ系とスクワット系のどちらが得意かを見極めるにはどうしたら良いのかという疑問が出てくると思います。今のところ、これをやれば2つの動作パターンのバランスがわかるという評価方法的なものは私の中で確立されていませんが、スクワットの動きを見ればお尻を使えているか大腿四頭筋が主導の動きになっているかはだいたいわかります。だいたいです。

一方、上半身の押す系と引く系のバランスを見極める方法として、ベンチプレス1RMと懸垂1RMを比べるという方法があります。懸垂1RMについては「自体重+プレート等の外的負荷」の合計値を1RMとして計算します。例えば、ベンチプレス1RMが100KGの体重80KGのアスリートが20KGのプレートを腰にぶら下げて懸垂を1回できれば、押す系と引く系のバランスがとれているという判断になります。

体幹エクササイズに関しては、他の動作パターンとのバランスを考えるというよりも、この分類内での4つの動作パターン間でのバランスを考えて体幹エクササイズの選択を実施するようにしています。例えばフロントプランクは強くて何分でもキープできるけど、サイドプランクは30秒もキープできないとかいう場合は、lateral coreを優先して鍛えるようにします。体幹の話はまた別の機会に改めて詳しくしたいと思います。

ちなみに5つの動作パターンを考慮してバランスよくプログラムを作成しようとする時に、必ずしも1つのトレーニングセッション中にすべての動作パターンを含めようとするわけではありません。1週間に複数回のトレーニングセッションがある場合には(例えば3回)、3つのトレーニングセッションをトータルで見た時にバランスが取れているば良いという風に考えています。

例えばヒップヒンジ系を強調したいアスリートの場合、DAY1のプログラムにはデッドリフト(ヒップヒンジ系)、DAY2のプログラムにはスクワット(スクワット系)、DAY3のプログラムにはRDL(ヒップヒンジ系)を含めるといった具合です。別に各トレーニングセッション内でスクワット系のエクササイズを1つ、ヒップヒンジ系のエクササイズを2つずつ含めないといけないわけではありません。あくまでもトータルでのバランスを取るという事です。説明が下手で申し訳ありませんが、なんとなく言わんとしている事はわかるでしょうか?

 

 

まとめ

以上、第5条でした。このアイデアは持久系アスリートに限らず、あらゆるアスリートに対して使う事ができると思います。しかし、何度も強調しますが、これはあくまでも目安であって、絶対的なルールではありませんので、柔軟性を持ちながら参考程度に活用するのが良いかと思います。私は個人的に何の指針もなくとりあえずエクササイズをなんとなく選んでいくよりも、このような動作パターンというアイデアを活用する事でシステマティックにプログラムデザインをできる気がするので、好んで使っています。では、続きはまた次回。

 

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