最近ツイッターで標題に関連するツイートをいくつか読む機会があり、インスパイアされてブログを書いてみます。
トップアスリートのトレーニングを真似しても効果が出るとはかぎらない
実績のあるトップアスリートがどのようなトレーニングをしているか知りたい、というアスリートは少なくないでしょう。
正直なところ、私もすごく興味があります。
そのわりには、そのような情報はテレビや新聞等の主要メディアにはなかなか出てこないのが実際のところです。
オリンピックのような大きな大会の前後で、出場アスリートの特集が増える時期に、たま〜に見かけるくらいです。
しかし、最近は、トップアスリートが自ら発信できるメディア(ブログ、SNS)が発達してきて、彼ら・彼女らがトレーニングしている様子を撮影した動画を観る機会が増えてきました。
また、トップアスリート自らが「こういうトレーニングは重要です!みなさんもやりましょう!」と積極的に宣伝することも増えてきました。
そうした発信によって、他の多くのアスリートがトレーニングの重要性を認識し、トレーニングに積極的に取り組むようになるキッカケになれば、それは良い影響だと言えるでしょう。
その一方で、私はトレーニング指導の専門家として、「トップアスリートのトレーニング動画を見て、それをそのまま真似するアスリートが増えてしまうのではないか?」という危惧の念を抱いています。
こんなことを言うと、「なんで、トップアスリートのやっているトレーニングを真似しちゃダメなの?」「実績のあるアスリートがやっているトレーニングなんだから、間違いないでしょ!」と思われる方も多いかもしれません。
私から言わせると、そのような単純な考え方こそが危険で、とても危惧しているところです。
結論から言うと、トップアスリートのトレーニングを真似しても効果が出るとはかぎりません。
もちろん、真似をして上手くいくケースがゼロとは言いませんが、むしろ、逆効果であるリスクのほうが高いと私は思います。
トップアスリートのトレーニングを真似するのがリスクが高い理由
理由を説明します:
- ①それがトップになれた原因とはかぎらない
- ②段階として、あなたには別のトレーニングのほうが適切である
- ③それ以外の理由で、あなたには合わない
①それがトップになれた理由とはかぎらない
たとえば、トップアスリートが自身のトレーニング動画をSNS等で公開しているとします。
実際に、そのようなトレーニングをそのアスリートが現在やっていることは事実でしょう(もしかしたら、宣伝目的で、普段やっていないことをやらされている可能性もありますが・・・)。
しかし、特定のトレーニングを実績のあるアスリートがやっているからといって、それが、トップになれた理由とは限りません。
これには、大きく分けて2つの意味合いがあります。
まず1つめは、生まれつきの才能が飛び抜けていて、さらに意識高く練習にも取り組むような天才型トップアスリートの場合、どんなトレーニングをやったとしてもトップになってしまう可能性があるということです。
実際に、そういうアスリートっているもんなんですよね。
「あ、このアスリートは、どんなトレーニング指導の専門家が担当したとしても、どんなトレーニングをやったとしても、活躍するんだろうな〜」っていう人が。
その場合、このアスリートがやっているトレーニングとこのアスリートの活躍との間には、なんの因果関係もありません。
何をやったとしても活躍しちゃうんですから。
そういう場合は、天才型トップアスリートがやっているトレーニングを他のアスリートが真似したとしても、競技力向上に繋がる可能性は低いでしょう(可能性はゼロではないですが)。
もう1つの意味合いは、トップアスリートが今やっていて「これが私が成功した理由だ!」と考えているトレーニングは、実はトップになれた理由ではなくて、本人が成功の理由とは考えていない別のトレーニングがトップになれた理由である可能性があるということです。
そういうトレーニングは、トップアスリートにとっては当たり前すぎて、他のアスリートもみんなやっているものと思い込んでいて、自らの成功の理由とは考えていないので、あえてSNS等で発信しない可能性が高いです。
つまり、大成功をおさめたトップアスリートであっても、自分の成功の理由を正確に把握できているとは限らないということです。
したがって、SNS等で発信されているトレーニングを他のアスリートが真似しても、トップアスリートと同じような活躍に繋がる可能性は低いでしょう(可能性はゼロではないですが)。
この考え方をビジュアル的に上手に表現しているツイートを紹介しておきます。
結果を出してる選手に何をやってるのか聞きたい、自分の知らない秘密のトレーニングをやってるから強いんだ、と思う気持ちは分かるけど、大きな違いを生み出しているのは一番上の部分よりも、土台となる部分の大きさや濃さにあることが多いんですよね。 https://t.co/Rb3Do0rY7c
— J-Shira (@Team_inspire)
②段階として、あなたには別のトレーニングのほうが適切である
これは①の2つめの意味合いと似ていますが、厳密に言うとちょっと違います。
わかりやすく言うと、たとえばトレーニングを始めたばかりの初心者とトレーニングを10年以上やっている上級者とでは、適切なトレーニングが異なるということです。
トップアスリートがSNSで発信しているトレーニングは、後者向けのトレーニングかもしれません。
もし、あなたもトレーニング上級者なのであれば、それを真似したら効果が出る可能性はあります。
しかし、もしあなたがトレーニング初心者なのだとしたら、それを真似してもうまく行く可能性は極めて低いでしょう。
たとえ、トップアスリートがSNSで発信しているトレーニングそのものは科学的根拠もあって、そのアスリートにとっては適切なものであったとしても、現段階のあなたにとっては適切ではないケースもあるのです。
むしろ、あなたがまだトップアスリートではないのであれば、あなたには適切ではない可能性のほうが高いと考えたほうがいいです。
だとすると、トップアスリートがやっている難しそうなトレーニングを真似するよりも、基礎的なトレーニングに地道に取り組んだほうが、競技力向上に結びつく可能性は高まるでしょう。
③それ以外の理由で、あなたには合わない
②で挙げたように、トレーニングの段階として、トップアスリートがやっているトレーニングが今のあなたには適切ではないという可能性があります。
それ以外にも、トップアスリートがやっているトレーニングがその選手にとっては適切なものであったとしても、あなたには合わないという理由は存在します。
たとえば「遺伝」です。
トップアスリートが結構ムチャクチャなトレーニングをやっていたとしても、生まれつき頑丈で故障しづらい身体だとしたら、ケガや痛みを経験することなくこなせてしまいます。
しかし、普通の人間であれば、そんなムチャクチャなトレーニングを真似したら、ケガをしてしまうことでしょう。
また、そこまで極端な例ではなくても、まったく同じトレーニングをしたとしても、それによってどのような適応がどの程度起こるかには「個人差」が存在します。
この「個人差」には、遺伝だけでなく、栄養や休養も影響します。
同様に、会社で働いたり、学校で勉強をしながら活動しているアスリートが、フルタイムのプロアスリートがやっているトレーニングをそのまま真似したとしても、同じだけの効果を得ることができるとはかぎりません。
さらには、異なる競技のトップアスリートがやっているトレーニングを真似しても、同じように活躍できるとはかぎりません。
たとえ同じ競技のトップアスリートであっても、トレーニング以外の部分、たとえば練習スケジュール等が異なれば、トレーニングに使える時間や体力、回復にかかる時間等も変わってくるので、ただトレーニングの部分だけを真似したとしても、同じような効果が期待できるとはかぎりません。
じゃあ、どうすればいいのか?
べつに、トップアスリートのトレーニング動画をSNS等で観るな!と言っているわけではありません。
観たかったら観てもいいです。
しかし、そのまま真似することはオススメしません。
あくまでも、自分のトレーニングに対するモチベーションを上げるための手段として、そのようなトップアスリートの発信を利用するのが良いかと思います。
で、実際に自分がどのようなトレーニングをしたら良いのかについては、専門家に相談をして、今の自分にとって適切なトレーニングを見極めてもらい、指導を受けることがベストです。
ちゃんとした専門家からトレーニング指導を受けることの効果は、経験してみないとわからないかもしれませんが、とても大きなものがあります。
SNSでトップアスリートの動画を観て、見よう見まねでトレーニングを続けるのとでは雲泥の差です。
自己流でトレーニングを続けても効果が出ないとお悩みの方は、専門家からトレーニング指導を受けることをオススメします。
本気で競技力向上を考えているのであれば、割の良い投資だと思います。
» 参考:ウエイトトレーニングを自己流でやり続けてなかなか効果が出ないくらいだったら、最初に数ヶ月間であっても専門家にお金を払って正しいやり方を教わったほうが効率的です
まとめ
最後はちょっとトレーニング指導の宣伝みたいになってしまいましたが、実際、トップアスリートのトレーニングを真似するよりも、数ヶ月間だけでもちゃんとした専門家からトレーニング指導を受けるほうがはるかに効果が高いのは間違いないです。
もちろん、私にトレーニング指導のご依頼をいただくのがベストですが、場所や料金などの問題で難しければ、自分がお願いできる範囲で専門家を探していただき、できれば最低1年間は継続してトレーニング指導を受けてみていただければと思います。
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【編集後記】
先日、映画「キングダム」を観てきました。
原作マンガのファンとしては、実写映画化のニュースを聞いたときは、「どうせダメなんじゃないの、進撃の巨人みたいに」と冷めた気持ちでした。
しかし、公開されて意外と評判が良さそうだったので、劇場に足を運んでみました。
感想としては期待以上に面白かったです。
ストーリーが事前にわかっているので、次はどうなるんだろうというドキドキ感はありませんでしたが、何度か鳥肌が立つようなシーンがありました。
映画前半からおしっこをしたくなり我慢していたから鳥肌立ったのかもしれませんが。