素人が専門家の腕の善し悪しを判断する難しさ
少し前に以下のような一連のツイートをしました。
コロナ感染が広がる前の話。
歯医者さんを変えようと思い、新たに通う歯医者を探そうとしてネットでいろいろ調べたけど、歯科の素人からすると、どこが良いのかさっぱりわからなかった。
Googleレビューとかも見たけど、べた褒めのレビューもあればボロクソ言ってるレビューもあるし…
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
実際に治療を受けたとしても、歯医者さんの腕の良し悪しなんて素人にはわからない。
治療の時に痛くないようにやってくれるのが良い医者かと言えば、必ずしもそうじゃないし。
痛みが伴うけど歯の健康のためには必要な治療を避けているだけかもしれないし。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
そんなお客さん側の立場を経験してみて、S&Cコーチとかパーソナルトレーナーの腕の良し悪しも、素人の方からするとわからないよな〜と実感。
「ブログやツイッターで発信してるから私の腕の良し悪しはわかってもらえるだろう」なんてとんでもない。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
あらゆる手段を使って、河森のトレーニング指導を受けてみたいと思ってもらえるような発信をさらに強化せねば、と思いました。
今は難しいかもしれないけど、afterコロナに向けていろいろと工夫します。
時間はたっぷりあるし。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
専門家の腕の良し悪しに左右されるサービスを受けるときに、専門知識のない素人が、どの専門家がいいのかを選ぶのは難しいな〜というお話です。
私は歯医者さんを選ぶときに、それを感じました。
とくに歯医者さんの良し悪しなんて、治療してもらってから数年たってみないとわからないし、もっと言うと数年たってみてもわからないっちゃわからないですからね。
これが美容師さんとかネイリストさんとかだったら、一回サービスを受けてみて気に入るか気に入らないかなので、すぐに良し悪しはわかるんですけど(念のためお伝えしておきますが、私はネイルはしません)。
専門家のサービスを受ける素人の立場を経験してみて、私が提供している「トレーニング指導」というのも同じだな〜と感じました。
まず、トレーニング効果が出るまでには時間がかかります。
筋力や柔軟性といった「体力」の向上であれば、数週間から数ヶ月で実感していただくことは可能です。
しかし、それを「競技成績」の向上に繋げるためには、年単位の時間がかかるというのが私の持論です。
#327 トレーニング効果が競技成績向上に結びつく実感を得るには年単位の時間がかかる
さらに言うと、トレーニング指導を受け始めて1年以上経過して競技成績が向上してきたとしても、そのうち何%がトレーニングのおかげなのかなんて誰にもわかりません。
たまたまトレーニング指導を受け始めたタイミングと、それまでの練習の効果や積み重ねてきた経験が花開くタイミングが重なっただけかもしれませんし。
つまり、トレーニング指導の専門家であるS&Cコーチの腕の善し悪しなんて、そのサービスを受ける側のアスリートにはなかなか判断がつかないものなんです。
だからこそ、私がどういう理念でトレーニング指導をやっているのかを事前に少しでも知っていただけるように、ブログを書いたりTwitterでつぶやいたりしているわけです。
かける時間や労力の割に印税というリターンは少ない本を出版しているのも、ある意味、私のことを知ってもらうためです。
とはいえ、「これだけ発信しているんだから、選んでもらえるだろう」みたいなところがどこかあったのですが、今回、歯医者さんを選ぶ経験をしてみて、判断材料っていうものはいくらあっても足りないな〜と感じました。
私も、あらゆる手段を使って、自分のトレーニング指導を受けてみたいと思ってもらえる方を増やすための発信をやっていかないと、と思いました。
「お客様の声」という形での発信をするにいたった理由
そんな自分アピール作戦の一環として始めたのが、現在もしくは過去のクライアントさんにアンケートを実施して、それを「お客様の声」という形で発信する活動です。
私が自主開催しているセミナーにおいては、以前から参加者の皆さんにアンケートへのご協力をお願いしており、それをセミナー告知に掲載したり、セミナー内容の改善やセミナーテーマの設定に活用したりしてきました。
セミナー参加者からのフィードバックは非常に役立っていて、アンケートをやっていて良かったと思っていますし、セミナーを自主開催する方にはぜひともやっていただきたいです。
#493 セミナー後に「A4 1枚アンケート」を活用してフィードバックをいただく方法
セミナーにおいて参加者アンケートがこれだけ役に立っているのだったら、もっと前から同じことをトレーニング指導のクライアントさんにもお願いしておけばよかったと、今となっては後悔しています。
しかし、私がトレーニング指導のクライアントさんにアンケートをお願いするのを躊躇していたのには理由があります。
それは、クライアントさんについての情報を積極的に発信しないというポリシーみたいなものを持っていたからです。
#544 私が担当アスリートについての情報をあまり積極的に発信しない理由
これは前職の国立スポーツ科学センターに勤務していた時代の癖が残っているというのが大きいと自分では分析しています。
というのも、前職は「みなし公務員」という立場だったので守秘義務があったし、上司からも担当アスリートの情報は外に出さないよう指示されていたからです。
とはいえ、国立スポーツ科学センターを退職してフリーランスとして活動を始めてから数年が経ち、私の考え方も少しずつフリーランスらしくなってきました。
担当するクライアントさんとの関係性も、国立スポーツ科学センターで働いていた時とは違ってもいいと思えるようになってきました。
前職においては、担当アスリートの情報を外に発信するのは一律NGでしたが、フリーランスである今の立場としては、そこの判断はクライアントさんにおまかせすればよいと考えられるようになってきました。
アンケートに協力してもらって、それを「お客様の声」としてブログに掲載させてほしい、とお願いをして、OKを貰えればありがたく使わせていただく。でも、クライアントさんが望まないなら無理強いはしない。
今はそんなスタンスです。
アンケートを実施してみて
実際にアンケートをお願いしてみて、「やって良かったな〜」「もっと早くやっておけば」というのが実感です。
「お客様の声」という形でブログに掲載し、新規のお客様獲得の可能性を高めることができる、という以上のメリットがあったと感じています。
というか、べつに「お客様の声」みたいな形で表に出さなくても、フィードバックをいただくだけでもやるメリットがあると思います。
そのメリットは、自分が提供しているつもりの価値とお客様が求めているOR実感している価値とをすり合わせることができる、という点です。
もし、自分が提供しているつもりの価値と実際にお客様が求めているOR実感している価値との間にギャップがあると、それはお客様の不満に繋がってしまいます。
したがって、お客様の満足度を高めて、継続してトレーニング指導を受けて頂くためには、その2つの価値が合っているかどうかを確認することは重要です。
今回のアンケート調査を通じて、それができたのはとても大きかったと感じています。
具体的な例を挙げると、たとえば「ケガのしづらい身体づくり」というのは、私がトレーニング指導を通じて提供できる最も大きな価値である、と個人的には考えています。
しかし、その一方で、トレーニングを実施するメリットとして「ケガのしづらい身体づくり」というのは、なかなかアスリートには理解してもらいづらいとも感じています。
一般的には、「体力向上」というメリットのほうがわかりやすいしアスリートが求めているものであることが多いという印象です。
しかし、今回、アンケートを実施してみて、ケガをしづらくなったことをフィードバックしてくれるアスリートがいました。
ここの価値が伝わっているんだな〜とうれしくなりましたし、今後も自信をもって「ケガのしづらい身体づくり」のお手伝いをしていこうと思いました。
もう1つ、アンケートを実施してみて気づいたのは、アスリートならではのトレーニング効果の感じ方です。
アンケートの質問項目として:
- トレーニング指導を受けてみて、いかがでしたか?(体力面での変化)
- トレーニング指導を受けてみて、いかがでしたか?(競技面での変化)
という形で、体力面での変化と競技面での変化をあえて分けて尋ねてみたのですが、後者に関するフィードバックのほうが量が多かったです。
つまり、アスリートがトレーニング効果を感じてくれるのは、スクワットの挙上重量が増えたとか筋肉が太くなったとかいう部分ではなく、競技中の動きが変わったという部分なんだな〜ということです。
アスリートの場合は、競技力向上が目的であり、そのための手段の1つとしてトレーニングを実施しているわけです。
だから、たとえスクワット1RMが向上したり筋肉が大きくなったりしたとしても、それが競技力向上に結びつかなければ、トレーニング効果を実感してもらえないのです。
私はS&Cコーチとして、1RMを伸ばすことや筋肥大させることではなく、競技力向上に結びつくような体力向上を最優先にトレーニング指導をすることをプライドとしているので、競技力向上に繋がるかどうかでトレーニング効果の良し悪しを判断してもらうのはウェルカムです。
結局のところ、私が提供しているつもりの価値とお客様が求めているOR実感している価値はおおむね一致していることがわかりました。
これは自信にも繋がりましたし、これまでやってきたことをこれまで以上に真摯にやっていこうと思いました。
その一方で、自分が提供しているとは思っていなかった価値について言及してくれたお客様もいました。
それはトレーニングに関する考え方や知識の部分で勉強になった、というものです。
たしかに振り返ってみれば、なぜこのトレーニングをやるのか、なぜこのエクササイズをこのやり方でやるのか、についてはしっかりと説明をしています。
また、セット間のレスト等に質問を受けて答えたりもしています。
今回のアンケートを通じて、そういう部分に価値を感じてくださるお客様もいるんだな〜と知ることができたので、今後はそのあたりの価値も意識して提供していこうと考えています。
まとめ
歯医者さんを探す時に腕の善し悪しを判断するのが難しい、という経験をしたところから、私のトレーニング指導サービスを受けていただいているお客様にアンケートをお願いすることになりました。
やってみて本当に良かったです。やらない理由は見つかりません。
もし、専門家としてサービスを提供されている方がこの記事を読んでいただいているのであれば、ぜひともアンケート調査をやってみてください。メリットしかないです。
また、もしトレーニング指導者を探しているアスリートがこの記事を読んでいただいているのであれば、お客様の声コーナーをぜひとともチェックしてみてください。
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【編集後記】
埼玉県個人事業主支援金を5/14に申請したのですが、昨夜(5/25)に振り込まれました。ありがとうございます。
さまざまな報道を見ていると、新型コロナ関連の給付金の振込が遅いというニュースがありますが、私の場合は、国の持続化給付金も埼玉県の支援金も、2週間以内には支給されたので、とくに不満はありませんでした。