#679 【アスリート向け】自転車ロードレーサーが筋トレしたほうがいい理由の1つ「ちぎれなくなる」

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こんにちは、河森です。

アスリートの競技力向上のためのトレーニング指導をしているS&Cコーチです。

 

国立スポーツ科学センター勤務時代はいろいろな競技を担当していましたが、「自転車」もその1つでした。

また、現在もパーソナルトレーニング指導のお客様で自転車選手がいらっしゃいます。

 

 

「短距離スプリント系」の自転車競技と「長距離持久系」の自転車競技

自転車競技とひとことでいっても、専門とする種目によってまったく別のスポーツくらいの違いがあります。

たとえば、競輪選手はいわゆる「短距離スプリント系アスリート」。ある程度の持久力も必要ですが、基本的には瞬発力が必要とされ、脚も太くてスプリンター体型です。

一方、ロードレースといって、一般道を走るタイプの種目の選手は「長距離持久系アスリート」。非常に高い持久力が必要とされ、身体つきも細身の方が多いです。

 

その競技特性から、競輪選手は積極的に筋トレ(=ウエイトトレーニング)に取り組まれている方が多いです。

一方、ロードレーサーでウエイトトレーニングに取り組まれている方は、まだまだ少ない印象があります。

ウエイトトレーニングによって筋力や爆発的パワーを向上させることが、競技力向上に結びつくイメージがしづらいのが原因の1つでしょう。

 

そんなロードレーサーがウエイトトレーニングをしたくなるように、ウエイトトレーニングをすることのメリットについてお話したいと思います。

ロードレーサーがウエイトトレーニングをすることで得られるメリットはたくさんありますが、そのなかでも、今日はある1つのメリットに注目して、解説をします。

そのメリットとは「ちぎれなくなる」ということです。

 

 

自転車ロードレースにおける「ちぎれる」とは?

※ロードレーサー本職の方は、このセクションは読み飛ばしてください。

 

「ちぎれる」というのはロードレース用語で、集団についていけず大きく離されてしまうことを指します。

自転車はかなりスピードが出るので、空気抵抗の影響が大きく、ロードレースにおいては集団を作って、風よけをしながら走るのが一般的です。

集団の先頭では空気抵抗が大きくスタミナが削られやすいですが、その後ろにつくと空気抵抗が抑えられて、ラクになります。

で、集団で走る時は、先頭を交代しながら、お互いにエネルギーをセーブしつつ走るわけです。

ツール・ド・フランスがTVのスポーツニュースで報じられることがありますが、集団で走っている映像が多いですよね。それはそういう背景があるからです。

 

チームでレースに出場している場合は、そのチームを中心に集団を形成することになります。

チームのエースは先頭に出さず、エネルギーを温存させるため、他のレーサーが先頭を交代しながら走ったりします。

 

また、チームとは関係なく、競争相手であっても一時的に集団を作って協力しながら走ったりすることもあります。

ただし、ずーっと最後まで協力し合うわけではなく、途中で集団のなかから数名が飛び出したり、集団のペースを上げてついてこれない選手をふるい落としたり、レースの中でさまざまな駆け引きがおこなわれています。

この「駆け引き」というのが、自転車ロードレースの醍醐味なのかもしれません。

 

このあたりのことは、「弱虫ペダル」というマンガを読むとわかります。

単純にマンガとしても面白くてオススメです。

» 参考:マンガを読んで、トレーニング指導を担当しているアスリートの競技について詳しくなる

 

 

ウエイトトレーニングをやると「ちぎれなくなる」

ロードレースでちぎれてしまうと、風の抵抗を自身がもろに食らうことになります。風よけがいなくなるので。

その状態でスピードを上げていって、再び集団に追いつくのは至難の業です。

たとえ、それができたとしても、だいぶエネルギーを使ってしまうので、レース全般を考えるとかなり不利になります。

だからこそ、そもそも「ちぎれない」ことが重要になるのです。

 

じゃあ、「ちぎれる」時にはどういうパターンがあるのでしょうか?

単純にスタミナ切れということもあるでしょうし、集団のペースが急に上がった時についていけないということもあるでしょう。

ウエイトトレーニングをすることのメリットは、後者のパターンに対応できるようになるということです。

つまり、ウエイトトレーニングをすると、急なペースUPにも対応して、集団についていくことができるようになり、結果として「ちぎれなくなる」のです。

 

集団のペースが急に上がったときについていくためには、加速能力や短距離のスプリント力が重要です。

で、ウエイトトレーニングはまさにそうした能力を向上させるのが得意なのです。

実際に研究によっても、自転車ロードレーサーがウエイトトレーニングに取り組むことによって、30秒間全力ペダリングにおけるピークパワーが向上することが報告されています(1,2)。

 

それに、考えてみてください。

加速能力とかスプリント力というのは、まさに競輪選手が求められる能力です。

で、最初に述べたように、競輪選手はそのような能力を向上させる必要性から、積極的にウエイトトレーニングに取り組んでいる人が多いのです。

 

つまり、ウエイトトレーニングをすれば加速能力やスプリント力を向上することができるのです。

それは科学的にもデータがありますし、競輪選手がウエイトトレーニングを積極的に取り入れている事実からも想像がつくはずです。

そして、加速能力やスプリント力が向上すれば、急なペースUPにも対応できるようになり、集団から離される、つまり「ちぎれる」こともなくなるのです。

 

 

まとめ

私のようなトレーニング指導の専門家は、自転車ロードレースは「持久系競技」と単純に分類してしまいがちです。

で、持久系競技のアスリートがウエイトトレーニングをすることのメリットとして、「ケガのしづらい身体づくり」や「エネルギー効率の改善」といった、一般的な部分を強調してしまいがちです。

しかし、アスリートの立場からすると、そんなメリットを説明されても、いまいちピンとこないかもしれません。

 

自転車ロードレーサーの場合は、ウエイトトレーニングをして加速能力やスプリント力を向上させることで「ちぎれなくなる」という、より直接的でわかりやすいメリットがあります。

これは、ロードレーサーのお客様とお話をしていて気付かされました。

おそらく、アスリートの立場からすると、このような具体的なメリットを指摘されたほうが、ウエイトトレーニングに取り組んでみようと思いやすいのではないでしょうか。

 

ぜひロードレーサーの皆さんも、「ちぎれなくなる」というメリットを取りに行くために、ウエイトトレーニングに取り組んでみていただければ。

また、どうせ取り組むなら、適切なやり方でウエイトトレーニングをやらないと、効果も小さいし効率も悪いです。

適切なやり方を知りたい方は、ぜひとも専門家の指導を受けてみてください。自己流でやるのとは、雲泥の差があります。

» 参考:【アスリート向け】まったく同じエクササイズをやっていても、やり方によってトレーニング効果がまったく異なることがある

 

 

参考文献

  1. Rønnestad et al. (2010) Effect of heavy strength training on thigh muscle cross-sectional area, performance determinants, and performance in well-trained cyclists. Eur J Appl Physiol. 108(5):965-975
  2. Rønnestad et al. (2015) Strength training improves performance and pedaling characteristics in elite cyclists. Scand J Med Sci Sports. 25(1):e89-98

 

 

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【編集後記】

娘の首がすわってきて、抱っこがだいぶラクになってきました。娘の体重は増えてるけど、私の腰への負担は減っている気がします。