つい最近、以下のようなつぶやきをしました。
特定の筋肉を「アクセル筋」とか「ブレーキ筋」と呼ぶのをたまに見かけるけど、あれなんなんですかね?めちゃくちゃナンセンスですよね。
だって、同じ筋肉でも、動作によって、あるいは同じ動作内でも局面によって、アクセル(加速)とブレーキ(減速)の役割をどちらも果たしうるわけなので。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
結構反響があったので、ブログ記事としても書き残すことにしました。
X投稿だとタイムライン上で流されてしまって残りづらいので。
特定の筋肉を「アクセル筋」とか「ブレーキ筋」と呼ぶのはナンセンスです
ネットやSNS上で、「アクセル筋」とか「ブレーキ筋」という言葉が使われているのは以前からたまに目にしており、そのたびに違和感を覚えていました。
私が目にした範囲内では、大腿四頭筋を「ブレーキ筋」、ハムストリングを「アクセル筋」と呼んでいるケースが多い印象です。
また、「ブレーキ」というのは減速のことを意味していて、「アクセル」というのは加速のことを意味しているんだろうと考えられます。
となると、ここで疑問になってくるのは、「大腿四頭筋は減速にしか使われないのか?」「ハムストリングは加速にしか使われないのか?」という点です。
そんなわけありません!!
冒頭で紹介したX投稿の後半でも説明しているように、同じ筋肉でも、動作によって、あるいは同じ動作内でも局面によって、加速と減速の役割をどちらも果たしうるわけですから。
私もスポーツ科学を20年以上勉強していますが、「減速だけにしか使われない筋肉」とか「加速だけにしか使われない筋肉」なんて聞いたことがありません。
そんなものが存在するというのであれば、教えてほしいくらいです。
仮に、私の勉強不足で、実際にそのような筋肉が存在するとしても、少なくとも大腿四頭筋とハムストリングは当てはまりません。絶対に。
多くのスポーツ動作において、筋肉はストレッチショートニングサイクル(SSC)と呼ばれる活動様式をおこなっています。
SSCというのは、筋肉が一度引き伸ばされてからただちに短縮するような運動様式のことを指します。
たとえば、垂直跳びをするときには、一度しゃがんでからジャンプしますが、これはしゃがむ時に筋肉が引き伸ばされて、その後筋肉が短縮しながら上方向に加速してジャンプをしているわけです。
SSCにおいては、同じ筋肉の役割がブレーキからアクセルに急激に変化します。
垂直跳びにおいては、たとえば大腿四頭筋はしゃがむときはブレーキの役割を果たしますが、その後ジャンプするときはアクセルの役割を果たします(大腿直筋は例外かもしれません)。
こんな筋肉を「ブレーキ筋」などと呼ぶのが、いかにナンセンスかおわかりいただけるはずです。
いやいや、べつに特定の筋肉が常に「アクセル筋」もしくは「ブレーキ筋」である、と言っているわけではなく、特定の動作の特定の局面においては、その筋肉はアクセルもしくはブレーキの役割を果たしている、という意味合いで「アクセル筋」とか「ブレーキ筋」という呼び方を使っているんだよ、という反論があるかもしれません。
しかし、だったら「この筋肉はこの動作のこの局面においてはエキセントリックに力を発揮してブレーキの役割を果たしている」と説明すればいいだけであり、「ブレーキ筋」みたいなレッテルを貼る必要性は1ミリも見いだせません。
なぜ「ブレーキ筋」とか「アクセル筋」とかいう呼び方が広まったのか?
私もなぜ「ブレーキ筋」とか「アクセル筋」とかいう呼び方が広まったのがわかりませんでした。
しかし、冒頭のX投稿をしたあと、それが広まったキッカケはサッカー漫画でそのような呼び方が使われたのがキッカケである、と教えていただきました。
フットボールネーションというサッカー漫画の1巻でおかしな解説をしたのが広まりました https://t.co/o9YwrqUcD3 pic.twitter.com/yGkPuuixsG
— J-Shira (@Team_inspire)
漫画の影響力ってすごいな〜と改めて驚かされましたが、その影響力が場合によっては悪い方向に行ってしまうこともあるということは注意する必要があるようです。
漫画の目的はあくまでもエンターテイメントなので、その中で紹介されている内容が科学的に正しいなんて思い込まないほうがいいでしょう。
また、その漫画で「ブレーキ筋」とか「アクセル筋」という言葉が使われたそもそもの大本のキッカケである書籍についても、X投稿で教えていただきました。
漫画の元は「究極の身体」の
高岡英夫先生のこの本と思います。様々な選手の静止写真を切り取って、
「ほら!モモ前使ってないでしょぉー!!」って海外選手をベタ褒めしてる内容でした。 https://t.co/3GzUZoMpWp pic.twitter.com/q0ExG1cYQ9— kazuki ando 安藤 和生 (@kazukianrakudo)
ただし、私はこちらの一次情報は調べてないので、真偽の程はわかりません。
あくまでも紹介しておくだけにとどめておくので、興味のある方はご自身で調べてみてください。
私は個人的に、わざわざお金と時間を使ってこちらの一次情報を調べる意欲は今のところ湧いてきません。
まとめ
キッカケがなんであれ、特定の筋肉を「アクセル筋」とか「ブレーキ筋」と呼ぶのはナンセンスです。
これは自分のアタマで考えればすぐにわかるはずです。
一次情報にあたるまでもありません。
とはいえ、最低限のスポーツ科学の知識がないと、この考え方のおかしさに気づくのが難しいのもまた事実です。
専門家ではないアスリートや競技コーチであれば、そういうものなのか・・・と騙されてしまう可能性もあります。
実際に、漫画を読んでからモヤモヤしていたけど、私のX投稿を読んでスッキリしました、と報告してくださった方もいらっしゃいました。
「なるほど、そういう方もいるんだな〜」と思ったので、スポーツ科学の博士号を持っている私が100%の自信をもってハッキリと申し上げます。
特定の筋肉を「アクセル筋」とか「ブレーキ筋」と呼ぶのはナンセンスです!!
モヤモヤされていた方は、このブログを読んでスッキリしてください。
また、今後「ブレーキ筋」「アクセル筋」が云々言っている人に出くわしたら、自信をもってこちらのブログを紹介してあげてください。
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【編集後記】
人生初のインフルエンザで苦しみました。
2~3日も休んでいれば治るだろうくらいに思っていたら、全然そんなことはなかったです。
一番つらかったときは「このまま死んじゃうんだろうか」と思ったくらいです。
熱は4日目くらいには下がったのですが、病み上がりの身体の重さみたいなのがかなり長く続いています。
健康な身体の重要性を改めて実感しました。
インフルエンザ流行っているようなので、皆様もお気をつけください。