#394 股関節前部につまり感がある時の対処法2.0

※本ブログはアフィリエイト広告を利用しています

 

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本ブログ「S&Cつれづれ」を始めて間もない頃に、「股関節前部のつまり感」についての記事を書きました:

#33 股関節前部のつまり感:Femoral Anterior Glide Syndrome

 

この記事は5年も前に書いたものですが、いまだに継続して読まれています。

Googleアナリティクスを使ってページビュー数を調べてみても、これまで書いた記事の中でトップ5に入るほどの人気を誇っています。

私がブログを書いたりフリーランスとして活動したりするうえで参考にしている『フリーランスのための一生仕事に困らない本』に書かれている「ブログの強みは『資産』になることで、書いた記事が蓄積され、ネットという大海で検索されるようになる」という言葉がいかに正しいかを噛みしめているところです。

 

この記事がそんなに多く読まれているということは、股関節前部のつまり感で困っている方が多いのでしょう。 

最初に記事を書いた頃よりも、股関節前部のつまり感に対する私の経験値も上がっていますし、ブログを書き続けてきたおかげで文章力も上がっているはずです。

そこで、あらためてこの関心の高いトピックについて、私なりの考え方を整理してシェアしたいと思います。

重複する内容についてはできるだけ省くので、元の記事も合わせてお読みいただいたほうが、理解が深まるはずです。

 

 

股関節前部つまり感の原因

原因については、さまざまなものが考えられます。 

たとえば、femoroacetabular impingement(FAI)のように、骨の形状が原因の場合、S&Cコーチの私にとってはどうしようもないので、医療機関を受診されることをオススメします。

それ以外にも、つまり感だけではなく痛みを伴う場合は、これまたS&Cコーチには手の負えないケースなので、メディカルの専門家に診てもらうのが良いでしょう。

 

それ以外のケースで、適切な筋群をうまく使えていないとか、単純に筋力が弱いとか、関節のモビリティの問題であるとか、そういった場合は、私でもどうにか対処ができます。

で、S&Cコーチの私が対処できる場合の多くは、股関節前部のつまり感は「Femoral Anterior Glide Syndrome(大腿骨前方すべり症候群)」で説明がつきます

この「Femoral Anterior Glide Syndrome」は、アメリカの理学療法士であるShirley Sahrmannが著書の『Diagnosis and Treatment of Movement Impairment Syndromes(日本語訳「運動機能障害症候群のマネジメント」)』 で名付けているものです。

「股関節を屈曲させる時に、通常は大腿骨頭が関節内でposterior glide(後方すべり)することになっているが、そのposterior glideが不十分であるために、大腿骨と股関節関節包前部組織の間でインピンジメントを起こしている状態」と説明されています。

 

そのような状態(=運動機能障害)が起こる原因として、Sahrmann氏は主に2点を挙げています:

  • 原因その①:股関節の前後でstiffnessに差ができている
  • 原因その②:股関節伸展において、大臀筋よりもハムストリングが優位になっている

 

①股関節の前後でstiffnessに差ができている

股関節の関節包後部がなんらかの原因で硬化し(stiffになり)、逆に、ヒップフレクサーの過剰なストレッチ等により股関節前部の軟部組織が伸ばされ柔軟になると、股関節の前後でstiffnessに差が生じます。

すると、結果としてstiffnessがより小さい股関節前方に大腿骨頭が動きやすい状態になり、股関節屈曲中の大腿骨頭のposterior slideが不十分になる可能性があります。

 

②股関節伸展において、大臀筋よりもハムストリングが優位になっている

大臀筋が弱いor使えないアスリートは非常に多いです。

そのような場合、大臀筋の代わりにハムストリングが股関節伸展の優位筋となります。

ハムストリングの停止部は脛骨と腓骨なので、大腿骨に直接影響を及ぼすことはできません。

また、下肢のより遠位部に付着していることもあり、股関節伸展においてハムストリングが優位筋となると、大腿骨頭の位置や動きのコントロールが難しくなります。

特に、股関節の前部に過剰な柔軟性があると、大腿骨等は前方にすべりやすくなり、インピンジメントが生じます。

 

 

股関節前部つまり感の解決策

「Femoral Anterior Glide Syndrome」が起こる原因を知れば、おのずとその解決策も見えてきます。

S&Cコーチの立場で使える解決策を、紹介していきます。

 

①痛みの出る動きやエクササイズをしばらく控える

痛みが出るほどつまっているのであれば、痛みを起こす動きは避けるべきです。

我慢してやっても悪化するだけです。

 

②ヒップフレクサー(股関節前部)のストレッチをしばらく控える

過剰なヒップフレクサーのストレッチは、股関節前部の軟部組織を過剰に引き伸ばしてしまい、大腿骨頭の前方すべりに繋がるリスクがあります。

少なくとも、股関節前部のつまり感を解決しようとしている間は避けたほうが賢明です。

どうしてもヒップフレクサー筋群の緊張をゆるめたいのであれば、ストレッチの代わりにフォームローラー等を使ってセルフ筋膜リリースでもやったほうが安全でしょう。

 

③股関節のモビリティドリルを実施する

股関節の関節包後部のstiffnessを改善する目的で、そこをターゲットにしたモビリティドリルを実施し、大腿骨頭のposterior glideを促してあげます。

 

④大臀筋のアクチベーションドリルを実施する

股関節伸展をする時に、ハムストリングではなく大臀筋を優位筋にするために、大臀筋のアクチベーションドリルを実施するという方法があります。

大臀筋のアクチベーションドリルにはさまざまな方法が存在するので、自分にとって、あるいはアスリートにとってベストなものを見つけて実施するのがよいでしょう。

あえて1つオススメするなら、下の動画で紹介されているものです。

 

⑤腸腰筋または体幹部前方のアクチベーションドリルを実施する

下の動画で紹介しているドリルを実施すると、つまり感が改善される場合があります。

私自身、なぜこのドリルが効果があるのか、そのメカニズムは理解できていないのが正直なところですが、これをやるとつまり感が無くなるアスリートも現実としているので、とりあえず紹介しておきます。

 

⑥GS Performance式のリバースランジで大臀筋を鍛える

大臀筋を徹底的に意識して鍛えることで、筋力をつけてあげて、使えるようにしてあげれば、大腿骨骨頭のposterior glideを促してつまり感の解消につながるはずです。

で、「大臀筋を鍛えよう!」というと、最近はヒップスラストが人気のあるエクササイズなので、それを思いついた方も多いはずです。

たしかに、大臀筋にフォーカスして鍛えるには良いエクササイズなのですが、股関節前部のつまり感の解決策としてはベストの選択ではありません。

なぜなら、ヒップスラストにおいては、股関節伸展位で負荷が最大になり大臀筋を意識しやすいのですが、股関節のつまり感が起こるのは股関節屈曲位だからです。

 

そこで私がオススメしたいのが、GS Performance式のリバースランジです。

参考 Reverse Lungenote

このエクササイズにおいては、股関節屈曲位において大臀筋を徹底的に意識して使い、股関節を伸展する筋力を鍛えることができます。

つまり感が発生しやすい股関節屈曲位において大臀筋を使えるだけの筋力を鍛えることができれば、大腿骨頭の前方すべりを防ぐことで、つまり感の解消に繋がるはずです。 

私があえて「GS Performance式」と言っているのには理由があります。ただ、リバースランジをやるだけでは不十分だからです。

GS Performance式のリバースランジでは、「ここまでやるの!?」というくらい徹底的に大臀筋を意識することが重要で、フォームもそれを達成するためのものになっています。

GS Performance式のリバースランジのやり方については、上記のnoteページを参考にしてみてください。

ただし、文章を読んだり動画を見るだけだと、本当のやり方を理解するのが難しいです。

できれば、GS Performanceのセミナーに参加して、自身のカラダで体験して頂くのがベストです。

もしくは、GS Performance式のリバースランジを習得している人に教えてもらうとか。

 

⑦ヒップフレクサー(股関節前部)の正しいストレッチ方法を覚える

しばらくはヒップスレクサーのストレッチは控えるべきですが、つまり感がある程度解消されてきて、どうしてもヒップフレクサーの柔軟性を改善する必要があるのであれば、正しいストレッチの方法を覚える必要があります。

間違った方法でストレッチをすると、筋肉を伸ばすどころか股関節前部の軟部組織を伸ばしてしまって、Femoral Anterior Glide Syndromeを逆に誘発してしまいます。

正しいやり方については、私が過去に書いた下記ブログ記事をご覧ください:

#133 ヒップフレクサーをストレッチする時はおなかとお尻に力を入れる

 

 

まとめ

私が提案した解決策のうち、①〜⑤は短期的なソリューションです。「今、つまり感があって、どうにかしたい」という場合に試してもらうといいでしょう。

一方で、⑥と⑦は長期的なソリューションです。すぐにどうこうできるものではありませんが、根本的な解決をするには、特に⑥で示したように、股関節屈曲位においてケツを使えるだけの筋力や柔軟性の養成が必要になります。

私自身、以前はたまにつまり感をおぼえることがあり、③④⑤あたりを実施すると、一時的につまり感が解消されて、問題なくウエイトトレーニングを実施できたという経験をしたことがあります。

しかし、GS Performance式のリバースランジを開始して、徹底的にケツを鍛えるようになってからは、そもそもつまり感を感じること自体がなくなりました。

これは、あくまでも私個人の経験なので被験者数N=1のデータにすぎませんが、論理的に考えてみても、股関節屈曲位における大臀筋の筋力向上が、つまり感の根本的な解決に繋がると私は確信しています。

前回の記事を書いてから5年ほどの間にアスリートの指導をしてきた経験からも、やはりそのように感じます。

みなさんのご参考になれば幸いです。

 

 

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【編集後記】

先日、Bリーグの試合観戦に行きました。