#818 ウエイトトレーニングは意識せずにやるべきか否か

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David matos xtLIgpytpck unsplash

 

ちょっと前に以下のような引用リツイートをしました:

ブログで解説すると言ったからには、ブログを書かないと嘘つきになっちゃうので、がんばって書きます。

 

 

動画から受けた印象と感じた違和感

まずは、引用先ツイートの動画を観てください。

元プロ野球選手の五十嵐さんは、動画のなかで結構いろいろなことをおっしゃっていますが、メインの主張としては「ウエイトトレーニングのときは使う筋肉をあえて意識しないほうが良い」ということだと私は受け取りました。

スクワットを例に挙げて、「下半身は意識せず、丹田だけを意識すれば、結果的に(下半身を)使うから大きくなる」ともおっしゃっています。

おそらく、ボディビルディング的に1つ1つの筋肉を意識して鍛えるのではなく、動きとか連動性を重視してウエイトトレーニングをやるべき、という哲学をお持ちなのでしょう。

 

引用元のツイートへの反応を見る限り、この動画を観た方の多くは、「なるほどな、深いな、確かにそうだな」という感想を持たれたようです。

私も15〜20年前だったら賛同していたでしょう。

「やっぱり、プロ野球で実績を残した人は言うことが違うな」と。

しかし、2021年現在の私は、この説明を聞いてハッキリとした違和感を覚えました。「あ、ちょっと違うな」と。

それが、冒頭で紹介したツイートの「ちょっと私の考え方とは違いますね」という発信に繋がりました。

 

 

 

ウエイトトレーニングは意識せずにやるべきか否か

五十嵐選手の考え方のどこに違和感を覚えて、私の考え方はそれとどう異なるのか?

スクワットを例に挙げて解説していきます。

 

五十嵐さんは「スクワットでは下半身を意識しないほうが効率が(良くなる)・身体の使い方はうまくいく」とおっしゃっています。

もし、スクワットを実施する目的が、「できるだけ効率的に・ラクに・自然にしゃがんで立ち上がる」とか「身体の連動性という能力を鍛える」ということなのであれば、五十嵐さんのやり方が手段としては適切なのかもしれません。

しかし、その目的設定がそもそも間違っているんじゃないですか?というのが私の考えです。

 

私がアスリートにスクワットをやってもらう目的は、シンプルに言うと「股関節を伸展させるケツの筋力を高めるため」です。

ここで言う「ケツ」は主に大殿筋を指しますが、大内転筋等の他の筋肉も含まれるもう少し大きな枠組みの概念と私は捉えているので、あえて「ケツ」と呼んでいます。

いわゆる股関節伸展に貢献する股関節周りの筋群の総称を「ケツ」と呼んでいる、そう捉えていただければ。

 

私の経験上、この「ケツ」をちゃんと使えているアスリートは少なく、筋力も弱いケースがほとんどです。

だけど、ケガをしづらい身体づくりのため、そしてパフォーマンス向上に繋げるためには、ケツの筋力が非常に重要であることは間違いありません。

しかし、競技の練習をしているだけでは鍛えることが難しい部位ではあるので、あえて練習とは別にウエイトトレーニングを実施してケツを鍛えてもらうわけです。

 

ここでのポイントは、「ケツ」をちゃんと使うのが難しい、という点です。

難しいからこそ、ケツをちゃんと使えているアスリートが少ないのです。

そして、ほとんどのアスリートは、下半身を意識せずにスクワットをしたら、もも前の筋肉(=大腿四頭筋)をめちゃくちゃ使うような動きになります。

彼ら・彼女らはケツが上手に使えていない一方で、大腿四頭筋はすぐに使えて筋力もついていることが多いので、そこを使ってあげたほうが自然だしラクだし効率的だからです。

 

そのような状態で、下半身を意識せずに連動性を重視してスクワットを継続していけば、大腿四頭筋は鍛えられてさらに強くなる一方で、ケツはいつまでたっても強くなりません。

もし、スクワットの目的が「股関節を伸展させるケツの筋力を高めるため」なのであれば、そのようなフォームは手段としては適していない、ということになります。

 

じゃあ、ケツをちゃんと使ってスクワットを実施して、ケツの筋力を高めるためにはどうすればいいのか?

めちゃくちゃ意識してケツを使うような動き(=フォーム)でスクワットをすればいいんです。

必ずしも、「ケツ」という筋肉そのものを意識する必要はありません。

ただ、ケツを使わざるを得ないような動き(=フォーム)を規定して、その動きをめちゃっくちゃ意識してスクワットを実施することが重要です。

そのような動きは、ある意味とても不自然で面倒くさい動きではあります。でも、それでいいんです。

ちゃんとケツを使うのが難しいからこそ、そこを鍛えるときには、たとえ不自然で面倒くさくても、目的に則したフォームをめちゃくちゃ意識して動くことが必要になります。

 

めちゃくちゃ意識しないと、自分にとってはラクな動き(大腿四頭筋を主に使うような動き)になってしまいます。

脳ミソはできるだけラクをして目の前のタスクをこなすような動きを自然と選択するようにできているからです。

しかし、そのような自然な動きはケツの筋力を高めるという目的からは外れているので、エラー動作ということになります。

 

 

ウエイトトレーニングで意識して鍛えた筋肉を競技動作で無意識に使えるようにする

スクワットを例にしてごちゃごちゃと説明をしましたが、シンプルにまとめると:

  • 意識をしないでウエイトトレーニングをすると、すでに強くて使いやすい筋肉を主に使うような動きになりがち
  • それだと、鍛えようとしている筋肉が使われず、筋力向上に繋がらない場合がある
  • 鍛えようとしている筋肉を使わざるを得ないような動きを規定して、それをめちゃくちゃ意識してトレーニングするのが重要

ということになります。

 

この基本的な考え方は、スクワット以外のエクササイズにも当てはまります。

そのエクササイズで何を鍛えたいのか(=目的)を決めて、その目的に則した動き(=フォーム)を規定して、その動きをめちゃくちゃ意識してトレーニングをする。

これが大切です。

ウエイトトレーニングに関しては、思いっきり意識してやるべき。これが私の考え方です。

 

そのように、意識してウエイトトレーニングをすることで鍛えられた筋肉は、実際の競技の動きのなかで無意識に使われるようになるはずです。

強い筋肉を使ったほうが効率的で・ラクで・自然な動きになるからです。

逆に言うと、重要な筋肉が競技の動きのなかで無意識に使われるようにするために、ウエイトトレーニングではその筋肉が鍛えられるような動きをめちゃくちゃ意識する、ということです。

 

もちろん、ウエイトトレーニングによって強くなった筋肉が、競技の動きのなかで自動的に使われるようになるかといえば、必ずしもそうならないこともあります。

あるいは、そうなるまでに時間がかかることもあります。

もともと弱かった筋肉を頼らずに、すでに強い筋肉を使って競技動作を実施することが身体に染み付いているはずなので、もともと弱かった筋肉がウエイトトレーニングによって強くなったとしても、それまで使っていた「動きのプログラム」を書き換えることは容易ではないからです。

場合によっては、ウエイトトレーニングによって強化された筋肉を使うことを意識しながら競技動作の練習をする必要があるかもしれません。

必ずしも、競技動作中にその筋肉を意識しろ、というわけではなく、その筋肉が競技動作中に使えるようにするための練習方法とかドリルとかを工夫しましょう、ということです。

意識して練習することで、ひとたび脳ミソが「あ、以前は弱かったここの筋肉が強くなっているな、ここを使ったほうが効率的で・ラクで・自然な動きができるな」と感じてくれれば、その後は意識しなくとも自然にその筋肉を使うような動きができるようになるはずです。

 

つまり、ウエイトトレーニングがパフォーマンス向上に繋がるまでには、以下のような3つのステップを踏む必要があるということです:

  • ①ウエイトトレーニングを実施して対象となる筋肉を鍛える
  • ②鍛えられて筋力が向上した筋肉を使うように「動きのプログラム」を書き換える
  • ③結果として競技パフォーマンスが向上する

 

最終的に競技の動きをするときには、特定の筋肉を意識することなく、最大限のパフォーマンスを発揮することにフォーカスするべきです。

その結果として、必要とされる筋肉が勝手に使われる、というのが理想だと思います。

しかし、その筋肉が勝手に使われるようになるためには、その筋肉の筋力や柔軟性等を高めてあげる必要があり、その手段としてのウエイトトレーニングにおいては、その筋肉を鍛えるための動きをめちゃくちゃ意識することが必要です。

そして、ウエイトトレーニングで鍛えた筋肉が競技動作のなかで無意識のうちに勝手に使われるようになるまでには、一時的に意識をして工夫をしながら練習をすることが必要になるかもしれません。

 

 

まとめ

ウエイトトレーニングは意識せずにやる、という考え方について、私が違和感を感じた理由を説明してみました。

正直言って、このブログ記事を読むだけで、私の言わんとしていることを完全に理解するのは難しいと思います。

本当の意味で「ウエイトトレーニングは意識してやるべき」という私の主張を理解するためには、私の指導するウエイトトレーニングのやり方を体験してもらう必要があります。

ただ、少なくとも理屈だけでも少し触れていただければと思い、このブログ記事を書きました。

理屈部分をもっと深く理解したいという方は、ぜひ拙著をお読みください。

 

ちなみに、五十嵐さんはとくに意識しなくてもケツを使ってスクワットをすることのできる珍しいアスリートだった可能性はあります。

もしそうだったとしたら、無意識にスクワットをしても結果としてケツを鍛えることができていたはずなので、競技力向上に繋がるようなトレーニングになっていたのかもしれません。

しかし、そんなアスリートは100人に1人くらいのレアキャラです。

他の99人には通用しません。

それに、あくまでも結果オーライだったというだけで、理屈として正しいというわけではありません。

そのあたり、誤解のないように。

 

 

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【編集後記】

昨日、久しぶりに家族でスシローに行きました。

結構うまかった。そして家族連れでも行きやすい。

また行きます。