「Deload Week」なるコンセプトについて、これまで本ブログでいくつか記事を書いてきました。
また、「Deload Weekの理論と実際」というタイトルで、電子書籍を執筆してKindle本として出版しています。
さらには、「Deload Weekの理論と実際」というタイトルでオンラインセミナーを実施し、それを収録した動画も販売しています。
動画 Deload Weekの理論と実際
これだけ「Deload Week」について発信をしているのは、プログラムデザインにおいて非常に役に立つツールの1つである、と私自身が感じているからです。
実際に、アスリートのトレーニング計画を立てるときには、「Deload Week」を有効活用しています。
とはいえ、「Deload Week」を直接的なテーマとして、その効果について調べている研究はこれまでほとんどありませんでした。
私のこれまでの発信も、「Deload Week」に関連する他テーマについての間接的な科学的知見や論理的思考に基づいたものでした。
そんな中、「Deload Week」の効果について直接調べた研究が今年に入って発表されたので、とりあげてレビューします。
論文の内容
研究プロトコル
トレーニング経験者39名が、以下の2つのグループに分かれて、9週間にわたってレジスタンストレーニングを実施した。
- DELOAD:5週目を「Deload Week」として1週間トレーニングを完全に休止
- TRAD:9週間継続してトレーニングを実施
両グループとも同じトレーニングプログラムを実施した(下半身週2回、上半身週2回、各5セット✕8~12レップ to volitional failure)。
唯一の違いは、5週目にトレーニングを実施したか(TRAD)、休止したか(DELOAD)であった。
9週間のトレーニング期間の前後に、下半身の筋肥大・筋パワー・筋力・筋持久力の指標を測定した。
結果
グループ間で9週間のトレーニング効果を比較した結果をまとめます:
- 筋肥大に関する指標については、グループ間で差は見られなかった
- 筋パワーに関する指標については、グループ間で差は見られなかった
- 筋力に関する指標については、TRADグループのほうがDELOADグループよりも向上効果が大きい傾向が見られた
- 筋持久力に関する指標については、グループ間で差は見られなかった
考察
この研究結果を簡単にまとめると、9週間のトレーニング期間の真ん中のタイミング(5週目)で「Deload Week」を設けても、プラスの効果がないどころか、筋力向上については逆効果になりかねない、ということです。
そのような事実だけに目を向けると、「じゃあ、『Deload Week』なんてやらないほうがいいんじゃないの?」と結論付けたくなるかもしれませんが、それはちょっと性急すぎます。
というのも、今回紹介した研究においては、その研究デザインにおいて、いくつか気になる部分があるからです。
その中でも最も気になるのが、「Deload Week」のやり方です。
一言で「Deload Week」と言っても、その具体的なやり方はいろいろとあります。
たとえば、セット数を減らす、エクササイズ数を減らす、トレーニング頻度を減らす、挙上重量を減らす、1セットあたりのレップ数を減らす、エクササイズを変える、等のやり方があります。
そのあたりの詳細については、拙著で詳しく解説しているので、興味のある方はぜひポチってください。
数ある「Deload Week」の手法の中で、今回紹介した研究において採用されたのは「トレーニングを完全に休止する」というやり方でした。
したがって、今回の研究結果が当てはまるのは「トレーニングを完全に休止する」という特定のやり方で「Deload Week」を実施した場合のみである、と考えて差し支えないでしょう。
それ以外のやり方を採用して調べたら、まったく異なった結果になっていたかもしれません。
だから、今回とりあげた論文を読んで、「『Deload Week』はやらないほうがいいのか〜!!」などと否定する必要はありません。
そもそも、さまざまな「Deload Week」のやり方の中でも、「トレーニングを完全に休止する」というのは、デメリットがメリットを上回る可能性が高く、個人的にもオススメしないやり方です。
拙著の中でも、以下のように解説しています。
…「1週間トレーニングを完全に休止する」というやり方は、deload weekの戦略として最適なものとは言えないでしょう。完全に休止するのではなく、少し軽めにするくらいに留めておいたほうが、deload weekの目的には適っているし、メリットが上回る可能性も高いです。
したがって、今回紹介した論文のアブストラクトを最初に読んだときは、「なに〜!『Deload Week』の有効性を否定するようなデータなのか!?」と少し不安になりましたが、論文をすべて読んだ後は「やはり、『トレーニングを完全に休止する』というやり方はダメなんだろうな〜」「だけど、他のやり方の『Deload Week』の有効性を否定するようなデータではないな」と冷静に受け止めることができました。
Limitation
この研究のLimitationはいくつかあります。
外的妥当性という観点でいうと、この結果が当てはまるのは「トレーニングを完全に休止する」という特定のやり方で「Deload Week」を実施した場合のみであり、他のやり方の有効性まではわからない、というのがその1つです。
それ以外にも、トレーニング期間が「9週間」と短い点だったり、筋力測定が「スミスマシンスクワット」という多くの被験者にとって慣れていないであろうエクササイズで測定されている点だったり、1セットあたりのレップ数が8~12レップで主に筋肥大を目指したトレーニング内容だったので、1セットあたり3~5レップで主に筋力向上を狙うようなトレーニング内容の場合はどういう結果になったかわからない点、などが挙げられます。
まとめ
「Deload Week」について直接調べた貴重な論文を紹介しました。
結論としては、効果がないOR筋力向上については逆効果、というネガティブなものでしたが、あくまでも「トレーニングを完全に休止する」というやり方で「Deload Week」を実施した場合に限られます。
私にとっては、「トレーニングを完全に休止する」というのは「Deload Week」のやり方として、もともと優先順位は一番低いものでした。
ある意味、その私の考えを裏付けてくれるようなデータだと捉えることもできます。
それ以外のやり方で「Deload Week」を実施した場合については、直接的に調べたデータがほぼ存在しませんが、関連する他テーマについての間接的な科学的知見や論理的思考に基づいて判断したうえで、今後も活用していくつもりです。
少なくとも、それらの効果を否定するような新たな科学的知見がでてくるまでは。
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【編集後記】
最近はマックよりモス派です。