アスリートが新しいエクササイズやトレーニング方法を導入する時の判断基準についてのお話をします。
アスリートの直感は常に正しいのか?
アスリートが新しいエクササイズやトレーニング方法を導入する時、まずは試しにやってみるはずです。
そして、試しにやってみた感想として「あ、なんかこのエクササイズは良さそうだな」とか「あ、この感覚は競技中のあの動作の感覚と近いから、トレーニング効果ありそうだな」と感じることがあるでしょう。
じゃあ、そのアスリートの直感は正しいのでしょうか?
私は個人的に、そのような直感は信じるべきではないと考えています。
なぜなら、「エクササイズやトレーニングをやっている最中にどう感じるか」と「それを長期的に続けた場合にどのような効果があるか」はまったく別の問題だからです。
あまり良くない例ですが、たとえば、覚せい剤や麻薬を使っている人は、使用中は気持ちよくなったりHighな状態になったりしているはずです(私はやったことがないので、想像力を最大限に発揮してお話をしています)。
その直感を信じるならば、覚せい剤や麻薬はカラダに良いものという判断を下すことになります。
しかし、それらを長期的に続けた場合、カラダに良いどころか、カダラも心も蝕まれてしまうのは、皆さんご承知のとおりです。
トレーニングについても同じことが言えるはずです。
やってみた感覚としては効果がありそうだったとしても、長期的に続けたら効果がない、もしくは逆効果になってしまう、という可能性があるのです。
運動 vs. トレーニング
アスリートではなく、一般の人がカラダを動かして汗をかいてその一瞬を楽しむために何かしらのエクササイズをやるのであれば、「あ、このエクササイズ楽しいな」とか「これは自分に合っているな」といった直感をもとに、実施するエクササイズの選択をするのはアリです。
この場合、一般の人がやっているのはトレーニングではなく「運動」であり、カラダを動かすこと自体が目的なので、それでいいんです。
一方、アスリートがやるのは運動ではなく「トレーニング」です。
トレーニングの場合、カラダを動かすことは目的ではなく手段です。
あくまでも目的は長期的に体力を向上させることであって、それを達成するのに適切な手段を選択する必要があります。
そして、長期的なトレーニング効果を、エクササイズをちょっと試しにやってみた時に感じた感覚をもとにして推測するのはほぼ不可能です。
だから、直感は信じないほうがいいです。
まとめ
アスリートは自分の直感をあまり信じ過ぎないほうが良いですよ、というのが私の主張です。
なんとなくこのエクササイズは効果がありそうだな、という自分の感覚を信じすぎてしまうと、悪い人に騙されて、わけのわからないファンクショ◯◯とかいうものに引っかかってしまい、長期的に見ると自分のカラダが蝕まれてしまう可能性があります。
じゃあ、どうやって特定のエクササイズの長期的なトレーニング効果を判断すれば良いのでしょうか?
それは、できるだけ科学的知見を集めたうえで、それを利用してその時点でできるベストな判断をするということになります。
もちろん、科学でこの世の全てがわかっているわけではないですが、自分の直感に頼ってしまうよりもはるかにマシな選択はできるはずです。
ただし、一般のアスリートがそこまで自分でやるのは難しいと思うので、そこは専門家であるトレーニング指導者に任せたほうがよいでしょう(問題なのは、専門家のはずのトレーニング指導者の中にも、科学的知見を重視せずに直感だけで指導しちゃう人達がいることなんですが・・・)。
将棋の羽生善治さんは著書の『決断力』の中で、「経験や知識にもとづいた直感は正しいことが多い」といった主旨の事をおっしゃっています。
この考え方はスゴイ興味深いですし、あれだけの実績のある人が言っているので、そうなんだろうな〜と私も思います。
しかし、ことトレーニングにおけるエクササイズ選択に関しては、これは当てはまらないです。
知識と経験にもとづいた私の直感です。
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【編集後記】
今月発売のコーチングクリニックに私の書いた記事が掲載される予定です。
発売されたら、詳細をこのブログで宣伝したいと思います。
お楽しみに!