前々回のブログで、両足を横一直線に揃えた状態から前方へスプリントを開始する場合、一度step backしてから(片脚を後ろに引いてから)スタートした方が(=Falseスタート)、step backせずに片脚を前方に踏み出すスタート方法(=Parallelスタート)よりも速い、という研究結果を紹介しました。
» 参考:【論文レビュー】両足を横一直線に揃えた状態からスプリントを開始する場合、そのまま前に一歩踏み出した方が速いのか、一度ステップバックした方が速いのか?
前々回のブログで紹介した研究のLimitation
しかし、この研究結果のみによって、Parallelスタートと比べたFalseスタートの優位性を完全に証明することができたわけではありません。
なぜなら、そのような研究結果が出た理由の1つとして、「この研究に参加した被験者がParallelスタートという不自然な動きに慣れていなかった」という要因が排除できないからです。
もしかしたら、たとえば数ヶ月間Parallelスタート(とFalseスタート)を練習させたうえで再び同じ実験をしたら、逆の結果が出る可能性だってあるんです。
そのLimitationを払拭する別の研究
そんなことを考えていたら、同僚のバイオメカニストY氏から以下の論文を紹介されました:
この研究では、前々回のブログで紹介した論文とほぼ同じような実験をして、ほぼ同じような結果が報告されています。
つまり、FalseスタートとParallelスタートを比べた時に、前者のほうが速かったということです。
この研究のオリジナルの部分は、被験者がアメフトのラインバッカーで、彼らはアメフトの練習や試合でParallelスタートを使うように指導されていた、という点です。
つまり、彼らはParallelスタートを繰り返し練習していて、その動きに慣れていたにも関わらず、Falseスタートのほうが速かったということです。
まとめ
FalseスタートのほうがParallelスタートよりも速くて、それはParallelスタートという不自然な動きに慣れていないという理由だけでは説明できないというデータを、前々回のブログにおける論文レビューの補足として紹介しました。
やはりバイオメカニクス的に、あるいは動きの本質的な特徴として、ParallelスタートよりもFalseスタートのほうが速いんだということです。
もちろん、この研究も1つのデータにすぎないので、条件が変われば結果が変わる可能性はあります。
それでもやっぱり、これだけのデータが揃っているんだから、わざわざParallelスタートをアスリートに教え込む理由は私には思いつきません。
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【編集後記】
また少し腰を痛めました。
無意識に腰の負担を減らそうとしているのか、お尻の筋肉が常にONのスイッチが入っている状態にあり、カッチカチです。
歩き方もASIMOみたいになっています・・・。