前回のブログ記事で、「アスリートから『競技中の〇〇動作が課題なんです』と言われた時に、〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズを考案してやらせるのはNGです」とお伝えしました。
» 参考:競技中の〇〇動作を改善したいからといって、〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズをやっても課題解決には繋がりません
今回のブログ記事では、アスリートから「競技中の〇〇動作を改善したい」と相談された場合に、どのように対応したらいいのか、について私見を述べたいと思います。
アスリートから「競技中の〇〇動作を改善したい」と相談された場合の対応策
- ①まずはアスリートの話を聞く
- ②競技動作の練習をどのくらいしているか確認する
- ③課題となっている競技動作について分析をしてギャップを見つける
- ④トレーニング内容を変更して対応できそうなら変更する
- ⑤具体的な対応策についてアスリートに説明する
①まずはアスリートの話を聞く
アスリートがどんな課題を抱えているのか、まずは本人から話を聞かないと、何も始まりません。
それなりの時間をとって、深堀りをしながら、耳を傾けましょう。
ただし、悩みを抱えているアスリート自身が、その悩みの本質や解決策について理解しているとは限りません。
話は真剣に聞きつつも、アスリートの発言を額面通りに受け取らずに、その発言の裏側にある本質を探るような「カウンセリング能力」が求められます。
» 参考:コーチやアスリートの本当の要望を聞き出すカウンセリング能力
②競技動作の練習をどのくらいしているか確認する
アスリートから話を聞く作業中に、とくに確認しておきたいのが「改善したい競技動作の練習をどのくらいやっているか」という点です。
アスリートから「競技中の〇〇動作を改善したい」と相談された場合、私は必ずこの点を質問するようにしています。
で、驚くことに、「そんなにやってません」という答えが返ってくることがほとんどです。
「毎日数時間かけて練習しているんですが、全然改善できないんです」と言われたことは私の経験上ゼロです。
やはり、競技動作を改善するためには、その動作の「練習」を避けて通ることはできません。
練習をせずに、その動作を改善させるなんて不可能です。
» 参考:【アスリート向け】スポーツがうまくなりたいなら、練習をやらないとダメ。それも、うんとたくさん。
なので、アスリートが改善させたい競技動作の練習をそんなにやっていない場合は、「そりゃ、練習たくさんやらないとうまくならないよ」とやさしく伝えてあげましょう。
そのうえで、トレーニングをして体力を向上することの役割・メリットは、「ケガをせずに高強度の練習をたくさん繰り返すことが可能になる」「体力不足が原因で競技動作が改善されない場合、そのボトルネックを取り除くことができる」ということにあるんだ、と説明してあげましょう。
どちらにしろ、最終的には競技動作そのものをたくさん練習することはマストなので、まずはそこから変えてもらう必要があります。
③課題となっている競技動作について分析をする
練習をたくさんやってもらうことはマストですが、場合によっては体力不足がボトルネックになっていて、どれだけ練習を繰り返しても改善できない、という場合もあります。
そういうケースにおいては、ボトルネックとなっている部分をトレーニングで改善することが、競技動作の改善に貢献できる可能性があります。
で、そもそもどこの部分がボトルネックになっているかを探すには、課題となっている競技動作について知ることが必要です。
具体的には、アスリートや競技コーチから話を聞いてその競技動作について教えてもらったり、その動作をバイオメカニクス的に分析した論文があればそれを読んだり、論文がなかったとしてもバイオメカニクスの原理原則に基づいて自分なりに分析をしたり、等の作業をすることです。
そうして、課題となっている競技動作についての理解を深めたうえで、今度は目の前のアスリートがその動作をするときに何が問題なのか、を見つけなければいけません。
理想と現実のギャップを探すようなイメージです。
その「ギャップ」こそが、改善すべきボトルネックということになるのでしょう。
④トレーニング内容を変更して対応できそうなら変更する
競技動作についての分析によって、解決すべき「ギャップ」を見つけたら、次に考えるべきなのは「ギャップ」の改善策です。
その「ギャップ」が起こる原因が、体の動かし方の問題、すなわち技術面の問題なのであれば、特別なトレーニングをする必要はなく、主な解決手段は「競技練習」ということになるのでしょう。
そして、「競技練習」というのはS&Cコーチの領域ではなく、競技コーチの領域なので、競技コーチとアスリートの間でよく相談をしてもらって、課題解決のための競技練習の方向性を決めてもらうのが良いと思います。
一方、場合によっては、解決すべき「ギャップ」が体力不足が原因で生じていると疑われる場合もあるでしょう。
柔軟性が足りずにそのような動き・姿勢ができない、とか、筋力が足りずにそのような動きができない、とか。
その場合は、トレーニングが課題解決に大きく貢献できるはずです。
ただし、だからといって、競技動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズを考案してやらせても課題解決には繋がりません。
そうではなくて、あくまでもボトルネックになっていると疑われる体力要素を効率的に・健康的に・最大限に向上するために最適なエクササイズを選択することが必要です。
「競技動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズ」が、「効率的に・健康的に・最大限に」体力を向上する、という条件を満たすことはほとんどありません。
また、アスリートから「競技中の〇〇動作を改善したい」と相談される前から、まともなS&Cコーチであれば、競技特性をある程度は考慮に入れたうえで、全身をバランスよく鍛えるようなプログラムを作ってトレーニング指導をしているはずです。
そうした中で、競技動作における「ギャップ」に繋がるような、あきらかな体力的な課題(柔軟性不足、筋力弱い)があったら、トレーニング指導をする中で気づいているはずで、すでに解決のためにプログラムを修正している可能性が高いでしょう。
そういうケースにおいては、アスリートから「競技中の〇〇動作を改善したい」と相談されたからといって、あえてトレーニング内容を変更する必要はないかもしれません。
トレーニング指導をする中では気づいていなかったけど、相談を受けたうえで競技動作の分析をしてみたら、トレーニングによって改善できそうな「ギャップ」が見つかった。
そういうケースにおいてのみ、トレーニング内容の変更が必要になります。
新しいエクササイズを追加したほうが良いかもしれないし、すでに実施しているエクササイズの優先度を上げたりセット数を増やしたりする形で対応できることもあるでしょう。
⑤具体的な対応策についてアスリートに説明する
いろいろと分析したうえで、トレーニング内容を変更しようがしまいが、具体的な対応策についてアスリートに説明することは大切です。
とくに、いろいろと考えたうえで、トレーニング面ではとくに変更の必要がない、という結論にたどり着いた場合は、丁寧な説明が求められます。
アスリートの立場からすると、せっかく相談したのに無視された、と受け取られかねないので。
ここのコミュニケーションがなかなか難しいところなんですけどね。
〇〇動作に外的な負荷をかけた筋トレエクササイズを考案してやらせちゃったほうがラクだし、感謝もされるんでしょうけど、結果としてアスリートのためにならないのであれば、グッと堪えて、根気強くコミュニケーションを図って、理解してもらうしかありません。
まとめ
前回のブログで書ききれなかったところを解説しました。
S&Cコーチとして働いていれば、アスリートから「競技中の〇〇動作を改善したい」と相談されることは必ずあると思います。
そういう場合に、どのように対応すべきか、参考になれば幸いです。
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【編集後記】
今年も確定申告をサクッと終わらせました。
普段から経費や売上をfreeeというクラウド会計ソフトに入力しているので、確定申告だからといって作業量はそれほど多くありません。
freeeを使えば確定申告書類作成も簡単です。
フリーランスは会計ソフトを使いましょう。
私はfreeeを使っていてオススメですが、タックスナップという会計アプリも少し気になります。