#722 【論文レビュー】HIITの運動インターバルを高強度で始めると効果が高まるかも!?

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高強度インターバルトレーニング(HIIT)において「インターバル形式」を採用する理由は、VO2maxに近い強度での総運動時間をより多く蓄積できるからです。

» 参考:高強度インターバルトレーニング(HIIT)が流行っているけど、そもそも「インターバル形式」を採用する理由って何?

 

何をもってして「VO2maxに近い強度での総運動時間」と定義するかは人によって違いますが、科学的にはVO2maxの90%以上での運動蓄積時間(time ≧ 90% VO2max)とすることが多い印象です。

トレーニングにおけるtime ≧ 90% VO2maxが多いと、持久力向上効果(とくにVO2max向上効果)が高くなるものと想定されています。

で、HIITのさまざまな変数(例:運動時間、運動強度、休息時間)を決定する際には、このtime ≧ 90% VO2maxをできるだけ増やすことを目指して、さまざまな組み合わせを工夫することになります。

 

HIITにおける運動インターバルを高強度で始めてその後強度を落とす場合と、一定の強度で運動する場合で、このtime ≧ 90% VO2maxに違いが出るかどうかを調べた研究を紹介します。

 

 

論文の内容

Ronnestad et al. (2020) Increasing Oxygen Uptake in Well-Trained Cross-Country Skiers During Work Intervals With a Fast Start. Int J Sports Physiol Perform. 15(3):383-9.

 

研究プロトコル

よく鍛錬された(well-trained)男性クロスカントリースキー選手がオフシーズンの準備期後半に被験者として研究に参加した。

被験者は2つのタイプのHIITプロトコルを実施した。

どちらもトレッドミル上で「5分運動→3分レスト」のローラースキーを5回繰り返す内容だったが、5分間の運動中の強度ペース配分が異なっていた:

  • DEC:最初の1.5分は100%MAS、その後の3.5分は85%MAS ※MASはVO2maxに相当する速度
  • TRAD:5分間ずーっと90%MAS

5分間の平均速度はDECとTRADで大きな差はなかった(時速11.34 vs. 11.28)。

 

 

結果

主だった内容だけ抜粋します。

  • 酸素摂取量(VO2)のピーク値は、DECのほうがTRADよりも高かった。
  • VO2の平均値は、DECのほうがTRADよりも高かった。
  • time ≧ 90% VO2maxには、DECとTRADで統計学的な有意差は見られなかった(が、DECのほうがTRADより平均70秒近くもtime ≧ 90% VO2maxが多かった:12.0分 vs. 10.8分)。
  • RPE(主観的運動強度)は、DECのほうがTRADよりも低かった。

 

 

考察

HIITのトレーニング効果を決定する要因としてtime ≧ 90% VO2maxが重要だという前提で考えると、DECとTRADの間でこの値には統計学的な有意差は見られなかったので、トレーニング効果に差はないかもしれません。

しかし、統計学的な有意差に届かなかったとはいえ、DECとTRADの平均値を見比べてみると、意味がありそうな差はあるようにも思えます。

また、VO2のピーク値や平均値という指標に関しては、DECのほうがTRADよりも高いという結果がでています。

したがって、研究的には(統計学的には)差がないという結論を出すしかないかもしれませんが、現場でトレーニング指導をするS&Cコーチとしての立場でこのデータを解釈すると、DECののやり方を採用するほうがメリットがあるかもしれない、と私だったら判断します。

 

また、RPEがDECのほうがTRADよりも低いというのも注目すべき点です。

つまり、HIITの運動中の強度を一定に保つよりも、最初に高強度でスタートして、その後強度を下げるやり方(=DEC)のほうがアスリートにとってはキツく感じないということです。

仮に、DECとTRADでトレーニング効果がまったく一緒だったとしても、DECのほうがラクに感じるのであれば、そちらを採用するメリットはあると思います。

 

 

まとめ

今回紹介した研究は、あくまでもDECとTRADでtime ≧ 90% VO2maxに対する影響を比べているだけです。

そこからトレーニング効果の違いを推測しているにすぎません。

実際に、数週間〜数カ月間にわたってDECとTRADを実施した場合にトレーニング効果に差が出るかどうかは、長期のトレーニング研究を実施してみないとわかりません。

したがって、あくまでも1つの可能性として捉えておいてください。

 

そして、1つの可能性として考えると、HIITにおいては高強度で運動を開始して、その後強度を落とすというペース戦略のほうが、一定のペースで運動をし続けるよりも効果があるかもしれません。

もしそうであれば、恐らくその理由は、前者のほうが運動開始後にVO2が上昇するのが速くなるため、より長い時間を ≧ 90% VO2maxで運動することができる可能性が高いというものでしょう。

動画 非持久系競技のためのHIIT

 

 

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【編集後記】

オンラインでのセミナー開催の準備をしています。新しいことを始めるときには、いろいろと準備に時間がかかって大変なものですが、最初にがんばってシステムを構築してしまえば、後々の効率化が図れると信じてコツコツとがんばります。