#833 パワー向上のパラドックス:軽い重量をできるだけ速く持ち挙げると、逆にパワー向上効果が落ちてしまう!?


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ウエイトトレーニングでは、比較的重いバーベルやダンベルをヨイショって感じで持ち挙げることが多いです。

必ずしも意図的にゆっくり挙げているわけではなく、バーベルやダンベルが重いと、結果として動作速度はゆっくりになってしまうということです。

どれだけ速く持ち挙げようとしても。

 

そのようなやり方でトレーニングをすると、筋力向上効果や筋肥大効果は期待できます。

その一方で、パワーを直接的に鍛えるのが難しいのではないか?という悩みにぶち当たることもあるでしょう。

そこで、より直接的にパワーを鍛えるために、比較的軽めのバーベルやダンベルをできるだけ速く持ち挙げる、というやり方を選択することがあるかもしれません。

重いバーベルやダンベルをヨイショとゆっくり持ち挙げるよりも、パワーが出そうなので、それらの能力をよりダイレクトに鍛えることができそうです。

 

この考え方は、理屈としては正しそうな感じがしますが、注意が必要です。

やり方次第では、逆にパワー向上効果が低下してしまうリスクがあります。

そのメカニズムを「ベンチプレス」を例に挙げて、説明していきます。

 

 

ウエイトトレーニングにおける「減速局面」

上半身の押すパワーをUPしたい。

そんな目的のために、ベンチプレスで100kgくらいは持ち挙げられるだけの筋力がある人が、あえて30-40kgくらいの軽いバーベルを使って、できるだけ速く持ち挙げる。

そんな状況を思い浮かべてみてください。

ようするに、挙上重量よりも挙上速度を強調するようなやり方でトレーニングをするというケースです。

 

80-90kgのバーベルをヨイショ〜っと低速度で持ち挙げるよりも、パワーは出そうですよね?

しかし、ここで大きな問題にぶち当たります。

より軽いバーベルを速度を強調して持ち挙げようとすると「減速局面」が大きくなってしまう恐れがあるのです。

 

まずは「減速局面」について簡単に説明しておきます。

ベンチプレスのコンセントリック局面(バーベルを胸までおろした後に持ち挙げる局面)を思い浮かべてください。

バーベルが胸にある時点では、バーベルの速度はゼロですが、その後バーベルは加速されて上向きに速度を上げていきます。

バーベルを上向きに加速するためにバーベルに力を加えているわけですが、そのためには大胸筋や上腕三頭筋等の主動筋が働いていることになります。

 

しかし、バーベルを永遠に加速し続けることはできません。

腕を伸ばしきったところでバーベルをストップさせないと、マジンガーZのロケットパンチのごとく腕がすっぽ抜けてしまったり、ワンピースのルフィーのごとく腕がゴムのように伸びてしまったりしかねないからです。

実際には、腕がすっぽ抜けたり伸びたりするわけがなく、せいぜい肘や肩といった関節にストレスがかかって靭帯等を痛めてしまうリスクが高まる程度でしょう。

でも、そんなリスクは避けたいから、意識しようがしまいが、バーベルは腕を伸ばしきったあたりで必ず止まるはずです。

 

で、上向きの速度を持っている状態のバーベルを腕が伸びたところで止めるためには、バーベルを減速させる必要があります。

つまり、腕が伸びたところでバーベルを止めるためには、コンセントリック局面の後半に、必ず「減速局面」が存在することになります。

バーベルを減速させるためには、大胸筋や上腕三頭筋等の主動筋をリラックスさせて、バーベルに下向きにかかる重力のほうがバーベルを上向きに押す力よりも大きい状態を作り出す必要があります。

また、重力の働きだけでは減速し切れない場合は、広背筋等の拮抗筋を働かせてバーベルを下方向に引くことで、よりアクティブにブレーキをかける必要があります。

 

どちらにしろ、コンセントリック局面後半の「減速局面」においては、ベンチプレスで主に鍛えられる主働筋である大胸筋や上腕三頭筋等は力をあまり発揮していないことになります。

実際には、完全にリラックスするわけではなく、コントロールしながら徐々に発揮する力を弱めていく形になると思われますが。

結果として、この「減速局面」においては、主働筋に対するトレーニング刺激は著しく弱まってしまうことになります。

 

 

 

パワー向上のパラドックス:軽い重量をできるだけ速く持ち挙げると、逆にパワー向上効果が落ちてしまう!?

ベンチプレスにおける「減速局面」の説明が終わったので、話を元に戻します。

より軽いバーベルを速度を強調して持ち挙げようとすると「減速局面」が大きくなってしまう恐れがある、というお話でした。

軽いバーベルのほうが加速させやすい(速度を上げやすい)です。

で、バーベルの速度が上がれば上がるほど、減速の必要性もまた増します。

つまり、より軽いバーベルを速度を強調して持ち挙げようとすると「減速局面」が大きくなってしまうので、トレーニング効果が逆に減ってしまうのではないか?というお話です。

 

実際に、ベンチプレス中のバーベルの速度を調べた研究(1)によると:

  • 100%1RMのバーベルを挙上中、コンセントリック局面のうち23.3%が減速局面
  • 81%1RMのバーベルを挙上中、コンセントリック局面のうち51.7%が減速局面

だったと報告されています。

つまり、バーベルの重量が100%→81%と軽くなるにつれて、「減速局面」が相対的に増えることが研究によっても確認されているのです。

しかも、比較的重い重量である81%1RMでもそんなことになっているので、これを30-40%1RMくらいにもっと軽くして、さらに速度を強調して持ち挙げようとすると、「減速局面」がもっと大きくなるだろうと推測されます。

 

パワーをより直接的に鍛えるために、比較的軽めのバーベルを速度を強調して持ち挙げようとしたら、「減速局面」が増えてしまって逆にトレーニング効果が下がってしまう・・・。

まさに、良かれと思ってやったことが裏目に出てしまうパターンです。

なんてこったい!!って感じですよね。

私はこのような状況を「(爆発的)パワー向上のパラドックス」と呼んでいます。

「パラドックス」というのは、日本語では「逆説」とも言われ、ウィキペディアによると「正しそうに見える前提と、妥当に見える推論から、受け入れがたい結論が得られる事を指す言葉である」と説明されています。

まさにこの状況を表現するのにピッタリの言葉ではありませんか!!

 

 

まとめ

今回のブログ記事では、「(爆発的)パワー向上のパラドックス」を紹介しました。

重い重量を使ってウエイトトレーニングをして筋肥大させたり筋力を向上させたうえで、より直接的にパワーを鍛えるために、軽い重量を速度を意識して持ち挙げる。

一見、理屈としては正しそうなこのやり方ですが、実は後者のトレーニング方法では「減速局面」が増えてしまってパワー向上には逆効果になりうる、というリスクについてぜひとも知っていただければ。

 

じゃあ、どうやって「(爆発的)パワー向上のパラドックス」を解決してパワー能力を高めればいいのか?

これは1つのブログ記事だけでは説明できないほど、複雑かつ広範囲の知識や考え方が必要になる課題です。

今回のブログ記事は、そのようなパラドックスの存在をとりあえず知ってもらえれば、という想いで執筆しました。

 

さらに詳しくパワー向上方法について知りたい方は、動画教材「爆発的パワー向上の科学的基礎」をご購入いただければ。

「(爆発的)パワー向上のパラドックス」の具体的な解決方法を含めて、かなり包括的な解説をしています。

動画 爆発的パワー向上の科学的基礎

 

引用文献

(1) Elliott BC, Wilson GJ, Kerr GK. A biomechanical analysis of the sticking region in the bench press. Med Sci Sports Exerc. 1989 Aug;21(4):450-62.

 

 

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【編集後記】

ジム兼自宅の建築について、土地探しが難航していましたが、ちょっと現状の予算では適切なエリアで条件に合う土地を見つけるのは難しそうだ、という結論に至りました。

非常に残念ではありますが、方針を転換して、家族が住むための自宅の建築を目指します。

トレーニング指導は引き続き、既存の施設をお借りして実施していく予定です。

ただ、最後の悪あがきとして、自分がトレーニングするためのホームジムはなんとか自宅に設けられないかどうか、その可能性は最後まで探って行きたいと思います。