ウエイトトレーニングをする時にお腹周りをどのように固めて安定させるのか、という議論があります。
主に、「ドローイン」と「ブレイシング」という2つの手法が提唱されていますが、私は後者の「ブレイシング」をアスリートに指導しています。
ウエイトトレーニング時に「ドローイン」をやらせるなんてバカバカしいし、危険だから絶対やらせるつもりはありません!
その理由については本ブログで説明済みなので、そちらを読んでみてください。
また、私のブログではなく外部のブログ記事ですが、コチラやコチラも参考になるので、合わせて読んでみてください。
そもそもウエイトトレーニング中に「ドローインしろ!」なんて言っちゃってる人は、自分でトレーニングしたことないんでしょうね。本当にバカバカしいです。
下のビデオでも見てください(特に0:23から&1:25から)。お腹を凹ませているのが見えますか?
これ以上、「ウエイトトレーニング時にはドローインよりブレイシングを使うべき」ということを説明する必要もないとは思うのですが、ダメ押しをするつもりで最新の科学的知見も紹介してみます。
論文の内容
研究の背景
脊柱の安定性を高めるには腹腔内圧を高めることが重要です。
そこで、ドローイン(この研究ではhollowingと呼んでいますが、基本的には同じことです)とブレイシングのどちらの戦略のほうが、腹腔内圧を高めるのに有効なのかを調べました。
研究プロトコル
被験者は、仰向けに寝て膝を立てた状態で、ドローインとブレイシングを最大限の努力で実施しました。
その時の腹腔内圧(IAP; intra-abdominal pressure)を、直腸に測定装置を挿入して、測定しました。
ちなみに、腹腔内圧の測定(数値の読み取り)は、息を吐き切ったところで息を止めた状態で実施されました。
さらにちなみに、この研究ではドローインとブレイシングを比較する時の指標として、安静時の腹腔内圧とドローインまたはブレイシング実施時の腹腔内圧の差(ΔIAP)の最大値(ΔIAPmax)を使用しました。
結果
ΔIAPmaxはブレイシング(116.4±15.0mmHg)のほうがドローイン(9.9±4.5mmHg)よりも有意に大きいことがわかりました(P=0.018)。
考察
やっぱりドローインなんかよりブレイシングのほうが腹腔内圧を高めるのに圧倒的に効果があるということが確かめられたということです。
まー、「スクワットやデッドリフト等のエクササイズは立位で実施されるので、仰向け状態で腹腔内圧を測定した本研究の結果をそのまま当てはめることはできない!」とか、「本研究では腹腔内圧を調べたにすぎず、脊柱の安定性を直接調べたわけではないから、この結果をもってドローインよりブレイシングのほうが脊柱を安定させる効果が高いとは言えない!」とかいうイチャモンをつけようと思えばつけられないこともないですが、私から言えばそれはイチャモンに過ぎません。
上のグラフを見てもわかるように、これだけ圧倒的な差を見せつけられてしまうと、姿勢の問題とか、腹腔内圧は必ずしも脊柱の安定性とイコールではない、とかいう事を持ちだされても、それは屁理屈としか思えないのです。
だったらドローインの方が優れているっていう科学的データを見せてほしいものです。
まとめ
まともな考え方の持ち主であれば、「重いバーベルを担いでスクワット等をする時にドローインするなんてバカバカしい!」ってことは少し想像力を働かせればすぐに分かると思います。
わざわざ科学的知見なんて持ち出すのは大人げないとも思ったのですが、そもそも私は大人げない人間なので、紹介してみました。
ウエイトトレーニング中はドローインなんてやめましょう。腰を痛めますよ!
ちなみに、医療関係者が腰痛のリハビリのためにドローインをエクササイズとして実施させる、というのであれば私は何も言うつもりはありません。
あくまでも私が反対しているのは、「リハビリエクササイズとしてのドローイン」ではなく、「ウエイトトレーニング中に脊柱の安定性を高めるためのアプローチとしてのドローイン」です。
その違いは理解しておいて下さい。
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【編集後記】
12月に実施予定のセミナーが早くも満員になりました。5時間の座学なのに・・・。定員が87名なのに・・・。