#519 「結果を出しているサッカーチームが筋トレやっているから、サッカー選手は筋トレやれ」と言うのは、メッセージとしては良いのかもしれないけど理屈としては・・・

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Adidas ball field 46798

 

 

先日、以下のようなTwitterを目にしました。

 

体幹トレーニングばかりがもてはやされて、筋トレをしている人が少ない印象の日本サッカー界のトレーニングの現状に辟易している私としては、なかなか痛快なメッセージでした。

リツイートをして、このメッセージを拡散しようかとも思いましたが、思いとどまりました。

 

 

理屈として受け入れがたい

私が引っかかったのは、「筋トレをやっているサッカーチームが結果を出しているから、サッカー選手は筋トレをやるべき」という「理屈」の部分です。

一見、理屈としてはスジが通っているようにも聞こえますが、よくよく考えてみると、受け入れがたい部分があります。

 

①「強いチームがやっている→効果がある」という論理構成がダメ

強いチーム、または結果を出しているチームがやっているから、効果があるに違いないという理屈は危険です。

たとえば、結果を出しているチームでポケモンGOが流行っていて皆がやっているとします。

じゃあ、他のチームもポケモンGOをやり始めたら勝てるようになるのかと言ったら、なりません。

結果を出しているチームやアスリートがやっていること全てが、結果に結びついているとは限らないからです。

「◯◯をやっているから結果が出ている」ということだけでなく、逆に「◯◯をやっているのにも関わらず結果が出ている」という場合もあるのです。

 

結果を出しているチームやアスリートがやっていることを分析して、そこに秘密(結果に繋がる原因)があるに違いないと検証することは良いと思います。

しかし、結果を出しているチームやアスリートがやっていること全てが結果に繋がる原因であるわけではありません。

勘違いをしないよう注意をする必要があります。

 

よく聞く議論で「相関関係は必ずしも因果関係を説明するわけではない」というものがありますが、それと似ています。

トレーナーが知っておきたい相関関係と因果関係の話 ― 隠れた因子に注意する k.nakashima.net

 

 

②同じ理屈を使うと、私が否定したいものを肯定せざるを得なくなる

「結果を出しているチームやアスリートがやっている→効果がある」という理屈を受け入れてしまうと、私が否定したいものまで肯定せざるを得なくなります。

 

たとえば、日本サッカー界では体幹トレーニングが過大に評価されて、そこだけを鍛えていれば良い、一般的な筋トレは行わないでも良いという間違った認識が広がっていると私は感じています。

体幹部分のトレーニングを否定するつもりはありませんが、そこだけ鍛えていても不十分です。

しかし、「結果を出しているチームやアスリートがやっている→効果がある」という理屈を受け入れてしまうと、体幹トレーニングのみを取り入れたチームやアスリートが活躍した場合に「サッカー選手は体幹トレーニングだけやっていればいい」という理屈も通ってしまうことになります。

あるいは、筋トレを一切やらないにもかかわらず活躍をしている選手がいたら、筋トレをやらないほうがよいという理屈が通ってしまいます。

 

つまり、「結果を出しているチームやアスリートがやっている→効果がある」という理屈を使ってしまうと、極端な話、なんでも効果があると肯定しようと思えばできてしまう可能性があるのです。

そんな破綻した理屈を使って「筋トレが重要なんだ!」と私が力説したところで、説得力はゼロでしょう。

 

 

まとめ

「長友選手は体幹トレーニングで成功したから、サッカー選手は体幹トレーニングだけやっていればいいんだ」という理屈を言う人がいたら、最初に紹介したTwitterのような現実を指摘して「その理屈によるとサッカー選手は筋トレをやるべきっていうことになりますよ?」と相手の論理の矛盾をツッコむのはアリかもしれません。

しかし、筋トレの有効性を説明する時にそのような理屈を使ってしまうのはできるだけ避けたいところです。

 

筋トレの有効性を伝えるには、「強いチームがやっているから」以外の理屈や説明が必要です。

それが説明できるのは、最近流行りの「エビデンス」ということになりますし、「エビデンス」の中でも「科学的知見」というものは客観性が高いものだと私は捉えています。

過剰に宣伝するのではなく、誠実にトレーニングの重要性を伝えていくということをコツコツと続けたいと思います。

 

 

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【編集後記】 

昨日は個別コンサルティング1件。サッカー選手でした。日本サッカー界にも適切なウエイトトレーニングの重要性が広がればいいですが、それは私の使命ではないので、私としてできることは、ウエイトトレーニングの重要性をすでに認識していて上を目指すモチベーションがあり、私のもとに来てくれるサッカー選手個人に対して、最高のサービスを提供し、得をしてもらうことだけです。まだ周りがやっていないのであれば、大きな差をつけることができます。