競技コーチやアスリートと接していると、「短期間(数週間単位)激しいトレーニングをしたら体力が急激にUPする」と勘違いしている人が多いと感じます。
でも実際にはそんなことはありません。
体力は地道にコツコツと一貫してトレーニングを続ける事で少しずつUPしていくものです。トレーニングは魔法じゃないんです。
しかし、仮に短期間で魔法のように体力UPできるとしたら、それは競技パフォーマンスにとってプラスになるのでしょうか?
短期間で体力が急激にUPしたら?
例えば、ゴルファーが朝起きたら奇跡が起きて筋力が30%UPしていたとします。
その結果、飛距離も30%UPしたとします。
その日が試合だったとしたら、競技成績はUPするでしょうか?
個人的にはそうは思いません。
今までは8割程度の力でのショットでグリーンオンしていたのが、同じ感覚で打つとグリーンオーバーしてしまいます。
つまり、筋力と飛距離が伸びた事を考慮に入れて、力の入れ加減を調節しないといけないのです。
いきなり30%も飛距離が伸びてしまうと、この調節をするのにしばらく時間がかかるので、その日は調節がしきれずに競技成績は下がってしまう可能性が高いと思います。
一般的に考えて、ゴルファーの飛距離が伸びるのは競技成績にとってもプラスのはずです。
しかし、いきなり飛距離が伸びてしまうと逆効果になりうるリスクがあるという事です。
つまり、体力UPが競技パフォーマンスUPに直接結びつくのではなくて、体力UPは競技成績の「ポテンシャル」をUPさせるに過ぎないという考え方です。
この「ポテンシャル」UPを実際の競技パフォーマンスUPにつなげるためには、いわゆる「調節」が必要になります。
私はこの調節を「トレーニング効果の転移」という概念で捉えています。
こちらの話は以前にしているので、そちらを読んでみて下さい。
» 参考: 【論文レビュー】トレーニングによる筋力UPは、やり方によっては競技力UPにも競技力DOWNにもつながりますよって事をコンピューターシミュレーション研究の結果をもとに考えてみる
まとめ
「そもそも短期間での急激な体力UPは難しいけど、仮にできるとしてもすぐに競技パフォーマンスUPには結びつかず、場合によっては競技成績が下がる事も考えられる」というのが今回私が主張したい事です。
それだけでなく、短期間での体力UPを狙って激しいトレーニングをすることには他にも弊害があります。
例えば、競技練習に割ける時間が減るとか、疲労が蓄積してしまうとか。
地道に一貫してトレーニングを継続する事により徐々に体力UPをはかり、それと並行して競技練習も地道に続けることでトレーニング効果の転移を実現し、中・長期的にパフォーマンスを向上させていくという姿勢が目指すべきところだと思うのですが、いかがでしょうか?
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