#828 臨時コーチっていうのは技術向上とかには急性の効果があるかもしれないけど、体力向上には地道なトレーニングが大切

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プロ野球のキャンプにおいて、臨時コーチが呼ばれるケースがあります。

今年はとくに日本ハムの新庄監督が、積極的に外部の人を臨時コーチとして招いている様子が、メディアを通じて伝わってきました。

試みとしては面白いし、選手からするといろいろ勉強になることも多いのでしょう。

 

しかし、こと体力向上のためのトレーニングに限って言うと、臨時コーチが1日来て教えてくれたからと言って、それほど大きな効果が現れるとは思えません。

今日はそのあたりのお話を、トレーニングを指導するS&Cコーチの立場から解説してみます。

 

 

臨時コーチっていうのは技術向上とかには急性の効果があるかもしれないけど、体力向上には地道なトレーニングが大切

「技術」という観点でいうと、臨時コーチに教えてもらったことがキッカケで、身体の動かし方や考え方のヒントを得て、即時的に技術向上に繋がることはありえるでしょう。

とくにその臨時コーチが有能であればあるほど、その可能性は高まります。

 

技術を定着させるには繰り返し練習することが重要です。

しかし、技術を改善するためには、ただ同じことを繰り返すだけではダメです。

正しい方向性で努力を積み重ねる必要があります。

この「正しい方向性」を見つけるためには、臨時コーチの指導が役に立つ可能性は大いにあるでしょう。

つまり、臨時コーチの指導がキッカケで「正しい方向性」を見つけて、急激に技術が改善されてパフォーマンス向上に繋がることはありうる、ということです。

 

その一方で、トレーニングについては、地道に継続して実施することが大切です。

臨時コーチに指導してもらったら、即座に体力がUPするなんてことはありえません。

ちょっと教えてもらったらスクワットの挙上重量が一気にUPする、みたいなことは起こりえますが、それはスクワットという動作における技術(身体の使い方)が改善されたからであって、筋力そのものが一気にUPしたわけではありません。

「体力の向上速度はゆっくりである」というのは、フィットネスー疲労理論を知っていれば容易に理解できるはずです。

 

臨時コーチがいなくなったあとも、キャンプの残り期間やシーズン中もその臨時コーチのやり方に従ってトレーニングを継続する、ということであれば、まあアリなのかもしれません。

しかし、プロ野球選手の場合、普段は球団のS&Cスタッフや個人で契約している外部の専門家が作ったプログラムに従ってトレーニングをしているでしょうから、臨時コーチの影響力はあまりないでしょう。

むしろ、普段やっているのとは全然違うことを臨時コーチから教えられてしまうと、普段選手を指導している立場の方からするといい迷惑になってしまうこともありえます。

 

もしかしたら、臨時コーチのほうが有能で、臨時コーチが教えるトレーニングのやり方のほうが普段指導を受けている人のやり方よりも優れているかもしれません。

それでも、臨時コーチから指導を受けるのが一時的なものであり、その後は普段教えてもらっている人のやり方に戻ってトレーニングをするのであれば、選手は後者のやり方を信じて地道にトレーニングを継続するしかありません。

臨時コーチのせいで、普段指導してもらっているやり方に変な不信感をおぼえてしまい、いまいちトレーニングに全力投球できなくなってしまう、というのが最悪なパターンです。

せっかく効果の出るトレーニングであっても、それを信じ切ることができずに積極的にやってもらえないと、効果が出ないこともあるからです。

 

 

トレーニングについて臨時コーチが「アリ」なパターン

とはいえ、トレーニングについて臨時コーチが「アリ」なパターンも存在します:

  • パターン①:普段、専門家からのトレーニング指導を受けていない場合
  • パターン②:普段トレーニング指導を受けている専門家の判断で臨時コーチを呼ぶ場合

 

パターン①:普段、専門家からのトレーニング指導を受けていない場合

プロ野球選手の場合は、普段から専門家からのトレーニング指導を受けているはずです。

それが球団スタッフであれ、個人で契約している外部の専門家であれ。

 

一方、多くのアスリートはそんな恵まれた状況にはなく、専門家からのトレーニング指導を受けていないケースのほうが多いかもしれません。

そういうアスリートは、独学でトレーニングをやっていたり、あるいはトレーニングをそもそも一切やっていなかったりするはずです。

 

そのような状況において、臨時コーチに来てもらって、基礎的なトレーニングを指導してもらい、その後は教えてもらったやり方に従って自分でトレーニングを継続していく、ということであれば、全然「アリ」です。

トレーニングのやり方に整合性というか継続性というか一貫性があるので、うまくいく可能性は高いでしょう。

独学でトレーニングをやったり、トレーニングを全然しないよりも、はるかにマシです。

もちろん、有能な専門家を選んで指導してもらう、というのが前提でのお話ですが。

 

 

パターン②:普段トレーニング指導を受けている専門家の判断で臨時コーチを呼ぶ場合

プロ野球の場合であっても、普段選手のトレーニング指導をしている球団スタッフ等が、「トレーニング全体の中のここの部分の専門性が自分たちには欠けているから、外部から専門家を呼んで教えてもらおう」という形で臨時コーチを招くのであれば「アリ」です。

普段やっているトレーニングの整合性・継続性・一貫性を保ちつつ、足りない部分を補完する形になるので、うまくいく可能性は高いでしょう。

選手だけでなく、普段選手のトレーニング指導をしている球団スタッフ等も勉強になるはずで、そこで学んだことを普段のトレーニングの中に上手に取り入れることができれば、必ずプラスになるはずです。

 

 

まとめ

体力向上のためのトレーニングという観点でいうと、臨時コーチが貢献できることは限られているのではないか、という持論を解説しました。

もし、私がプロ野球チームから臨時コーチを頼まれても、多分お断りします。

引き受けたほうが箔はつくかもしれませんが、1日くらい指導しても意味ないし、球団スタッフの方に逆に迷惑になってしまうかもしれないからです。

まあ、そもそも私なんかが頼まれることはないでしょうが。

 

結局何が言いたかったのかというと、トレーニングは地道に継続することが大切である、ということです。

これに尽きます。

トレーニングは魔法じゃないんです。

 

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【編集後記】

1歳の息子に頭突きをされて鼻血がでました。