先日、Twitterで絡まれまして、先方の主張の誤りを指摘したところ、「あの有名トレーナーも私と同じことを言っています」みたいな反論をされました。
私からすれば、そんなの全く反論になっていないし、そんな主張をする人とは議論できないな、と思うのですが。
ただ、これはその方が特別珍しいわけでなく、「有名な人がそう言っているから正しいんだ」というロジックとも言えない屁理屈をもって、自分の意見の正当性を主張される方は一定数存在します。
「虎の威を借る狐」という故事ことわざがあるくらいですから、そういう人は古今東西を問わず存在するのでしょう。
今日は私なりに、「あの有名トレーナーが言ってるから、このトレーニングは正しいんだ!」みたいな主張がなぜダメなのかを解説してみようと思います。
※ちなみに、Twitterで絡んできた方が「トレーナー」という言葉を使っていたので、その言葉をそのまま使っています。
「あの有名トレーナーが言ってるから、このトレーニングは正しいんだ!」という主張がダメな理由
- 理由①:有名なトレーナーが優秀なトレーナーとは限らない
- 理由②:たとえ優秀なトレーナーであっても、すべて正しいわけじゃない
- 理由③:「なぜそのトレーナーはそう言っているのか」を考えることを放棄している
理由①:有名なトレーナーが優秀なトレーナーとは限らない
これは、言葉どおりです。
有名だけど平凡もしくは無能なトレーナーさんは山ほどいます。
逆に、無名だけど優秀なトレーナーさんも山ほどいます。
したがって「有名なトレーナーが言っているから」というのは、なんの保証にもなりません。
また、私にTwitterで絡んできたお相手は、「五輪メダリストを指導されていたトレーナーがそう言っていました」という主張をされていましたが、これも基本的には同じことです。
実績のあるアスリートやチームを指導しているトレーナーが優秀とは限りません。
五輪メダリストを指導していた実績があったとしても、それはそのアスリートが優秀だっただけであって、指導しているトレーナーの能力とは無関係です。
なんだったら、私は五輪金メダリストのトレーニング指導をしているので、先方の理屈を当てはめると私の主張が正しいということになり、矛盾が生じてしまいます。
理由②:たとえ優秀なトレーナーであっても、すべて正しいわけじゃない
百歩譲って、実際に誰もが認める優秀なトレーナーの方がいたとします。
それでも、その人が「このトレーニングが良い」と言っていたからといって、それだけでそのトレーニングが良いはずだと決めつけるのは危険です。
世の中には完璧な人間なんていないので、どれほど優秀なトレーナーであっても、間違うことはあります。
もちろん、平凡もしくは無能なトレーナーと比べれば、優秀なトレーナーが言っていることが正しい確率が高いのは間違いありません。
それでもやはり、すべて正しいわけではありません。
理由③:「なぜそのトレーナーはそう言っているのか」を考えることを放棄している
「あの有名な〇〇トレーナーが言っているんだから、間違いない」と主張している人は、物事の正否の決定を他人に委ねてしまっています。
つまり、自分の頭で考えることを放棄しているのです。
完全なる思考停止です。
自分の頭で考えることを放棄している人と、議論なんてできません。
ましてや、自分の頭で考えることを放棄している人が、専門家として優秀であるわけがありません。
仮に、有名な〇〇トレーナーの主張を聞いて、それを自分の頭でしっかりと考えた上で、「なるほど〇〇さんは、△△という理由でそのような主張をしているのか、それは筋が通っているな!」と納得したうえで自分の中に取り入れるのであれば、それはOKだと思います。
そして、情報源を明確にするために〇〇トレーナーの名前を引用するのも問題ありません。
たとえば、「これに関しては△△という理由で、このトレーニングが適切だと思います。私がそう考えるようになったのは、〇〇トレーナーの本を読んだことがキッカケです」みたいな感じの主張であれば、まったくノープロブレムです。
ここで重要なのは「誰が(WHO)」言ったかではなく、「なぜ(WHY)」そういう主張をしているのか、を理解することです。
「〇〇トレーナーがそう言っていたから」なんて、なんの理由にもなりません。
「△△という理由でこのトレーニングが正しいと〇〇トレーナーが言っていたから」という説明の仕方であれば、その△△さえ適切であれば、問題はありません。
まとめ
「あの有名トレーナーが言っているから」と口にしたりしていませんか?
あるいは、「あの有名トレーナーが言っているから、正しいに違いない」と、自分の頭でよく考えずに、特定のトレーニング方法等を取り入れたりしていませんか?
誰が言っているか、なんてものは本質じゃありません。なんでそう言っているか、の部分こそが本質です。
ぜひとも思考停止に陥らずに、自分の頭で考えて、納得できることだけを取り入れるようにしてください。
最後に、私の新刊「競技力向上のためのウエイトトレーニングの考え方」のあとがきから、今日のブログ記事と関連する部分を抜粋して紹介しておきます:
本書で説明した「考え方」を知っておくことも大切ですが、それ以上に大切なのは、自分の頭を使って考える癖をつけていただくことです。ぜひ、何事も疑ってかかり、「なぜ、そうなのだろう?」と常に考えることを習慣にしてみてください。教科書に載っていようが、有名な大学教授がいっていようが、実績のあるアスリートがやっていようが、関係ありません。本書に書かれている内容でさえも鵜呑みにせず、ご自身の頭でよく考えたうえで、納得できる部分だけを取り入れてください。もし、納得できない部分があったら、なぜ納得できないのか、どこが間違っているのか、あなただったらどう考えるのか、をトコトン突き詰めて自問自答してみてください。
本書をお読みいただき、1つだけ身につけていただきたいものがあるとしたら、それは「常に自分の頭で考え続ける習慣」です。
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【編集後記】
使っているワイヤレスイヤホンがだいぶボロボロになってきたので買い替えを考えています。
AppleのEarPodsの評判があまりにも良いので気になっていますが、もともとBoseのイヤホンを使っていて気に入っていることもあり、10月に発売予定のBoseのEarbudsという製品も気になります。
後者のレビューが少し出てくるのを待って、決めようかな〜と考え中。