ウォームアップセットとは?
ウエイトトレーニングで各エクササイズを実施する時には、まずは複数のウォームアップセットを実施して徐々に重量を増やしていき、最終的にメインセットで扱う予定の重量に到達してから、指定されたセット数xレップ数を実施するのが一般的でしょう。
たとえば、スクワットを100KGで3セット×5レップやる場合のウォームアップセットの組み立て例は以下のようなものです:
- 60KG x 8レップ
- 80KG x 5レップ
- 90KG x 3レップ
- 100KG x 5レップ(メイン1セット目)
- 100KG x 5レップ(メイン2セット目)
- 100KG x 5レップ(メイン3セット目)
特に、スクワットやデッドリフトのように比較的高重量を扱えるメイン種目の前は、ウォームアップセットを複数実施する方が多いでしょう。
昔は私もそのようにやっていましたし、特にウォームアップセットの最初はバーだけで1セット×10レップをやっていたものです。
#43 バーベルエクササイズのウォームアップについて補足説明
ウォームアップセットを省くようになった理由
しかし、 GS Performanceでの「朝飯前セミナー」を受講して、ウォームアップセットはほとんど実施しなくなりました。
スクワットのメインセットの前に1セットやるくらいです。
これは自分の身体で実際に経験してみて、「意外とウォームアップセット無しでもできるな〜」と実感したから起こった変化です。
また、そのような経験をした結果、私がトレーニング指導をしているアスリートのプログラムからもウォームアップセットをほとんど取り除きました。
アスリートを指導している立場から考えると、ウォームアップセットを省くことの大きなメリットは、トレーニングセッション全体の時間を短縮できることです。
アスリートはトレーニングだけやっていれば良いわけではなく、競技練習がメインです。
時には、ウエイトトレーニングを実施した後に、練習をやらないといけない場合もあります。
そういう場合には、ウエイトトレーニング時間をダラダラと長引かせるわけにはいきません。
また、ウォームアップセットをしっかりとやり込むあまりに、ウエイトトレーニングに3時間も4時間もかかってしまうようでは、選手・コーチからの印象が悪くなり、結果として継続して定期的にウエイトトレーニングを実施してくれなくなる恐れがあります。
その代わりに、90分程度でサクサクっとウエイトトレーニングを終わらせることができれば、選手への負担も少なく、練習スケジュールや練習の質への悪影響も最小限に留められるので、結果としてアスリートも継続してウエイトトレーニングに取り組んでくれる可能性が高まるでしょう。
ウォームアップセットを省くための条件
自分自身で体感してみて「意外とウォームアップセット無しでもできるな〜」と思ったわけですが、深く考えてみると、なんでもかんでもウォームアップセットを省いていいわけではないということにも気づきました。
では、どのような条件が満たされればウォームアップセットを省いても良いのでしょうか?
ここでは2つの条件を挙げてみます:
①徹底的に健康的なフォームでウエイトトレーニングを実施している
GS Performanceの「朝飯前セミナー」を受講する前にウォームアップセットをしっかり実施していた頃は、バーだけでウォームアップをしていても各関節がポキポキいったり痛みがあったり固かったり・・・という状態でした。
ウォームアップセットを重ねるうちに身体が暖まってきて、痛みや固さも取れてきて、ようやくメインセットで扱うような重量を挙げる準備が整うといった感じでした。
その当時に、ウォームアップセットなしでいきなりメインセットをやっても、痛みや固さでちゃんとできなかったと思います。
しかし、「朝飯前セミナー」で徹底的に健康的なフォームを叩き込まれてからは、そもそもウエイトトレーニング中の関節の痛さやポキポキ音がなくなり、まさに「健康的に」トレーニングを継続できています。
今考えてみると、この「徹底的に健康的なフォーム」でウエイトトレーニングを実施するという前提があって初めて、ウォームアップセットを省くことができるのだと感じています。
逆に言うと、ウエイトトレーニング中に日常的に関節の痛みや固さ等がある場合は、ウォームアップセットを省くことはオススメできません。
②その前に実施しているエクササイズがウォームアップになっている
たとえば、私が作るウエイトトレーニングプログラムでは、いきなりスクワットやデッドリフトをやることはありません。
その前に、プライオメトリクスやウエイトリフティング等の爆発的パワー種目をやることが多いです。
また、さらにその前に(セッションの最初に)ウォームアップを兼ねて、オーバーヘッドスクワットやオーバーヘッドリバースランジ等を実施することも多いです。
つまり、スクワットやデッドリフトだけに注目してみるとウォームアップなしでいきなりメインセットを実施しているように見えるかもしれませんが、実際にはその前に実施するエクササイズがスクワットやデッドリフトのウォームアップ代わりになっているのです。
我々S&Cコーチは、プログラムを作る時に、エクササイズの順番をしっかりと考慮し、前に実施するエクササイズが後に実施するエクササイズに与える影響についても理解した上でセッション構成を組み立てています。
したがって、スクワットやデッドリフトのようなメイン種目の前に実施するエクササイズによって、十分ウォームアップが完了しているという条件があって初めて、メイン種目のウォームアップセットを省くことが可能となるのです。
逆に言うと、スクワットやデッドリフトがセッションの最初の種目である場合は、ウォームアップセットは省かずに実施したほうが良いかもしれないということです。
まとめ
アスリートの競技力向上のためにウエイトトレーニングを指導するのであれば、トレーニング時間の短縮というメリットを目指して、ウォームアップセットを省くようトライしてみてはいかがでしょうか?
そして、その前提として、徹底的に健康的なフォームをアスリートに指導し、また、その前に実施しているエクササイズがウォームアップ代わりになるようにセッション構成を考えてみてください。
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【編集後記】
先週末は「話す仕事」セミナーを受講しました。
私が提供しているセミナーや個別コンサルティングという事業を、さらに良いものに発展させていくヒントをたくさんいただきました。
あとは実践あるのみ!