練習前や試合前のウォームアップで何をやるか、なぜやるか、みなさんは深く考えていますか?
昔ながらのウォームアップのイメージは、少しジョギングして、ストレッチをして、競技特有のドリルをやって終わり、というのが一般的なものでしょう。
私が学生時代に部活でバスケをしていた時も、そんなもんでした。
しかし、スポーツ科学の研究が進んだ今、「ウォームアップにとりあえずストレッチやろう」というのは時代遅れです。
絶対にやっちゃダメとまでは言いませんが、相当の理由がない限りは、ウォームアップでストレッチをやらないほうがいいです。
ウォームアップにストレッチをやらないほうがいい理由
一言で「ストレッチ」と言ってもさまざまなタイプがありますが、今日お話するのは「ストレッチ」と聞いて、多くの方が想像するであろう「静的ストレッチ」のことです。
筋肉を伸ばした姿勢を数十秒間キープするタイプのストレッチです。
多くのアスリートがいまだにウォームアップでストレッチをやっている理由は、ウォームアップでストレッチをやったほうが:
- ケガを予防できる
- パフォーマンスが向上する
という考えがあるからでしょう。
残念ながら、私がウォームアップでストレッチをやらないほうがいいと主張する理由は、これらの効果が期待できないからなんです。
①ウォームアップでストレッチしてもケガを予防できない
まず、練習・試合前にストレッチをやってもケガの予防効果はないとする研究結果が複数存在します。
それらの過去の研究結果をまとめて分析し直したメタ分析という手法によっても、ストレッチによるケガ予防効果はほぼ期待できないと報告されています。
» 参考:【論文レビュー】筋力トレーニング、ストレッチ、固有受容器トレーニングはケガを予防できるか?
したがって、現在手に入る科学的知見から考えると、ウォームアップでストレッチをしてもケガを予防する効果はほぼゼロであろうと結論づけることができます。
②ウォームアップでストレッチをするとパフォーマンスが低下する
一方、ストレッチによるパフォーマンス向上効果については、むしろウォームアップでストレッチをするとパフォーマンスが低下すると報告する研究が多数存在します。
この点については、過去にブログを書いているので、詳しくはそちらをご覧ください。
» 参考:【論文レビュー】運動前のスタティックストレッチングはパフォーマンスを低下させる?
ストレッチによるパフォーマンス低下の程度は小さいものですが(数%程度)、その小さな差が勝ち負けを分ける可能性を考慮すると、ウォームアップでストレッチをすることを安易にオススメすることはできません。
まとめ
ウォームアップでストレッチをすることの効果として一般的に考えられている「ケガ予防」と「パフォーマンス向上」の2点について、実際のところはどちらも期待できない、むしろ後者に関しては逆効果である、という科学的知見が存在します。
ここ10~20年の研究の成果です。
したがって「ウォームアップにとりあえずストレッチやろう」という考えは時代遅れです。
そうした根拠のない古い考え方はとりあえず捨ててしまいましょう。
そのうえで、そもそもなぜウォームアップをやるのかという目的を考え直して、その目的を達成するために適切な方法についてイチから作り上げていただければと思います。
冒頭にも述べましたが、ウォームアップにストレッチをやったら絶対にダメというわけではありません。
それ相当の理由があり、ストレッチをやることによるメリットのほうがデメリットを上回ると確信できるのであればやればいいでしょう。
たとえば、新体操とかフィギュアスケートのような競技においては、ストレッチをすることによる可動域向上というメリットが大きいと考えられるので、むしろやったほうがいいかもしれません。
しかし、そのような確固たる理由もなしに、なんとなく昔からやっているから程度の考えなのであれば、やらないほうが絶対に良いです。
動画 科学的知見に基づく試合/練習前ウォームアップ戦略
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【編集後記】
スターウォーズ/最後のジェダイを鑑賞しました。
これまでのスターウォーズ映画とは雰囲気がだいぶ異なる印象を受けました。
良いのか悪いのか、自分の中ではまだ判断がつきません。
たぶん、もう一回観に行くな・・・。