#476 スポーツ科学の研究がトレーニング効果の判定に役に立つ理由のひとつ

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Kristian egelund 113903

 

昨夜、テレビ東京で「ガイアの夜明け」を観ました。

マラソンや駅伝等の長距離ランナー向けのシューズに関する特集でした。

個人的にスポーツメーカーに関する特集は好きなので(「ガイアの夜明け」で定期的に取り上げられる)、楽しく視聴させていただきました。

その中で、S&Cコーチとして、そしてスポーツ科学者の端くれとして、少し気になった点があったので、取り上げてみます。

 

 

トレーニング効果の判断は慎重に・・・

番組の中で「足袋シューズ」なるものが登場しました。

足袋メーカーが作った、底が薄いシューズということです。

つま先が足袋のように分かれていました。

ちょうど今、TBSで「陸王」というドラマをやっているので、その流行にテレ東がかぶせてきやがったな、と思って観ていました。

 

足袋シューズを高校生ランナーに履いてもらって練習をしてもらうと、半年後には5000mのタイムが40秒近く短縮したということです。

番組のストーリーとしては、足袋シューズを履いて練習すると効果がある、という締め方をしたかったのでしょう。

ああいうドキュメンタリー番組って、無理やり起承転結を作りたがりますもんね。

 

べつに足袋シューズそのものにイチャモンをつけるつもりは全くありません。

しかし、高校生に足袋シューズを履かせて練習してもらって、半年たったらタイムが良くなっていたから、足袋シューズを履いて練習すると効果がありますよ〜と結論付けるのは、ダメです。アウトです。

育ち盛りの高校生ランナーなんて、どんなシューズを履こうが、ケガをせずに真面目に練習していればタイムなんて短縮するはずなんですから。

したがって、足袋シューズを履いて練習して半年たったらタイムが速くなったからといって、それだけでは足袋シューズの効果の有無を判定することなんてできないのです。

 

スポーツ科学の研究について、多少の知識がある人であれば、すぐに見抜けると思います。

もし足袋シューズの効果を調べたいのであれば、一般的なランニングシューズを履いて練習するグループと足袋シューズを履いて練習するグループを作って、たとえば半年間練習してもらって、その前後で5000mのタイムを測定し、タイムの短縮率が足袋シューズのほうが大きかったら、それで初めて足袋シューズは効果があると言えるんです。

たとえば、足袋シューズを履いて練習したグループが半年でタイムを40秒縮めたとしても、一般的なランニングシューズを履いて練習したグループも40秒タイムを縮めていたら、足袋シューズを履いて練習すると脚が速くなるなんて言えません。

#809 条件を揃えて比べる癖をつけよう

 

同じことは、シューズの効果だけでなく、各種トレーニング方法にも当てはまります。

たとえば、サッカーの長友選手が体幹トレをやって、セリエAの強豪インテルでプレーできるような偉大なサッカー選手になったからといって、体幹トレの優位性の証明にはならないのです。

長友選手が他のトレーニングをやっていたら、もっとすごいサッカー選手になっていたかもしれないのですから。

しかし、タイムマシンでも存在しないかぎりは、同じアスリートに同じ条件で、異なるトレーニングを実施してもらって、どちらのほうが効果が高いかを比べることなんてできません。

 

だから、スポーツ科学の研究が役に立つのです。

たとえば、被験者をいくつかのグループに分けて、特定のトレーニングをやるグループとやらないグループに分けて、一定の期間の前後で測定をして、その変化率を比べることで、特定のトレーニングが効果があるかどうかを検証することができます。

ここで比較するのは、あくまでもグループの平均値ですし、その研究の被験者にとって効果があったからといって、他の人にとっても効果があるとは限りません。個人差があるので。

しかし、少なくとも、一般的にはそのトレーニングが効果があるのかどうかの目安にはなります。

自分ひとりで、特定のトレーニングを一定期間やって、パフォーマンスが上がった下がったで、そのトレーニングの効果を判定するよりは、はるかに精度が高いはずです。

 

 

まとめ

繰り返しになりますが、足袋シューズについてイチャモンをつけているわけではありません。

一定の期間、特定のやり方で練習やトレーニングをして、その前後でなんらかの測定をした時に、パフォーマンスや体力がUPしていたからといって、そのやり方が効果があるとは限りませんよ、と主張したいだけです。

極端な話、高校生アスリートみたいに、ケガをせずに真面目に練習しておけば、放っておいてもパフォーマンスが伸びるような人たちに特定のトレーニングをやらせて、「ほら、このトレーニングをやるとこんなにパフォーマンスUPしますよ!」なんて詐欺まがいのことをやろうと思えばやれてしまうんです。

実際、色々な宣伝を見ていると、それに近いものが多いんですけど・・・。

したがって、そのような詐欺まがいの行為に騙されないようにするためにも、そして、本当に効果のあるトレーニング方法等を選択するためにも、ある程度、スポーツ科学の知識があるに越したことはないです。以上。

動画 論文の読み方

 

 

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【編集後記】

昨日は「ひとりしごと出版セミナー」を受講しました。

その後、小籠包を堪能。

安定して美味しいです。