#81 【再考】トレーニングにおける特異性の原則

公開日: : 最終更新日:2016/11/21 S&Cコーチとしての思考, 競技特異性


 

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前回のブログで、「疲労した状態でスピードやパワーを発揮する能力」を鍛えるために、疲労した状態でトレーニングをする必要はないという趣旨の発言をしました。

また、別のトピックになりますが、以前のブログで、垂直跳び能力を向上させるためにはクウォータースクワット(膝角度120°)よりもフルスクワット(パラレル以下)のほうが効果がある(前者のほうが実際のジャンプにおける可動域に似ているのに)という論文を紹介しました。

この両者の議論に共通するのは、実際の競技における状態や動きをトレーニング中にそのままコピーしようとしても、ベストなトレーニング効果は見込めないよという事です。

これは一見すると、「トレーニングにおける特異性の原則」に反しているようで受け入れがたい事実と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。今日はこの辺りのお話をしたいと思います。

 

 

競技そのものをコピーする必要はない

競技を分析して、競技におけるfitness demandを抽出して、適切な体力要素をトレーニングするというアプローチは重要です。

しかし、競技を見てそれをそのままトレーニング中にコピーする(エクササイズ選択とか可動域とかレップ数とか運動継続時間とか)というアプローチは賛成しかねます。実際に、このアプローチが必ずしも効果的ではない事が研究等でも証明されています。

そもそも、そういったアプローチを突き詰めていくと、究極的に特異的なトレーニングは競技そのものという事になってしまいます。

しかし、競技そのものをやるのは「練習」であって「トレーニング」ではありません。トレーニングにおいては、競技に必要な体力要素を効果的かつ効率的に向上するエクササイズやトレーニング方法を選択して実施する事が重要です。

目的を達成するために選択したエクササイズやトレーニング方法が実際の競技に似ているか似ていないかは関係ありません。結果として、選択したエクササイズが「似ている」のであれば問題ありませんが、「似ている」事がエクササイズやトレーニング方法を選択する理由になっているのであれば、考えなおしたほうがいいでしょう。

 

 

「トレーニングにおける特異性の原則」を再考する

競技をトレーニングでそのままコピーしようとしている人は、「トレーニングにおける特異性の原則」を間違って認識しているのではないかと思います。要するに、競技に近い状態でトレーニングをする、つまり「特異的なトレーニング」を実施する事によってtransfer of training effectが促進されてパフォーマンス向上に直結すると考えているとか(しかし、いわゆる「特異的なトレーニング」が必ずしもtransfer of training effectを最大限にするわけではないという事は過去のブログで説明済みです)。

こういった考え方においては「特異的な」という形容詞は「トレーニング」という名詞にかかる事になります。これは私の意見では間違いです。

私が考える「トレーニングにおける特異性の原則」という概念を一番的確に表現しているのは「SAIDの原則」という言葉です。スポーツ生理学の教科書によく載っているアレです。

SAIDとはSpecific Adaptation to Imposed Demandsの頭文字をとった略です。この言葉において「Specific(=特異的な)」という形容詞は「Adaptation(=適応)」という名詞にかかっています。これこそまさに私が考える「トレーニングにおける特異性の原則」という概念です。

形容詞がどうとか名詞がどうとか言うとわかりづらいかもしれないので、改めて何を言いたいのかをまとめます。

要するに、「トレーニングにおける特異性の原則」は競技をトレーニングでそのままコピーする事、つまり特異的なトレーニングをする事についての原則を表しているのではなくて、競技に重要な体力要素をまずはニーズ分析で特定して、その体力要素を向上させるために特異的な生理学的適応を引き起こすために適切なトレーニング刺激を選択して与えるという事を表しているのだという事です。

 

 

まとめ

「特異的な」という形容詞が「トレーニング」という名詞にかかっているのか「適応」という名詞にかかっているのかという認識の違い。この表現というか考え方は秀逸だと個人的には思うのですが・・・(自画自賛!!)。ちょっと皆さんも考えてみて下さい。 

 

 

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  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

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