#228 「スーパーセット」について

公開日: : 最終更新日:2015/08/17 プログラムデザイン


 

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先日のセミナー「S&Cのプログラムデザイン」の第二部で少し触れた「スーパーセット」なるコンセプトを今日のブログのテーマとします。

 

スーパーセットとは何か?

通常、レジスタンスエクササイズを実施する場合、1つのエクササイズの全セットを完了してから次のエクササイズに移ります。例えば、(オーバーヘッド)プレスを3セット完了してから、懸垂を3セット実施するとか。

一方、スーパーセットでは2つ以上のエクササイズを組み合わせて、1セット毎にエクササイズを交互に実施する形になります。例えば、プレス1セット目→懸垂1セット目→プレス2セット目→懸垂2セット目→・・・といった感じです。1番ベーシックなスーパーセットの形は2つのエクササイズを交互に実施するものですが、3つ以上のエクササイズを組み合わせることも可能です。この場合、「サーキット形式」という言葉とほぼ同じ意味になるかもしれません。

また、プログラム上で複数のエクササイズをスーパーセットとして実施することを指定する1つの方法として、(1A)プレス(1B)懸垂、といった感じに数字とアルファベットを組み合わせてエクササイズの実施順序を表現するやり方があります。

 

スーパーセットを使う理由

スーパーセットを採用する1番の理由は「時間効率の良さ」です。普通のセットの組み方よりも、短時間で同じトレーニング量をこなすことができます。

例えば、下の表を見てください。プレスと懸垂という2つのエクササイズを3セットずつ実施する場合、普通のセットの組み方だと完了するのに13分間かかるところを、スーパーセットを活用することで8分間に短縮することができます。全く同じトレーニング量を、より短時間で実施できるのであれば、スーパーセットを活用したほうがお得なのは明らかです。

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しかし、ここで気になるのが、普通のセットだとセット間レストが120秒なのに、スーパーセットでは60秒になっている点です。「そりゃ、レスト時間を短くすればトータルの時間も短くなるでしょ〜!そしてレスト時間を短くしたら同じトレーニング量こなせないでしょ〜!」とツッコみたい読者もいるかもしれません。

しかし、上の図のスーパーセットにおいて同じエクササイズ(例えばプレス)の1セット目と2セット目の間の時間を見て下さい。赤字で示されている通り150秒です。これは普通のセットにおけるプレスの1セット目と2セット目の間の時間(120秒)よりも長くなっています。つまり、懸垂の1セット目を実施している間はプレスで使う筋群を休ませておけるので、結果としてスーパーセットを使ってもトレーニングのパフォーマンスが低下するリスクは非常に小さいのです。

実際に、主働筋&拮抗筋のペアでスーパーセットを組んだ場合の中期(8週間)トレーニング効果は、普通のセットの組み方と比べて違いがないと報告している研究もあります(文献1)。

 

スーパーセットの組み方:注意点

スーパーセットを組む時の基本原則は「組み合わせることで挙上重量・レップ数が著しく損なわれるようなペア・グループは避ける」ということです。この原則に則っていれば、「トレーニング効果は同じで時間効率は良い」というスーパーセットの利点を享受できますが、この原則を外してしまうとパフォーマンスが低下してトレーニング効果が下がるリスクがあります。何でもかんでも組み合わせればイイというもんではないのです。

例えば、同じ筋群を使うようなエクササイズのペアは避けるべきです。懸垂とベントオーバーロウをスーパーセットにするなんてもってのほかです。どちらも同じ筋群(例:広背筋)をターゲットにしているので挙上重量やレップ数が著しく低下してしまい、時間効率の良さというプラス面よりもマイナス面のほうがはるかに大きくなってしまいます。

また、一見、別の筋群をターゲットにしているように思えるエクササイズのペアであっても、実は同じ筋群を重複して使うためスーパーセットに適さないという場合もあります。例えばルーマニアンデッドリフト(RDL)と懸垂の組み合わせ。前者は下半身、後者は上半身をターゲットにしたエクササイズなのでお互いにマイナスの影響はないように見えますが、実際にはRDLにおいても上半身、特に広背筋をガッツリと使っているのです(バーが身体から離れないようにするため広背筋を使ってバーを手前に引いている)。したがって、懸垂で広背筋が疲労した状態でRDLを実施するとフォームが崩れるため、挙上重量あるいはレップ数が低下してしまい、トレーニング刺激の質が悪くなってしまいます。

したがって、スーパーセットの組み合わせを選ぶには細心の注意を払う必要があります。手っ取り早くスーパーセットの組み合わせが適切かどうかを見極める方法は、実際に自分でやってみることです。RDLと懸垂をスーパーセットでやってみれば、RDLの時に広背筋がキツいな〜と思うはずです。あるいはいつもより挙上重量やレップ数が下がるはずです。

もう1つ避けるべきペアは握力を要するエクササイズです。上に例で挙げたRDLと懸垂は、広背筋だけでなく握力も重複して必要となるため、そういった点でも不適切なペアだと言えます。

また、いわゆる「メインエクササイズ」と呼ばれるような高重量・多関節エクササイズ(例:スクワット、デッドリフト、ベンチプレス、クイックリフト)はそもそもスーパーセットに向いていません。多くの筋群が動員されるため、使う筋群が重複しないエクササイズを探すのが難しいという理由だけでなく、そもそも高重量を扱うようなメインエクササイズにおいては、セット間のレストはしっかりと休んで次のセットに備えたほうが良いからです。どうしてもトレーニングに割ける時間が少なくて短時間で複数のエクササイズを実施したい場合のみ、メインエクササイズにスーパーセットを適用します。

 

スーパーセットの組み方の例

以上を踏まえて、スーパーセットを取り入れたレジスタンストレーニングセッションの例を紹介します。

  • (1)パワースナッチ、(2)スクワット、(3)RDL、(4)リバースランジ、(5A)腕立て伏せ、(5B)懸垂、(5C)ロシアンツイスト
  • (1)パワースナッチ、(2)スクワット、(3A)RDL、(3B)腕立て伏せ、(4A)リバースランジ、(4B)懸垂、(5)ロシアンツイスト ※場合によっては3Aと3Bのペア時に上腕三頭筋が攣りそうになるかも

 

まとめ

個人的には、メインエクササイズをスーパーセットにすることはありません。セッション後半のアシスタンスエクササイズをうまい具合にまとめて時間短縮を図る目的でスーパーセットを利用します。スーパーセットは絶対に使わないといけないものではありませんが、上手に活用すれば役に立つと思います。いろいろと試してみてください。

 

参考文献

Robbins et al. (2009)  Effects of agonist-antagonist complex resistance training on upper body strength and power development. J Sports Sci. 27(14):1617-25. 

 

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【編集後記】

ブログの固定ページに「オススメ論文」を追加しました。ブログ上部のタブの中から「オススメ論文」をクリックすれば見れるようになっています。少しずつ内容を充実させていこうと思います。

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  • 河森直紀(かわもり なおき) PhD, CSCS

    1979年10月17日 神奈川生まれ 埼玉育ち
    ストレングス&コンディショニング(S&C)コーチ。

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