デッドリフトやクイックリフト等のエクササイズ実施時には、握力を補うためにリフティングストラップを使用する場合があります。リフティングストラップを使用する状況には、いくつかのパターンが考えられます:
- バーが重すぎて、握力が制限要因になっている
- レップ数をこなしていると、握力が耐えられなくなる(筋持久力の不足)
- バーのスピードが速くて、握力がもたない
このうち最後のパターンに関連して、クリーンプルにおいてリフティングストラップを使うことで、パフォーマンス(バーの速度、力、パワー)をUPさせることができるのかを調べた研究を紹介します。
研究概要
研究プロトコル
5人のプロラグビー選手が、膝の高さにセットされたラックからクリーンプルを140KGで実施し、リフティングストラップを使った場合と使わない場合でバーの速度、力、パワー(すべてピーク値)に違いがあるかどうかが調べられた。バーの速度、力、パワーはGymAwareというLinear Position Transducerのケーブルをバーに取り付けることで計測・計算された。
結果
5人の平均値を見ると、バーの速度、力、パワーのピーク値はそれぞれリフティングストラップを使った場合のほうが、11.5%、10.5%、17.5%ずつ大きかった(Effect Sizeは1.22、1.52、1.31)。ただし、個人のデータを詳しく見てみると、5人のうち1人のデータにおいては、リフティングストラップ使用の有無によってバーの速度、力、パワーの値に大きな差は見られなかった。
河森博士の解釈
以上がこの研究の概要です。被験者数が5名と少ないこともありt検定は実施されませんでしたが、%差やEffect Sizeを見てみると、リフティングストラップを使ったほうがパフォーマンスをUPさせることができると判断することができます。
逆の見方をすると、握力によってクリーンプルのパフォーマンスが制限されてしまう可能性があるということです。したがって、クリーンプルのパフォーマンスをUPさせたいのであれば、リフティングストラップを使用したほうがよいと考えられます。
注意点
ここで、いくつか注意しないといけない点があります:
- リフティングストラップを使用しても大きな変化が見られなかった被験者もいたので、この現象には個人差があるものと思われる
- 一時的にクリーンプルのパフォーマンスが上がるからと言って、それが中・長期的なトレーニング効果のUPに繋がるとは限らない
- リフティングストラップを使用してクリーンやパワークリーンのようにキャッチ局面のあるクイックリフトを実施すると、手首の可動域が制限されるため適切なキャッチ動作が妨げられたり手首に過剰なストレスがかかる恐れがある
まとめ
以上のような点を考慮に入れたうえで、クイックリフト中にリフティングストラップを使うかどうかを決定してみてはいかがでしょうか?
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【編集後記】
進撃の巨人の最新刊を購入してKindleで早速読みました。ここ2・3巻は、巨人が放ったらかしで人間同士の争いの話になっていましたが、そろそろ次巻あたりで巨人が大暴れしそうな予感です。