#305 懸垂をやらせる時は「顎をバーより上に出せ!」と指導しない理由の1つ

 

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懸垂は、上半身プル動作のストレングスエクササイズの中でも重要な種目です。懸垂のフォームについては、過去にもブログで書きました。

#104 【コーチングキュー】懸垂編:ケガや痛みを防ぎ、トレーニング効率アップにつなげる

 

 

 

アスリートに「顎をバーより上に出せ!」と指導しない理由

①フォームが悪くなる

私がアスリートに懸垂を指導する時は「顎をバーより上に出せ!」とは言わずに「肘を腰(あるいは脇腹)に向かって引きつけろ!」と指導するようにしています。その理由として、上記のブログでは、「顎をバーより上に出す」という目的をどうにかして達成しようとして、フォームが崩れてしまうことを理由として挙げました。顎を前に出したり、肩甲骨がanterior tiltしたり、etc…

懸垂は、あくまでも「上半身のプル動作における筋力を向上させる」という目的を達成するための手段にすぎないのに、「顎をバーより上に出す」ことが目的にすり替わってしまうと、安全に・効果的に・効率的に筋力を向上させることができなくなってしまいます。

 

②身体部位の比率の個人差

もう1つ、懸垂におけるコンセントリック動作のゴールを「顎をバーより上に出す」ことに設定しない理由は身体部位の比率の個人差です。

たとえば、2人のアスリート(AとB)が懸垂をして、同じだけの可動域で肩を伸展させたとします。2人とも肘を腰(あるいは脇腹)に向かって引きつけて、上腕が体側にある状態を想像してみてください。ここで、アスリートAの上腕が長くて前腕が短かったとしたら(相対的に)、顎の高さはバーよりも上にあるはずです。一方、アスリートBの上腕が短くて前腕が長かったとしたら(相対的に)、顎の高さはバーより下にあるはずです。つまり、肩まわりの可動域を見るとアスリートAもアスリートBも同じだけ引いているはずなのに、顎とバーの位置関係で比較すると2人の間で大きな差が出るのです。

したがって、懸垂において「顎をバーより上に出す」ということを基準にしてそれを指導してしまうことは、前腕と上腕の長さの比率の個人差を無視した稚拙な行為とも言えるのではないでしょうか?そのような基準でアスリートの筋力を評価したりアスリート間で比較してしまうと、アスリートBのような体型のアスリートにとってアンフェアです。それに、そのようなアスリートに対して「顎をバーより上に出せ」と指導すると、余計に不適切なフォームにつながるリスクが高まるはずです。

 

 

まとめ

懸垂(特に逆手で実施する場合)は、チンアップとも呼ばれます。ここで言う「チン(chin)」は英語で顎のことを指します(あっちの方のチンではありません)。そんな名前も顎をバーより上に出すことを助長しているのかもしれません。基準としては分かりやすいのかもしれませんが、アスリートのためにならないのでやめましょう。

 

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【編集後記】

前回のブログで五郎丸選手を取り上げたら、閲覧数がえげつなかったです。五郎丸効果(というか人気アスリート・時の人の影響力?)を実感しました。逆に言えば、トレーニングのイロハも分かっていないような人が、有名アスリートにとりいって「私は◯◯選手を指導しています!」なんて宣伝してしまうと、間違った情報がブワーッと拡散してしまうんだろうな〜と思い、ゾッとしました。