#383 【アスリート向け】 競技の動きに見た目が似ているエクササイズのほうが競技力向上に直結する・・・なんてことはございません!

  

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以前のブログで、アスリートがトレーニングに取り組む重要性について説明しました。

#373 【アスリート向け】なぜトレーニングをやるの?

 

まずはそちらのブログを読んでみてください。

そして、そこに書いてある内容を理解してもらったと仮定したうえで、今回は「ウエイトトレーニングにおけるエクササイズ選択」というトピックに関して、よく見かける間違いを指摘して、それがなぜ間違っているのかを説明したいと思います。

 

 

よく見かける間違い=競技の動きに似ているエクササイズ

ネットや雑誌で目にする、あるいは実際に見かける間違いとして「競技の動きに見た目が似ているエクササイズ」を使ったウエイトトレーニングがあります。あるいは、「一般的なエクササイズをやっているんだけど、フォームを競技の動きに無理やり近づけようとしている」という間違いもよく目にします。

具体例を挙げると:

  • ボクシング選手がダンベルを持ってパンチの動きをする
  • スクワットにおいて、足幅・つま先の向き・しゃがむ深さ等を競技の動きに無理やり似せる(例:ボート、スキージャンプ)
  • ランジで重心を前方に移動させてつま先荷重になったり、深くしゃがまなかったり(例:フェンシング、バドミントン)

などがあります。

こういったエクササイズは、一見、競技の動きに直接結びつきやすいような感じがするので、アスリートや競技コーチのウケは良いです。しかし、実際には効果がないどころか、逆効果になるリスクが高い危険なシロモノです。

したがって、私がそのような「競技の動きに見た目が似ているエクササイズ」をアスリートにやらせることは、基本的にはありません。

 

 

なぜ間違っているか?

では、なぜ「競技の動きに見た目が似ているエクササイズ」を選択することは間違いなのでしょうか?

この疑問を解き明かすために、逆に、そのようなエクササイズをやる人たちがどのようなロジックを持っているかを考えてみましょう。

おそらく、そういうエクササイズが効果があると信じている人たちは、「見た目の動きが似ている」という点を重要視しているのでしょう。「似ているから競技動作向上に結びつきやすい!」とか「競技動作で使うのと同じ筋肉を同じ動きの中で鍛えているから、パフォーマンス向上に直結する!」とかいうロジックがあるはずです。

でも、「見た目の動きが似ている」ことがトレーニング効果をあげるのに重要なキーなのだとしたら、それを突き詰めて考えると、究極的には競技練習そのものが最も「見た目の動きが似ている」ということになります。だったら練習だけしてればいいじゃん!ということになり、あえてウエイトトレーニングなんてする必要がなくなってしまいます。

しかし、以前のブログ(#373 【アスリート向け】なぜトレーニングをやるの?)で説明したように、そもそもアスリートがトレーニングをやる理由は『練習だけじゃ勝つには足りないので、練習ではできないことをやるために、あえて練習とは別のことをやる』ことなんです。あえて練習とは別のことをやることで、より健康的に・より効率的に・より最大限に体力を向上することができるからです。

だから、競技練習だけやっていればイイなんてことは絶対にありません!

そもそも、あえて練習とは別のことをやるためにトレーニングをするのに、そのトレーニングの見た目を競技の動きに近づけようとするのはナンセンスです。そんなことをしたら、可動域は狭くなるし扱える重量も軽くなるし関節にとって不健康な動きになるし、トレーニング効果が下がってしまいます。だから、そんなことをする人はトレーニングの本質が理解できていない人です。

であるならば、トレーニングにおいては「健康的に・効率的に・最大限に体力を向上する」という目的を達成するためには何がベストか?という観点でエクササイズを選択するべきです。見た目の動きが競技に似ているかどうかは関係ありません。

たとえば、スクワットやデッドリフトは競技の動きとは似ていないかもしれませんが、健康的に・効率的に・最大限に筋力を向上することができるエクササイズなんです。むしろ競技動作に無理やり結び付けないほうがいいんです。

 

 

「競技の動きに見た目が似ているエクササイズ」のリスク

競技の動きに見た目が似ているエクササイズは「見た目の動きが似ている」から効果があるというロジックが間違いである点は説明しました。

ロジックが間違いで、期待したほどのトレーニング効果が得られない(=効果ゼロ)というだけならまだしも、そのようなエクササイズを実施することによって効果がマイナスになりうるリスクが2つ存在します:

 

①技術が崩れる

競技動作そのものにバーベルやダンベルによって外的な負荷を加えてトレーニングをすると、動きのメカニクスが実際の動作とは変わってしまいます。

たとえば、ボクシング選手がダンベルを持ってパンチの動きのマネをするようなエクササイズをやるとします。

普通のパンチと同じ感覚でやると、ダンベルの重さのためにパンチの軌道が変わり、下方向にパンチを打つ動作になってしまうはずです。

そこで、ダンベルを持っていても同じ軌道でまっすぐ前にパンチ動作をしようとすると、通常のパンチ動作よりも上方向に力を発揮することになります。つまり、見た目の動きが似ていても、その動きを作り出すメカニクスは違ってしまうのです。

このような動きを続けていると、少し上方向に力を発揮する癖がついてしまい、実際のボクシング中にもその癖が出てしまって、パンチ動作の技術が崩れてしまうリスクがあります。

逆に、パンチ動作とはまったく異なる動きのエクササイズ(例:腕立て伏せ)を使ってトレーニングをしていれば、技術に悪影響を与えるリスクは限りなくゼロに近いでしょう。

パンチ動作に似ているエクササイズをやる場合、動きが中途半端に似ているだけに、技術が崩れるリスクが高くなるのです。皮肉なものです。

 

②痛み・ケガにつながる

競技動作そのものに外的な負荷を加えると、関節や筋に過剰なストレスがかかり、ケガにつながるリスクが高まります。

たとえば、「野球のピッチングに特異的なエクササイズ」として、ピッチャーが砲丸投げの球を使って投球練習を続ければ、遅かれ早かれ肘や肩を痛めるでしょう。

あるいは、ボート選手がスクワットをする時に、ボートの動きに似せようとして足幅を極端に狭くしてつま先もまっすぐ前に向けた状態で深くしゃがもうとすると、膝が過剰に前方に移動して膝に負担がかかるし、腰も丸まり腰痛につながるリスクも高まるでしょう。

 

 

まとめ

「競技の動きに見た目が似ているエクササイズ」が効果があるとか競技力向上に直接結びつくとかいう根拠は一切ありません。それどころか、マイナスになるリスクが大きいんです。

アスリートの皆さんには、「見た目が似ているからなんとなく効果がありそう」といった間違った考え方はぜひとも改めてもらって、健康的に効率よく最大限にトレーニング効果を得ることのできるベーシックなエクササイズの大切さを見直してもらいたいと思います。

あくまでも練習は練習、トレーニングはトレーニング、なんです。別物なんです。

 

 

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【編集後記】

アメリカのTVドラマ「NCIS」が好きです。オーストラリア留学時代から観ていたのですが、今は日本でもBSのDlifeというチャンネルで放送しているので、予約録画して観ています。