この時期、多くの冬季スポーツがシーズンインする一方で、多くの夏季スポーツはオフシーズンを迎えます。
オフシーズンに入る夏季競技の中でも、とくにプロ野球なんかは、オフシーズン中の動向がメディアで報道されることが多く、オフシーズンにアスリートがどのようなトレーニングをやっているのかを垣間見ることができます。
メディアに出てくるのは、アスリートがやっているトレーニングのほんの一部にすぎないはずですが、それでも「トンデモないことやってるな・・・」と驚愕することが多いのもまた事実です。
そんな報道を見かけた時は、Twitterで「何だコレ・・・」とつぶやくと、かなり大きな反響をいただくことも多いです。
時期的にもちょうどよいので、今日は、あらためてトレーニングの意義と限界について考えてみます。
これからオフシーズンに入るアスリートの参考になれば幸いです。
トレーニングの意義と限界
私はアスリートにトレーニング指導する専門家ですが、決してトレーニング至上主義者ではありません。
「トレーニングさえやっていれば、競技成績も向上するぜ!」「俺にトレーニング指導をまかせてくれれば、あなたをトップアスリートに育ててみせるぜ!」なんて、おこがましくて、口が裂けても言えません。
正直に言うと、トレーニングの勉強を始めたばかりの学生の頃は、少しそう思っていました(ゴメンナサイ)。
しかし、知識が増えて、経験を積むにしたがい、考え方もバランスの取れたものに変わっていくもので、「トレーニングをやって体力向上さえすれば競技成績もUPする」とは考えなくなりました。
実際、トレーニング指導をしていて「身体能力が非常に高くて凄いな〜」と思うようなアスリートが、「この選手大丈夫かな?」と心配になるほど身体能力の低いアスリートに、競技成績では全然勝てないなんていうことはたくさんあります。
そういう経験をしてきて思うのは、「スポーツで勝つのは、その競技がうまいアスリートだ」ということです。
どれだけトレーニングをがんばって体力を向上させても、競技が下手だったら勝てません。
「そんなの当たり前だろ」と思われるかもしれませんが、こと、オフシーズンのトレーニングに関して言うと、そんな当たり前のことが忘れられているのではないかと疑うケースが多いと感じています。
たとえば、プロ野球選手のオフシーズンの報道で見かける例で言うと、「球速UPするために、オフシーズンの間に体重を増やします」とか「バッティングの飛距離を伸ばすために、オフシーズンは肉体改造に励みます」という発言。
まあ、メディアの報道は、一部を切り取っていることが多いので、これらの発言がアスリートの真意ではない可能性もあります。
しかし、もし、アスリートが本当にこれらの発言のような考え方をしているとしたら、実際に球速をUPさせたりバッティングの飛距離を伸ばしたりすることに成功する可能性は低いだろうな〜と思います。
なぜか?それはトレーニングだけしても競技はうまくならないからです。
競技がうまくなるためには、競技の練習をする必要があります。
球速UPしたいならピッチング練習が必要だし、飛距離を伸ばしたいならバッティング練習が必要です。
これまた「そんなの当たり前だろ」と思われるかもしれませんが、残念ながら、体重を増やしたり肉体改造をしたりすれば、自動的に球速がUPしたりバッティングの飛距離が伸びると勘違いしているアスリートが少なからず存在しているのではないかと思われるのです。
とりあえずオフシーズンに練習をあまりやらずにトレーニングをガシガシして、体重を増やしたり肉体改造をしたりすることに成功したとしても、いざ競技の練習をやろうとなった時に、思ったほど球速がUPしなかったりバッティングの飛距離が伸びなかったりという状況に直面することは、容易に想像できます。
何度も言うように、トレーニングをして体力向上しても競技がうまくなるわけではないからです。
むしろ、体重増加も含めて体力が向上する、つまり体力が変化すると、これまでと同じ感覚で身体を動かそうとしても、同じように動かすことができないはずです。
結果として、一時的にパフォーマンスの低下が見られる可能性も頭に入れておくべきです。
しかしながら、正しい方法で体力を向上させることができているのであれば、その向上した体力を使いこなせるようになりさえすれば、パフォーマンスUPに結びつく可能性はあります。
そして、新たな体力を使いこなせるようになるために必要なのは、競技練習なのです。
» 参考:【論文レビュー】トレーニングによる筋力UPは、やり方によっては競技力UPにも競技力DOWNにもつながりますよって事をコンピューターシミュレーション研究の結果をもとに考えてみる
したがって、オフシーズンであっても、競技の練習がメインであるべきで、トレーニングはあくまでも補強にすぎないと考えておいたほうが良いでしょう。
競技が上手くなるためには、オフシーズンであっても競技の練習をしないといけないんです。
※ピッチャーの場合、シーズン終了後は肩や肘を休めるためにピッチングをしない時期を設ける必要があるかもしれないので例外です。
トレーニングの役割は、メインであるべき競技練習を支えることです。
別な言い方をすると、競技練習の効果を上げるために、トレーニングをするといった感じでしょうか。
トレーニングをしてケガのしづらい身体を作ることができれば、質の高い練習をたくさん積むことができるので、競技が上手くなることに間接的に貢献できます。
また、体力が足りずに、どれだけ競技練習をやっても実施できない動きがある場合は、練習とは別にトレーニングを実施して体力を向上させておくことで、あとは競技練習をしっかりやれば技術を向上させることができるという下準備を整えることもできます。
まとめ
オフシーズンにガシガシとトレーニングしておけば、競技がうまくなるという幻想は捨てましょう。
トレーニングだけしても競技はうまくなりません。
それがトレーニングの限界です。
しかし、トレーニングをすることで、競技練習の質や量、そしてその効果を促進することは可能です。
その結果として、間接的に競技力向上に貢献できるのはまちがいありません。
「あくまでも競技練習がメインで、トレーニングは補強にすぎない(だけど重要)」という形で、トレーニングの意義と限界を適切に捉えたうえで、オフシーズンの練習・トレーニングをがんばっていただければ。
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【編集後記】
今日はさいたま新都心のまと治療院で腰のメンテナンス。
今日は埼玉県民の日だったようで、昼間っから街中に多くの子供がいました。