#692 他人の言葉を自分の感覚に変換して再現するのは難しい→良いときは褒めるのが大切

 

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先日、以下のようなツイートをしました:

 

この「最高のコーチは教えない」という本は、読んでいて参考になる部分がとても多かったのですが、今日はそのうちの1つを紹介して、S&Cコーチの立場としてどう活用できるか考えてみます。

 

 

他人の言葉を自分の感覚に変換して再現するのは難しい

今日とりあげたいのは、以下の言葉です。

日本のトップ選手が集まるプロ野球でも、他人の言葉を自分の感覚に変換して完璧に再現できる選手はほとんどいないのだ。

これは、S&Cコーチとしてアスリートにトレーニング指導をしていても感じるところです。

「いや〜、本当にそうだよな〜」と共感しながら読みました。

 

たとえば、ウエイトトレーニングにおいては「こういう動きでエクササイズをやってほしい」とこちらが目指しているフォームがあります。

しかし、「こういうふうに動いて」とアスリートに言っても、それだけですぐにこちらの意図する動きを再現できてしまうアスリートは稀です。

多くの場合は、さまざまなコーチングキューを駆使しながら、アスリートがしっくりとする声がけを探りつつ、試行錯誤をしながら求める動きに近づけていくことになります。

すぐにパッとできてしまうアスリートもいれば、数ヶ月かかってようやく「あ、こういうことか」と理解してもらうケースもあるのです。

これは私だけでなく、多くのS&Cコーチが日々の活動の中で感じていることだろうと思います。

 

そのような経験からわかることは:

  • ①アスリートの感覚(=主観)と実際の動き(=客観)は必ずしも一致しない
  • ②アスリートの感覚とS&Cコーチの感覚は必ずしも一致しない

ということです。

 

①アスリートの感覚(=主観)と実際の動き(=客観)は必ずしも一致しない

たとえばスクワットでパラレルくらいの深さまでしゃがんでほしいのに、そこまで到達せずにクウォーターくらいの浅いスクワットを繰り返すアスリート。

RDLで膝はあまり曲げないでほしいのに、めちゃめちゃ曲げてしまうアスリート。

こういうのはよくあるケースだと思います。

そして、「パラレルまでしゃがもう」とか「膝はあまり曲げないように」と何回も伝えていて、本人もそれは理解してやっているつもりだけど、できていないパターンがあります。

筋力や柔軟性が足りずにできない場合や重量が重すぎてできない場合を除外すると、これは主観と客観が一致していないのが原因です。

 

そういうケースにおいては、スマホ等で動画を撮影してアスリートに見せてあげるのが効果的です。

「もっと深くしゃがんでるつもりだったけど、こんなに浅いんですね」とか「膝まっすぐ伸ばしているつもりだったけど、こんなに曲がっていたんですね」と気付いてもらえます。

主観と客観の違いを目の当たりにすることで、その差を縮めよう修正しようという力が働いて、フォームが改善することがあります。

» 参考:ウエイトトレーニングで自分のフォームを動画撮影してチェックするのがオススメです

 

 

②アスリートの感覚とS&Cコーチの感覚は必ずしも一致しない

アスリートにトレーニング指導をするうえで、S&Cコーチ自身がトレーニングをした経験を持っていることはとても重要です。

しかし、S&Cコーチ個人の感覚をそのまま目の前のアスリートに伝えたとしても、伝わるとは限りません。

たとえば、S&Cコーチ自身がトレーニングをしているときに腰が反りすぎてしまった場合に、「もうちょっと骨盤を後傾させよう」と意識したら動きを修正できるかもしれませんが、アスリートに指導しているときに「もうちょっと骨盤を後傾させよう」と伝えても動きを修正できないかもしれません。

「お腹に力を入れよう」とか「ケツを締めよう」と伝えたほうが、アスリートの感覚には合っていて、動きも修正できるかもしれません。

 

また、アスリートによっても感覚は異なります。

たとえば背中が丸まってしまうエラーを修正したいときに、「胸を張ろう」と言って修正できるアスリートもいれば、「肩甲骨を寄せよう」と言って修正できるアスリートもいれば、「Tシャツの胸のロゴを目の前に立っている人に見せておこう」と言って修正できるアスリートもいます。

つまり、同じ動き(=客観、アウトプット)を引き出すための感覚(=主観、インプット)には個人差が大きいということです。

 

 

良い動きができたときには褒める

アスリートの主観と客観にズレがある場合は、動画を見せるのが効果的です。

また、アスリートとS&Cコーチの感覚にズレがある場合は、声がけ(=コーチングキュー)のレパートリーをたくさん持っておいて、目の前のアスリートに伝わるものを探ることが大切です。

 

そして、何よりも重要なのはアスリートが良い動きをしたときには褒める、ポジティブなフィードバックを与えることです。

感覚というのは個人的なものなので、アスリートの感覚をS&Cコーチが完全に理解することは難しいです。

であるならば、客観(アウトプット)としての良い動きをアスリートができたときには褒めてあげて、そのときの感覚をアスリート自身に覚えてもらうのがベストでしょう。

「お、今の感じで動けばいいのか」とアスリートに感じてもらう機会を増やすことで、アスリートの感覚とS&Cコーチの言葉のズレを小さくしていくことが可能になるはずです。

 

もちろん、それをするためには、良い動きを捉える「目」をS&Cコーチが持っておく必要がありますし、そもそも何が「良い動き」なのかを理解しておく必要もあります。

 

 

まとめ

エクササイズの指導をするときは、できていない部分、エラーの修正にフォーカスしてしまいがちです。

しかし、うまくできたときに褒めてあげてポジティブなフィードバックを与えてあげたほうが、適切な動きを覚えてもらう効果は高いと思います。

両方必要なので、前者に偏りすぎないようにバランス良く声がけをしたいですね。

» 関連記事:ウエイトトレーニング中にアスリートに「キューイング」を与える時は、動作を修正することだけでなく、良い動きを褒めることも意識する

 

 

 

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【編集後記】

NBAウィザーズのプレシーズンゲームを観ましたが、八村選手普通に通用してましたね。シーズン開始が楽しみです!