#542 【競技コーチ向け】Stress is additive(ストレスは積み重なるもの) ー 練習・トレーニング・私生活etcのストレスを別々に考えずに総和として捉える

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トレーニング指導の専門家として活動する上で、競技コーチ(監督、コーチ、部活顧問)の方々との連携は欠かせません。

そこで、トレーニング指導の専門家としての立場から、競技コーチがこういう知識を持っていてくれると、連携がスムーズに行くから助かるな〜という情報を、本ブログでも少しずつ書いていくことにします。

べつに、私のような専門家と一緒に活動していなかったとしても、競技コーチとして知っておくと役に立つ情報となるはずですので、興味のある方に読んでいただき、参考にしていただければ幸いです。

 

 

Stress is additive(ストレスは積み重なるもの)

専門家としてトレーニング計画を立てていると、アスリートの疲労を抜くために、トレーニング量を意図的に減らしたい時期が出てきます。

たとえば、重要な試合前のテーパリング期間であったり、トレーニングプログラムの切り替えの時期であったり、試合や遠征等のスケジュールが立て込んでいて疲労がたまるであろうと予想される時期であったり。

そのようなケースでは、蓄積している疲労を取り除いたり、過剰に疲労が蓄積するのを防いだりするのが重要だと考えて、あえてトレーニング量を減らすようにトレーニング内容を調整するわけです。

 

しかし、せっかくトレーニング量を減らしたのにもかかわらず、「今週はトレーニングがラクそうだから、そのぶん練習量を増やそう!」なんてことを競技コーチにされてしまうことがあります。

なんてこったい、オー・マイ・ゴッド!!

「トレーニングがラクなぶん、時間もエネルギーも余ってるでしょ!?」「だったら、そのぶん練習ガシガシできるでしょ!?」という思考回路なんだろうと推測されます。

もし、あなたがそのような思考回路を持っている競技コーチだとしたら、少し考え方を改めてみてほしいです。

なぜなら、せっかくトレーニング量を減らしても、そのぶん練習量を増やしてしまうと、疲労を取り除くことが難しくなるからです。

結果として、重要な試合に向けてのピーキングに失敗してしまったり、疲労が過剰に蓄積したせいで怪我が増えたりしてしまうでしょう。

 

 

ストレスは総和で考える

なぜ、トレーニング量を減らしても、そのぶん練習量を増やしてしまうと、疲労が取り除かれないのでしょうか?

その理由を理解するためには、アスリートの身体にとって、疲労を引き起こすストレスは、練習であろうがトレーニングであろうが区別がなく、すべてのストレスは積み重なるものであるという事実を知っておく必要があります。

アメリカの著名なスポーツ科学者であるMike Stone博士は、「Stress is additive(ストレスは積み重なるものだ)」と表現されています。

 

たとえば、先程の例を使って説明をすると、イメージとしては以下の図のような形になります。

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まず、左図に注目してください。

これまでの練習量が60でトレーニング量が40であったとします(数字は任意の値)。

疲労を取り除くために、トレーニング量を40から20に減らしたとしても、そのぶん練習量を60から80に増やしてしまうと、全体の量としては100から100と変化がありません。

つまり、ストレスの積み重ねとしての総量は変わらないため、結果として疲労が取り除かれることは期待できません。

 

一方、右図のように、トレーニング量を40から20に減らした時に、 練習量を変えない(あるいは連動して練習量も減らす)と、全体の量は100から80に減ります。

つまり、ストレスの総量が減るため、疲労が取り除かれる効果が期待されるのです。

身体にかかるストレスを考える時には、練習とトレーニングを別々に考えるのではなく総和として考える、という癖をつけていただけると、コンディション調整がうまくいく確率を格段にあげることができるはずです。

 

 

練習とトレーニング以外のストレスも

ストレスを総和として捉えるという考え方をわかりやすく説明するために、練習とトレーニングの2つのストレスを使ってお話をしました。

しかし、実際にストレスの総和を考える時には、練習とトレーニング以外のストレスも考慮に入れる必要があります。

ざっくり言うと「私生活のストレス」のことです。

 

たとえば、学生アスリートの場合、期末試験に向けて勉強をしないといけないというのは大きなストレスです。

試験勉強期間中は、たとえ通常と同じような練習とトレーニングをしていたとしても、それに試験勉強というストレスが加わるため、ストレスの総和は増えるはずで、いつもよりも疲労が蓄積しやすい状態にあります。

もし、あなたが部活の顧問の先生であったり、大学生アスリートのコーチであったりしたら、あらかじめ試験の時期をチェックしておいて、その時期には練習・トレーニングの量を減らしてストレスの総和を調整する等の配慮が必要になるでしょう。

場合によっては、試験勉強の時期には練習・トレーニング量を減らさざるをえないというのが事前にわかっているのであれば、その前の時期には意図的に練習・トレーニングの量を増やして強化をしっかりとしておいて、試験勉強中はリカバリー期間とわりきって、練習・トレーニングの量をバッサリと減らしてしまう、というやり方もアリでしょう。

私が言えるのは、試験勉強というのもストレスであり、ストレスの総和を増やす要因になるということだけです。

その情報をもとに、試験勉強期間中やその前後の期間中の練習・トレーニング量をどのように調整するかは競技コーチ次第です。

ある意味、腕の見せ所ではありますし、これが唯一絶対の正解というものもないでしょう。

 

また、恋人と別れたとか、家族が病気で看病しないといけないとか、家族と死別したとかも大きなストレスです。

競技コーチとして、アスリートの私生活にどこまで踏み込んでいいのかの判断は難しいところでしょうが、アスリートが私生活で大きなストレスを抱えているかどうかを把握できていると、コンディション調整に役立つはずです。

ただし、これらの私生活関連ストレスは、上記の試験勉強のように事前に把握して計画を立てることが難しい類のストレスです。

急に起こるタイプのストレスなので。

そのようなストレスの場合は、事前に予測することが不可能なので、その都度、把握しながら練習・トレーニング内容を調整するという対応が必要になるでしょう。

 

 

まとめ

ストレスは積み重なるものであり、総和で捉える、という考え方を、競技コーチと私のようなトレーニング指導の専門家で共有することができると、連携がスムーズに行くと感じます。

また、私のような専門家と連携しておらず、お一人で練習・トレーニングの計画を立てている競技コーチのみなさんも、ストレスを総和で捉えるという考え方を知っておけば色々と役に立つはずです。

参考にしていただければ。

 

 

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【編集後記】

セブンイレブンの冷凍大学いもが美味しいです。