#373 【アスリート向け】なぜトレーニングをやるの?

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前回のブログで宣言したとおり、今回は【アスリート向け】に記事を書いてみます。

テーマは「なぜトレーニングをやるの?」です。

 

 

そもそもアスリートはトレーニングをやる必要があるの?

私はアスリートに対してトレーニング指導をする仕事をしています。

こんな仕事をやっているくらいなので、アスリートはトレーニングをしたほうが良いと考えています。

 

でも、アスリートの中には、競技の練習だけをやっていたい、トレーニングなんてやりたくない、という人もいます。

「競技が好きでやっているのに、なんでキツいトレーニングなんてやらないといけないんだ」みたいな感じで。

さらには、勝つことよりも技術を極めることに美学を感じていて、トレーニングをして体力を向上させることをナンセンスと感じてさえいるかのようなアスリートも存在します。

 

では、そもそもアスリートはトレーニングをやる必要があるのでしょうか?それとも、別にやらなくてもいいのでしょうか?

 

極論を言うと、練習だけやっていて勝てるならそれでいいし、トレーニングなんてやらなくてもいいです。

勝てるんであれば、誰も文句なんて言いません。

でも多くの場合、練習だけじゃ勝つには足りないので、練習ではできないことをやるために、練習から離れて、あえて練習とは別のことをやる必要があるんです。

それがトレーニングです。

 

 

練習とトレーニングの違いは?

「練習」は主に技術(競技の動き)を上達させることを目的に実施するものです(※)。

一方、「トレーニング」は筋力・柔軟性・持久力etcの体力を向上させることを目的に実施するものです。

  • 練習の主目的 → 技術の上達
  • トレーニングの主目的 → 体力の向上

どちらも最終目標は「勝つこと」ですが、その目標に到達するために、どのプロセスにアプローチするのか(技術 vs. 体力)、という点で異なります。

練習は練習、トレーニングはトレーニング、ということです。別物なんです。

※練習の目的には、技術を上達させること以外にも、競技における予測能力や判断力を向上させることやチームメイトとの連携を深めることetcもあります。

参考 【重要】専門的体力トレーニングとは?MNB’s Dialy

 

 

練習だけやっていれば体力は向上する?

トレーニングをあまりやりたがらないアスリートの中には、「練習だけやっていれば競技に必要な体力は自然と身に付くよ」と言う人もいます。

冒頭にも書いた通り、もし練習だけやっていて必要な体力が身に付いて勝てるのであれば、練習だけやっていればいいです。

あえてトレーニングなんてやる必要はありません。

でも、あえて練習とは別にトレーニングを実施するのには、それなりの理由があるんです。

その理由とは「練習だけやるよりも、トレーニングも実施したほうが、より健康的に・より効率的に・より最大限に体力を向上させることができる」からです。

 

①より健康的に

私も長年トレーニングを指導していますが、トレーニング中にアスリートがケガをすることなんて滅多にありません(注:ゼロではありません)。

自分が担当しているアスリートがケガをする時は、ほとんど競技の練習中か試合中です。

たとえば、ウエイトトレーニングで重いバーベルを持ち上げたらケガするんじゃないか、という印象があるかもしれませんが、サッカー等と比べるとはるかに傷害発生数は少ないというデータもあります。

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したがって、競技練習をガシガシやって体力向上を図るよりも、それとは別にトレーニングを実施したほうが、はるかに低いリスクで「より健康的に」体力を向上させることができるんです。

もちろん、トレーニングのやり方次第ではケガのリスクが高まることもありうるので、できれば専門家の指導を受けて適切なやり方でトレーニングをしてほしいものです。

 

②より効率的に

たとえばラグビー選手が筋力をUPしたいと思ったら、トレーニングをしなくても練習だけをガシガシやってご飯をたくさん食べていれば筋力は多少UPするはずです。

でも、練習とは別にウエイトトレーニングを実施すれば、それと同じだけの筋力UPをより短期間で、あるいはより少ない時間投資で達成することが可能です。

つまりトレーニングは効率がいいんです。

アスリートがアスリートでいられる期間は限られています。

そして、練習やトレーニングに使える時間も限られています。

そうであるならば、より効率的に体力を向上することができるトレーニングを活用しない手はありません。

 

③より最大限に

練習だけをガシガシやっていても、ある程度は体力を向上させることは可能です。

しかし、練習だけで向上させることのできる体力レベルなんてたかが知れています

たとえば上の例を使うと、ラグビー選手が練習だけをガシガシやってご飯をたくさん食べていれば、ある程度身体が大きくなって筋力も向上するでしょう。

しかし、練習に加えてウエイトトレーニングを継続的に実施したほうが、はるかに身体も大きくなるはずですし、筋力向上効果も比べ物にはならないでしょう。

つまり、体力という観点で考えると、トレーニングを活用したほうがはるかに高いレベルに到達できるということです。 

 

 

なぜトレーニングをして体力を向上させるのが必要?

「練習だけやるよりも、トレーニングも実施したほうが、より健康的に・より効率的に・より最大限に体力を向上させることができる」という私の主張を理解してもらえたと仮定して、次は、「なぜトレーニングをして体力を向上させるのが必要なのか?」という点について考えてみます。

 

①アスリートとしてのポテンシャルをUP

ガシガシと練習をすれば、現在自分が持っている体力を最大限に活かして競技の動きを実施する能力は磨かれていくはずです。

この作業は非常に重要です。

練習しないで上手くなるはずがありません。

しかし、練習だけしかやらないと、「現在自分が持っている体力」という枠組みの中で、自分が持っているものをいかに上手に運用するかという能力を向上させることしかできません

そういった作業に加えて、練習とは別にトレーニングを実施して「現在自分が持っている体力」という枠組みを広げてあげることができれば、それはアスリートとしてのポテンシャルを広げることにつながるはずです。

筋力や柔軟性が足りないために、どれだけ練習してもできない動きがあったとしたら、トレーニングを実施して体力を向上させることが、その技術を身に付けるのを助けてくれるんです。

体力UPが練習の効果を引き上げてくれるということです。

 

②ケガをしづらい身体を作る

また、トレーニングを実施して体力を向上することで、ケガをしづらい身体を作ることができます

たとえば、ウエイトトレーニングを実施するとケガのリスクを1/3に減らせるとする科学的なデータもあります(参考ブログ)。

ケガをしなければ、たくさん試合に出ることができます

どれだけ能力があっても、しょっちゅうケガをして試合に出れなければ、その実力を発揮することはできません。

また、ケガをしなければたくさん練習ができます

たくさん練習ができれば、それだけ競技がうまくなる可能性が高まります。

また、たくさん練習ができれば、それ自体がさらにケガをしづらい身体を作ってくれるので、良い循環が生まれます。

 

この「ケガをしづらい身体を作る」というトレーニングの役割はかなり重要なんですが、ケガをしていないアスリートにとっては訴える力がどうも弱そうだというのが私の印象です。

いったん大きなケガをしてしまえば、「しっかりとトレーニングをしておけば良かった」と心の底から思えるのでしょうが・・・。

「後悔先に立たず!」です。

アスリートとして活躍したいのであれば、できるだけ早く「ケガをしづらい身体を作る」ことの重要性を認識して、トレーニングに取り組んでもらいたいところです。

特に長く現役を続けたいのであれば。

 

 

トレーニングをやっていれば勝てるようになるの?

ここまでトレーニングの必要性について説明してきましたが、じゃあ、トレーニングをやっていれば勝てるようになるのでしょうか?

結論から言うと、別にトレーニングをやれば、それだけで自動的に勝てるようになるわけではありません。そんなに単純な話ではないんです。

トレーニングによって体力を向上させたからといって、それがすぐに競技力向上につながるわけではないからです。

 

じゃあ、どうすればトレーニングによって向上した体力を実際の競技の動きの向上につなげることができるのでしょうか?

その答えは「工夫をしながら練習をたくさんすること」です。それにつきます。

そうすることで、トレーニングによって向上した体力を使いこなす能力がUPし、結果として競技の動きの向上に結びつきます。

これを「トレーニング効果の転移」と呼びます。

つまり、

  • ステップその① トレーニングによる体力向上
  • ステップその② たくさん練習をして、向上した体力を使いこなす能力を身に付ける(トレーニング効果の転移)
  • ステップその③ 競技パフォーマンスUP

というプロセスを経ることで、トレーニング効果を勝つことに結びつけることができるようになるんです。

 

その一方で、トレーニングを一切しなくても勝てるアスリートはいます。

もともと持っている才能が他の人より高いアスリートです。

そんなスーパースタークラスのアスリートが「私はトレーニングなんてしません」とかテレビで言っているのを見ると、「あの人が言っているなら、やっぱりトレーニングなんて必要ないのかしら」と弱気になってしまうかもしれません。

しかし、そのアスリートが正しい指導のもとでトレーニングに取り組めば、もっと勝てるようになるはずです。

アスリートが持っている才能をさらに引き出して、才能の最高点に引き上げる手助けをしてくれる手段。それがトレーニングだからです。

 

だから、他人との比較でトレーニングの必要性の有無を判断しないでください。

「あなた」がトレーニングにしっかり取り組んだら、「あなた」が今よりも勝てるようになるのかどうか?ということで判断してください。

そして、ここまで説明したとおり、「あなた」がトレーニングをすれば、今よりも勝てるようになるはずです。

間違いありません。

 

 

まとめ

アスリート向けの初ブログということで、気合が入りすぎて長文になってしまいました。

でも、そもそもなぜトレーニングをするのか?という基本をおさえておかないと、トレーニングの重要性を理解してもらえないし、理解してもらえないと今後ブログを書いても読んでもらえないので、どうしても最初にお伝えする必要のある内容でした。

また、今回書いたブログの内容を理解しておかないと、間違ったトレーニングをしてしまう可能性があるし、トレーニングの役割についても勘違いしてしまうリスクがあります。

ぜひともアスリートの皆さんには、本ブログの内容くらいは理解しておいてもらいたいと思います。

 

私の知る限り、本ブログで書いたようなことをしっかりと理解できているアスリートはプロ野球の大谷選手です。

彼のインタビュー記事について、過去に私なりの感想を書いているので、アスリートの皆さんはそちらも是非チェックしてみてください。

#322 【アスリート向け】現役アスリートに参考にしてもらいたい、トレーニングに対する大谷翔平選手の考え方

 

この記事の内容をベースに、さらに詳しく解説をした本を出版しました。

 

 

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【編集後記】

国際ストレングストレーニング学会に参加するため京都に来ています。世界中から筋力トレーニングを研究しているスポーツ科学者が集まっていて、たくさんのことを学んでいます。学会初日のハイライトは、フィンランドのHakkinen博士を生で見ることができたことです。Hakkinen博士はスポーツ科学界のレジェンドみたいな存在で、非常にインパクトのある論文を数多く発表されています。その業績があまりにも凄すぎて、サイボーグかなんかじゃないんだろうかと少し思っていたのですが、今回、生で見ることができて「Hakkinen博士は実在したんだ!生身の人間だったんだ!」と思いました。