#38 【論文レビュー】アクチベーションドリル その3

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ここ何回かアクチベーションドリルに関するブログを書いてきましたが、このシリーズはとりあえず今回で終わりにしようと思います。これまでのブログをおさらいすると、前回と前々回のブログで文献をレビューした結果、以下の点が示唆されました:

  • アクチベーションドリルを用いればターゲットとする筋群を動員する事が可能である
  • アクチベーションドリルを実施した後に他の動作を実施すると、ターゲットとする筋群をより早くまたはより強く動員する事が可能になる

残る疑問は、「activation drillを用いてターゲットとする筋群を動員しておいて、その後の運動中にターゲットとする筋群の動員を変化させる事で、その運動のパフォーマンスそのものを向上する事ができるのか?」という事です。今回は、この点について調べた研究論文をレビューしてみようと思います。

 

アクチベーションドリル研究紹介

3. activation drillを用いてパフォーマンスを向上させる事ができるか?

Crowら[1]の研究では、臀筋筋群(gluteal muscle group)をターゲットとしたアクチベーションドリルを実施してウォームアップをした場合と、何もウォームアップを実施しない場合で、カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)中のピークパワー値に与える影響を比較しました。実際は全身のバイブレーションを実施した場合も比べているのですが、今回の議論とは関係ないのでとりあえず「アクチベーションドリル vs. 何もしない」についてのみ見ていきます。

まず、CMJテストのプロトコルに関して説明すると、スミスマシンで20KGのバーを担いで5回連続CMJを行い、その中で計測されたピークパワーの最大値をパフォーマンスの指標として用いています。このCMJテストはウォームアップ後5分以内に実施されています。

結果としては、アクチベーションドリルを実施した場合はピークパワーが4565±634 (W)で、何もしない場合はピークパワーが4374±659 (W)という事で、前者のピークパワー値のほうが有意に大きいという事がわかりました。これを単純に解釈すると、「臀筋群のアクチベーションドリルを実施するとCMJのパフォーマンスが向上する」と言えるかもしれません。

しかし、気をつけないといけない点がいくつかあります:

  • CMJ中の臀筋群の筋活動レベルを筋電図等を用いて測定していないので、CMJパフォーマンスの向上が臀筋群の動員が変化した事による結果なのかどうか不明
  • 比較しているのが「何もしない」なので、別にアクチベーションドリルでなくても単純にジョギングをして筋温を上昇させたりするだけでもパフォーマンスが向上する可能性もある→アクチベーションドリルが一般的なウォームアップと比較して特別に効果があるとは言えない
  • 今回の結果はアクチベーションドリル実施後5分以内では当てはまるが、それよりも長い時間アクチベーションドリルの効果が持続するかどうかはわからない

以上のような点も考えた上で、今回紹介した研究を解釈する必要があるでしょう。ちなみに毎回言いますが、興味のある方はご自分で論文のPDFを入手して全文読んでみてください。

 

まとめのまとめ

これまでレビューしてきたアクチベーションドリルに関する研究をもとに「ウォームアップにアクチベーションドリルを含めるべきか?」という問いを考えてみると、私の答えは「場合による」という事になります。「これまでいろいろ文献レビューしてきた結論がそんなんかい!!」とツッコミを入れたくなるかもしれませんが、実際に言えるのはそんなんです。

アクチベーションドリルがさまざまなパフォーマンスを向上させる可能性があるのは間違いありませんが、実際に効果があるかどうかはどのエクササイズを選択するかにもよりますし、そのエクササイズをどのように実施するかにもよりますし、その他いろいろな条件・環境によって変わってくると思います。

これまで紹介した研究結果を参考にした上で、アクチベーションドリルを実施するべきが否かを皆様の置かれた状況等に応じて、ご自分で判断されるのが良いかと思います。

 

 

参考文献

[1] Crow et al. (2012) Low load exercises targeting the gluteal muscle group acutely enhance explosive power output in elite athletes. JSCR 26(2): 438-42.