最近は、ネット上でトレーニング関連情報を手軽にしかも無料で手に入れることができるようになってきました。
ブログ、ツイッター、YouTube、インスタグラム等。
意識の高いアスリートは、自らの競技力を高めるのに役立つ情報を集めようとして、ネットでいろいろと調べていることでしょう。
そういう努力をするアスリート、私は嫌いではありません。
やはり、他人から与えられるのを待っているだけでなく、自分から貪欲に求めていく姿勢は、上を目指すアスリートには必須なものです。
その一方で、ネット上で手に入る情報の中には、デマ情報も含まれているし、デマではなくても自分には当てはまらないような情報もあります。
したがって、ただ情報を探す「検索能力」だけでなく、正しい情報や自分に合った情報を見極める「リテラシー」も身に付ける必要があります。
» 参考:【アスリート向け】アスリートも「トレーニング情報リテラシー」を身に付ける必要があるのでは?
ネットでトレーニング関連情報を仕入れる時に注意したほうがいいこと
ネット上にあるトレーニング関連情報を見極めるには、さまざまなことをチェックしたり注意を払ったりする必要があります。
その中でも、ここは押さえておいたほうが良いと思われることを1つ紹介します。
それは「情報発信者が、どのような読者・視聴者を想定しているのか」ということです。
大雑把にざっくりと分類すると、トレーニング情報発信者が想定している読者・視聴者は、2つのカテゴリーにわけることができます:
- ①トレーニングしかしない人
- ②アスリート
トレーニング関連の情報をネット上で仕入れる時には、その情報の発信者がどちらのカテゴリーの読者・視聴者を想定しているのかを気にしてみてください。
たとえば、身体を大きくするとか見た目を良くするという観点で情報を発信している人は、①のカテゴリーの読者・視聴者を対象にしています。
「シックスパックをつくる方法」とか「大胸筋の鍛え方」とか。
一方で、「速く走るためのトレーニング」とか「野球選手がバットスイングを高めるためのトレーニング」みたいなのは、②のカテゴリーの読者・視聴者を対象にしています。
まずは、ネット上で検索して出てきた情報が、どちらのカテゴリーの読者・視聴者を対象にしたものか、見極めてください。
それがまず第一歩です。
で、①の「トレーニングしかしない人」を対象とした情報だった場合は、とくに注意が必要です。
というのも、そういう情報は、アスリートがトレーニング以外に競技の練習をすることを想定していないからです。
アスリートが競技力向上に役立つ情報を仕入れたいのであれば、そのまま取り入れるのは危険でしょう。
ちなみに、べつにそういう情報の発信者を非難しているわけではありません。
そういう方は、そもそもアスリートを想定して情報を発信しているわけではないので、「アスリートの状況に合わないだろ!」なんて言われても困るはずです。
例えるなら、ラーメン屋に行って、「なんでメニューにうどんがないんだ!おれはうどんが食べたいのに!」とクレームをつけるようなもんです。
うどんが食べたいなら、うどん屋に行けばいいのです。
それは、客であるコチラ側の責任です。
同じように、アスリートとして競技力向上に役立つ情報を仕入れたいなら、それに適した情報を探して仕入れるのは、仕入れる側であるアスリートの責任です。
「トレーニングしかしない人」を対象にした情報に注意すべき理由
たとえば、ボディビルダー等は、全身をいくつかの部位に分けて、1回のトレーニングでは1つの部位だけを複数のエクササイズを用いて追い込むまで鍛えるような「分割法」とか「スプリットルーティン」と呼ばれる手法を用いるのが一般的です。
胸の日、背中の日、肩の日、脚の日・・・といった具合です。
このやり方が良い悪いということではなく、トレーニング以外に競技の練習もしないといけないアスリートには合わない可能性が高いです。
身体の特定の部位だけが極度に疲れていたり筋肉痛がひどかったりという状態では、全身を連動させて動くような競技の動きに悪影響を及ぼすし、技術の習得という点でもマイナスです。
アスリートの場合は、1回のトレーニングで全身をまんべんなく鍛えるようなプログラムのほうが適しているでしょう。
その場合でも、疲労や筋肉痛を完全にゼロにすることは難しいかもしれませんが、全身がまんべんなく同じように疲労しているほうが、身体の一部だけが極度に疲労しているよりも、練習への悪影響は少なく済むはずです。
» 参考:【論文レビュー】筋トレによるダメージや筋肉痛が残っている状態で練習すると技術習得が阻害される!?
また、同じような議論は栄養のアドバイスにも当てはまります。
①の「トレーニングしかしない人」を対象とした情報を見ている時に、「ウエイトトレーニングはやってもせいぜい2時間程度だから、トレーニング中にエネルギー源として糖質を補給する必要はない。ウエイトトレーニング中の栄養補給はBCAAやEAAまたはプロテインだけで十分だ」みたいなアドバイスを目にしました。
ウエイトトレーニングしかしない人にとっては、もしかしたら適したアドバイスなのかもしれません(それでも糖質は摂るべき、という議論もあるでしょうが)。
しかし、ウエイトトレーニングをした後に、競技の練習もしないといけないようなアスリートの場合は、ウエイトトレーニング中も糖質を補給するメリットはあるはずです。
たとえ、ウエイトトレーニング中の糖質補給が、ウエイトトレーニングのパフォーマンス(挙上重量、レップ数)やトレーニング効果には大きな影響を及ぼさなかったとしても、練習まで含めてトータルで考えると、ウエイトトレーニング中に糖質補給をしておき、エネルギー源の減少を抑えておくことが、その後の練習でのパフォーマンスをUPさせてくれるかもしれません。
トレーニングのやり方や栄養補給が、トレーニングそのものに与える影響だけでなく、競技の練習に与える影響まで考える必要が、アスリートの場合にはあります。
①の「トレーニングしかしない人」を対象に情報を発信している方には、そのような発想はないでしょうし、そもそもそんなことを考える義務はありません。
したがって、情報を見極めて、取捨選択をし、自分に合ったものを取り入れる責任はアスリート側にあります。
安全パイなやり方は、②のアスリートを対象とした情報だけを仕入れて参考にすることです。
そこの見極めさえできていれば、自分に合わないやり方を取り入れて、失敗してしまうリスクを避けることができます。
また、あえて①のトレーニングしかしない人を対象とした情報を参考にすることもできなくはないですが、それをそのまま当てはめるわけにはいかないので、エッセンスだけを抽出して、それをアスリートのトレーニングに合うような形にアレンジする必要があります。
これはアスリートにとっては難しい作業なので、それは知識のある専門家にまかせておいたほうが無難だと思います。
まとめ
ネットで得られるトレーニング関連情報の数が爆発的に増えている今、少なくとも「誰を対象にした発信なのか」は押さえておいたほうがいいでしょう。
ただし、アスリートを対象にした情報だからといって、それを鵜呑みにしてしまうのは危険です。
情報が自分に合う・合わないという問題と、情報が正しい・間違っているという問題は別次元のものです。
両方の観点で、情報を評価することができるような「リテラシー」を高めていただければ。
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【編集後記】
昨日はコーチングクリニックという雑誌からの取材を受けました。テーマは股関節と臀部。記事が掲載されたらまたお知らせします。