私は「S&Cコーチ」という肩書で活動しています。
S&Cコーチというのは、アスリートが「勝つ」ためのトレーニングを指導する専門家です。
今までは、いかにしてアスリートが「勝つ」という目標に近づくことに貢献できるか、という観点でトレーニング指導のスキルを磨いてきました。
しかし最近、アスリートではない「一般の方」のトレーニング指導を始めました。
それも究極的には、アスリートを指導するスキルを磨くことに繋がるのではないか、という下心があって始めたことです。
#715 アスリート以外へのトレーニング指導始めました
ところが、実際に一般の方のトレーニング指導を始めて1ヶ月ほどたって感じているのは、S&Cコーチのスキルは一般の方のトレーニング指導にも使える!ということです。
むしろ、S&Cコーチのスキルをアスリート指導だけに限定するのはもったいない、もっと一般の方もトレーニング指導をして貢献すべきだ!くらいの想いを強くしています。
S&Cコーチが一般の方にトレーニング指導をして効果を引き出すための条件
ただし、一般の方のトレーニング指導にS&Cコーチのスキルを使って効果を引き出すためには、条件が2つあるとも感じています:
- 条件① トレーニングの目的が、日常生活の「パフォーマンス」の向上である
- 条件② S&Cコーチが健康的なフォームを徹底してアスリートを指導している
条件① トレーニングの目的が、日常生活の「パフォーマンス」の向上である
アスリートではない一般の方がパーソナルトレーニングを受ける目的には、さまざまなものがあるでしょう。
たとえば、ダイエット・マッチョになりたい・シックスパックを作りたい等々。
正直言って、それらを目的とするトレーニングは、S&Cコーチの得意な分野ではありません。
そういうのを突き詰めて専門的にやられているパーソナルトレーナーには勝てません。
その一方で、日常生活の質の向上を目的としている一般の方のトレーニング指導においては、S&Cコーチのスキルが非常に役立ちます。
日常生活の質は「Quality of Life (QOL)」なんて言われることもありますが、要するに日常生活を送るうえで膝とか腰とか肩に痛みを感じないとか、ラクに階段をあがることができるとか、そういうことです。
そのような日常生活の「パフォーマンス」の向上を目指す一般の方をトレーニング指導するときには、スポーツにおける「パフォーマンス」の向上を目指すアスリートを指導してきたS&Cコーチの経験がそのまま使えます。
条件② S&Cコーチが健康的なフォームを徹底してアスリートを指導している
日常生活の「パフォーマンス」を向上させたい一般の方と、S&Cコーチが提供できるトレーニング指導は非常に相性がいいです。
S&Cコーチが、見た目の改善を得意とするパーソナルトレーナーとの違いを作れるのは、日常生活の「パフォーマンス」向上という部分だと思います。
とはいえ、そこの部分で貢献するためには、S&Cコーチ側に必要とされる条件があります。
それは、健康的なフォームを徹底してアスリートを指導している、という点です。※とくにウエイトトレーニングに当てはまるお話です。
ウエイトトレーニングは基本的にはケガ等のリスクが小さい活動ですが、やり方次第では逆に膝や腰や肩を痛めてしまう恐れもあります。
そのようなリスクをできるだけ排除するためには、関節等に不必要な負担がかからない「健康的なフォーム」を徹底して指導することが大切です。
普段からアスリートに対してそのような意識で指導をしているS&Cコーチであれば、それを一般の方の指導にもそのまま当てはめることができます。
一般の方は、アスリートと比べると、ウエイトトレーニングにおけるちょっとしたフォームの崩れが痛みやケガに繋がりやすいはずです。
つまり、許されるエラーの範囲が小さいはずですが、アスリート指導で健康的なフォームを徹底して指導しているS&Cコーチであれば、ビビる必要はありません。
普段アスリートに対して提供しているのと同じトレーニング指導をすればいいだけです。
もちろん、強度やエクササイズのprogressionはアスリートよりも慎重になる必要がありますが、フォーム指導という点では一般の方であれアスリートであれ変わりません。
その一方で、私が「オラオラ系」と呼んでいるS&Cコーチの場合、一般の方を指導するのは危険です。
「オラオラ系」というのは、細かいフォーム指導をせず、とりあえず重い重量を挙げさせたり、多くの回数をやらせたり、とにかくキツいことをやらせて「オラオラ、もう1回挙げろ!」と怒鳴っているだけのタイプのS&Cコーチです。
100名のアスリートを指導したら、99名は潰されるけど1名だけは生き残って結果を残すみたいなS&Cコーチです。
その1名は、遺伝的に恵まれていてケガをしづらい頑丈な身体をもっていたり、自分で勝手に健康的なフォームを身につけたりするので、潰されることなく生き残り、競技でも結果を残したりします。
それは本人の能力のおかげなので、どんなS&Cコーチの指導を受けても結果を出してしまうはずなのですが、そのアスリートの活躍だけフォーカスして取り上げられると「オラオラ系」のS&Cコーチの指導がすごいと勘違いされてしまうのが残念なところです。
愚痴はさておき、そのような「オラオラ系」のS&Cコーチが一般の方のトレーニング指導をしたら、すぐに潰れてしまいます。
膝とか腰とか肩とかを痛めてしまい、「ウエイトトレーニングは危険だ」とか「ウエイトトレーニングは私には合わない」と思われて、トレーニングをやめてしまう可能性が高いでしょう。
とても残念なことです。
したがって、あなたが「オラオラ系」のS&Cコーチであれば、一般の方のトレーニング指導はしないでください。っていうかアスリートも指導しないでください。
逆に、もし、あなたが健康的なフォームを徹底してアスリートを指導しているS&Cコーチなのであれば、一般の方の指導も問題なくできるはずです。
まとめ
まだ一般の方のトレーニング指導を開始して1ヶ月ほどしか経っていませんが、この段階で感じたことを書いてみました。
もう少し長く指導を続ければ、また違った考えになるかもしれません。
でも、健康的なフォームを徹底してアスリートを指導しているS&Cコーチであれば、日常生活の「パフォーマンス」の向上を目的にされている一般の方にも貢献できるという考えは、おそらく今後も変わらないでしょう。
逆に考えると、一般の方にも問題なくウエイトトレーニングをやっていただけるように指導できないS&Cコーチは、アスリートに対しても負担のかかる悪いフォームを指導してしまっている恐れが高いともいえます。
アスリートの生まれ持った能力や多少痛くても競技力向上のために我慢するというメンタリティに甘えているだけで、実際のところは逆に迷惑をかけているかもしれません。
普段アスリートに対して提供しているトレーニング指導が一般の方にもそのまま通用するかどうかは、S&Cコーチとしての自分の指導スキルの良し悪しを確認するうえではとてもよい指標になります。
ぜひS&Cコーチも一般の方のトレーニング指導をしていただければ。
自分のスキルを確認するだけでなく、間違いなく一般の方に対してもS&Cコーチのスキルを活かして貢献できるはずです。
「パフォーマンス」向上を目指している一般の方・アスリートからのトレーニング指導お申し込みをお待ちしています。
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【編集後記】
東京オリンピックの延期が決まりましたね。まあ、現状をみるとしょうがないと思いますが、アスリートの立場で考えてみるとキツいなという印象です。オリンピック出場権の獲得レースをやり直すのか等が決まるまでは、アスリートも不安だと思います。S&Cコーチとして私にできることは、今後の競技スケジュールの変更等を見極めたうえで、トレーニング計画を適切に修正して、今できることをやるお手伝いをするくらいです。