S&Cコーチの池田さんが、S&Cコーチの契約形態についてのブログを書かれていました。
✅ブログを更新しました
今回はチーム指導を行うS&Cコーチの契約形態について書きました。
あくまで私が知っている範囲の情報ですが。チーム専属のS&Cコーチを目指している若手の方々や、S&Cコーチの採用を検討しておられるチーム関係者の参考になれば幸いです。https://t.co/QTtFFpQ4uX
— 池田克也. S&Cコーチ (@WPC_ikeda)
S&Cコーチを目指す方は参考になると思うので、ぜひ読んでみてください。
そちらの記事の中で、「専属契約」という形で、練習や試合、遠征等にすべて同行する契約が記述されています。
そのような形でS&Cコーチとして働ける機会は少なくて貴重ですし、とてもやりがいのある活動形式だと思います。
その一方で、収入源が1つに絞られてしまう割に、多くの場合は単年契約であるため、経済的な安定性には欠ける働き方でもあります。
また、拘束時間も長くなりがちで、自由に使える時間が減ってしまうというデメリットもあるでしょう。
食べさせないといけない家族がいるS&Cコーチにとっては、なかなかリスクが高い働き方だな〜とも感じます。
S&Cコーチとしてどのような働き方を選択するかは、個人の考え方にもよるでしょうし、人生のステージによっても変わってくるはずです。
どれが正解とは一概には言えないので、さまざまな契約形態のメリット・デメリットを知った上で、自分なりに選択をしていくしかないでしょう。
とはいえ、もし可能であれば、一度は「専属契約」という形で、練習や試合、遠征等にすべて同行する活動を経験すると、S&Cコーチにとってメリットが大きいと個人的には考えています。
専属契約ではないけど、アスリートに同行した私の経験
まず始めにお伝えしておくと、私自身は、「専属契約」という形でチームもしくはアスリートに同行した経験はありません。
しかし、それにかなり近い経験をしたことはあります。
国立スポーツ科学センター(JISS)で働いていた8年間のうち、前半の4年間はマルチ・サポート事業のスタッフという立場で、頻繁に練習・合宿・試合etcに同行をしていました。
JISSでのサポート対象が日本代表選手だったこともあり、平均すると1ヶ月に1回くらい海外遠征に同行していたと思います(国際大会に出場するため)。
S&Cという専門を活かして、トレーニングやコンディショニング面でサポートするだけでなく、試合映像の撮影や加工等もやりました。
また、遠征先で選手が虫歯を悪化させた等のトラブルがあった時には、海外留学で培った英語力を活かしてサポートをしたりもしました。
完全に「専属契約」のフルタイムS&Cコーチという立場ではありませんでしたが、だいぶそれに近い形で活動をすることができていたと思います。
正直なことを言うと、当時は、遠征についていったり試合でビデオを撮ったりするよりも、トレーニング指導をもっとメインに活動したいな〜という想いがありました。
やはりS&Cコーチですから、トレーニングを計画して指導したいわけです。
しかし、今振り返ってみると、当時そのような経験をすることができて良かったな〜、と実感しています。
そして、今後S&Cコーチとして活動していきたいと考えている学生や若い人にも、アスリートやチームの練習・試合・遠征etcに同行する経験をされることを強くオススメします。
理由はシンプルに「メリットがある」からです。
アスリートやチームの練習・試合・遠征etcに同行する経験がS&Cコーチにもたらすメリット
S&Cコーチが、アスリートやチームの練習・試合・遠征etcに同行する経験をすることで得られる一番のメリットは、自分が担当している「トレーニング」以外にアスリートがやっていること(練習、試合、移動、etc)について想像することができるようになる、ということです。
視野を広げて、自分が担当する「トレーニング」というものを俯瞰して見ることができるようになる、とも言えます。
S&Cコーチとして、ジムの中にとどまり、トレーニング指導だけをしていると、どうしても視野が狭くなりがちです。
ただ、実際のところは、アスリートやチームにとって、ジムでトレーニングをする時間というのは、彼らのすべての活動時間からすると、ほんの一部でしかありません。
他にも、練習や試合や移動や取材対応や学校や仕事や、さまざまなことをやっているわけです。
トレーニングをやることが、それら他の活動におよぼす影響も考える必要があるし、逆に、トレーニング以外の活動がトレーニングにおよぼす影響も考える必要があります。
ウエイトトレーニングだけをやっている一般トレーニーや、ウエイトトレーニングがメインの活動であるバーベル競技のアスリート(例;ボディービルダー、ウエイトリフター、パワーリフター)とは異なり、競技力向上のための手段の1つとしてウエイトトレーニングを実施しているアスリートを指導するS&Cにおいては、この「トレーニング以外にアスリートがやっていることへの想像力」がとても重要です。
この想像力を鍛えるためにも、アスリートやチームの練習・試合・遠征etcに同行する経験をすることがとても役に立ちます。
私自身、S&Cコーチとして、俯瞰した物の見方を比較的早い段階で身に付けることができたと考えていますが、それは、マルチ・サポート事業のスタッフ時代に、アスリートに同行した経験が大きかったと思います。
たとえば、ヨーロッパに遠征をして、日本に帰国した後、時差ボケがどんな感じなのか、長時間の移動による疲労感がどれほどなのか、等を自分の身体で経験したことで、遠征から帰国して最初の1週間はトレーニングはかなり軽くしないとな、と気付くことができたりしました。
また、大会に同行して実際の試合を観察することができた経験が、持久力トレーニングを計画する時に役立ったりもしました。
私が同行をして実際に目にしたのは、その時にサポートをしていた競技だったりアスリートだったりに限られます。
したがって、トレーニング以外で具体的にどのようなことをアスリートがやっているのかを本当に知っているのは、それらの競技やアスリートに限られます。
それでも、その時の経験が、帯同をしたことのない競技のアスリートをトレーニング指導する際にも役に立っているのは間違いありません。
アスリートや場合によっては競技コーチともコミュニケーションを図りつつ、トレーニング以外でどのような活動をしているのかを想像したうえで、具体的にトレーニングの内容を決めることができていると思います。
まとめ
アスリートはトレーニング以外にもさまざまな活動をしている。
そんなことは当たり前だと思われるかもしれませんし、べつにアスリートやチームに同行をする経験なんかしなくても十分想像できる、とも思われるかもしれません。
確かにそうかもしれませんが、私の経験上、実際に同行をして目の当たりにしたことが、S&Cのプログラムデザインに大きな影響を与えているのは間違いありません。
たとえば、プログラムAとプログラムBという2つの選択肢があったとして、前者は体力向上効果が大きいけどアスリートを追い込んでしまうので深刻な疲労や筋肉痛を引き起こしてしまう、後者は体力向上効果はプログラムAの8割程度に過ぎないけど、疲労や筋肉痛は最小限で済む、という状況があったとしたら、あなたはどちらを選択しますか?
私は迷わずにプログラムBを選択します。まったく迷わずに、です。※もちろん場合もよりますが。
そんな選択を迷わずにできるのも、アスリートやチームに同行した経験をしたことで、彼ら・彼女らにとってトレーニングが全てではない、ということが頭に叩き込まれているからです。
トレーニングはあくまでも補強にすぎないんです。メインは練習や試合です。
トレーニングを計画する時に、それがもたらす体力向上効果のことだけを考えるのではなく、疲労や筋肉痛といったネガティブな効果が練習や試合でのパフォーマンスに及ぼしうる影響までを想像した上で、最終的な決断を下せるようになる。
それが、私が考える、アスリートやチームの練習・試合・遠征etcに同行する経験がS&Cコーチにもたらすメリットです。
将来S&Cコーチを目指す学生や若い方は、そのような経験をする機会があったら、無償でボランディアでもやっておいたほうがいいと思います。
その経験が、必ず将来に活きるはずです。
まあ、私も今となって振り返ってみれば良い経験だったな、と言えるんですが、当時はそうは思っていなかったです、正直なところ。
だからこそ、この経験を若い方にフィードバックできたらな、と思い記事を書きました。
経験をフィードバックするということに関連して、NSCAジャパンが「キャリアインタビュー」という企画をスタートして、すでに活躍されているS&Cコーチ等にこれまでのキャリアについて語ってもらっている動画を配信しています。
多くの方の経験を知ることができるという点で素晴らしい企画だと思うので、ぜひチェックしてみてください。
参考 キャリアインタビューNSCAジャパン
私自身のキャリアについては、音声教材で語っているので、興味のある方はチェックしてみていただければ。
音声 【雑談集】S&Cコーチになるまでの私の経歴
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【編集後記】
だいぶ楽天経済圏への移行が進んできて、ポイントが貯まるようになってきました。
楽天経済圏って何?という方はこちらの動画を参考にされてください。