バーベル等の外的な負荷を使った、いわゆるウエイトトレーニングを否定する運動指導者がいます。
そういう人たちの理屈(屁理屈?)として、以下のようなことを最近耳にしました:
- 筋肉がつけばすべてがうまくいくということであれば、ボディービルダーは全員、なんの競技やらせても金メダル取れるはず!
- 筋力アップして球速上がるなら、一流投手はみんなもっとムキムキのはず!
「なんて頭が悪いんだろう・・・」と思って力が抜けてしまいます。
そんな程度の低い人たちのことなんて放っておけばよいのかもしれませんが、そのようなトンデモ理論を目にして「ウエイトトレーニングは必要ないんだ!」と勘違いしてしまうアスリートが増えるのもイヤなので、とりあえず解説しておきます。
ウエイトトレーニングを否定する屁理屈の否定
①ボディビルダーがメダル取れるわけない!?
それぞれの競技種目でメダルを取るようなアスリートは、その競技がうまいから良い成績を出すわけです。
下手だったらメダルなんて取れるわけありません。
したがって、ウエイトトレーニングをガシガシやっていて筋肉ムキムキであるボディビルダーであっても、その競技の素人であればメダルなんて取れるわけありません。
下手なんですから。
そんなの当たり前です。
でも、もともと競技がうまいアスリートが適切なウエイトトレーニングを実施すれば、筋力や柔軟性等の体力を向上させることができます。
そして、体力が向上することで、傷害リスクの低減・練習の質や量の増加・競技パフォーマンスのポテンシャルUP等のさまざまな恩恵を受けることができるのです。
その結果、競技成績をさらに向上させることが可能になるでしょう。
したがって、ボディビルダーがいろいろな競技に挑戦したとしても良い成績を出せるわけではない、という当たり前の事実を持ち出して、ウエイトトレーニングを否定する根拠にしているのは頭が悪いとしか言いようがありません。
もう少し論理的思考力を磨いたほうがよいでしょう。
ボディビルダーの人たちからしたらいい迷惑です。
②一流投手はみんなムキムキのはず!?
一流アスリートの特徴を調べることで、その競技で活躍するために必要な要因を探ろうとすること自体は悪いアイデアではありません。
でも、それですべてが説明できると思っているなら、それは単純すぎます。
もちろん、一流アスリートは一流たりえる特徴を有しているはずですが、だからといって一流アスリートの特徴すべてが一流になるのに必要なわけではないし、一流アスリートが持っていない特徴が一流になるために不必要というわけでもありません。
たとえば、サッカーの中田英寿選手や体操の内村航平選手は、野菜嫌い&お菓子好きということが知られています(Googleで調べれば情報は見つかります)。
じゃあ、野菜を食べずにお菓子をムシャムシャ食べていれば、彼らのような一流アスリートになれるのでしょうか?
そんなわけないでしょ。
一方で、野菜を食べるのは栄養面から考えても重要です。
それに反対する人は少ないでしょう。
野菜を食べたからといって一流アスリートになれるわけではないし、一流アスリートの中には野菜嫌いの人もいるけど、それは野菜を食べることの重要性を否定する根拠にはなりえません。
この野菜の理論にウエイトトレーニングを当てはめてみればわかりやすいでしょう。
ウエイトトレーニングがそんなに重要なら、一流投手はみんなムキムキのはずだ!なんて言っている人の理屈は、アスリートにとって野菜が大切なら、中田選手や内村選手も野菜好きのはずだ!って言っているようなもんです。
まとめ
結局、頭の悪い人には運動指導者は務まらない、ということに尽きます。
筋肉の名前を憶えたりATP再合成の経路を憶えたり、といった類の頭の良さだけでなく、「論理的に物事を考えることができる能力」が必要なんです。
残念ながら、そのような能力がない人は、自分にそのような能力がないと気づくことすらできないので、自分が恥を晒しているという意識がないままにトンデモ理論を垂れ流してしまいます。
さらに悪い事に、そんな人が一流アスリートの担当になってしまうと、その運動指導者の能力の無さなんて吹き飛ばしてしまうほどの圧倒的なアスリート自身の能力によって良い成績を出してしまうので、トンデモ理論がさも正しいかのようにメディアに取り上げられる機会も増えてしまいます。
あ〜、無力感・・・。
そんな人たちよりも、プロ野球の大谷選手のほうがよっぽど頭がよく、ウエイトトレーニングの役割が理解できています。
爪の垢を煎じて飲んで欲しい(そういえば最近、大谷選手の肉体改造を批判しているバカな記事を読んだな・・・)。
» 参考:現役アスリートに参考にしてもらいたい、トレーニングに対するプロ野球日本ハム大谷選手の考え方
私にできることは、ブログやツイッターで正しい知識を啓蒙することと、目の前のアスリートがいい思いをしてもらえるようにベストのサービスを提供することだけです。
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【編集後記】
また新たな論文査読をしました。
クオリティーがイマイチだったので、コメントはサラッとしたものだけにしてRejectとさせてもらいました。
こういうケースは仕事量が少ないので比較的ラクです。