先日、以下のようなツイートをしました:
S&Cコーチはプラスを提供するだけでなく、マイナスを取り除く/防ぐことでも競技力向上に貢献できる。
前者は時間がかかるけど、後者はすぐにできる。
— 河森直紀 Naoki Kawamori (@kawamorinaoki)
これについて深堀りしてブログを書いてみます。
S&Cコーチとして提供するプラスの効果
S&Cコーチに求められている究極の役割は「競技力向上に貢献すること」です。
一般的には、トレーニング指導を通じてアスリートの体力を向上させることで、その役割を果たすのがS&Cコーチです。
この「トレーニング指導をして体力を向上させる」というのは、冒頭で紹介したツイートでいうところの「プラスを提供する」にあたります。
そして、これも冒頭のツイートで言及しましたが、「プラスを提供する」プロセスには時間がかかります。
体力を向上させるだけなら数ヶ月程度、そこからさらに向上した体力が競技動作の改善に結びついて、それが競技成績UPとしてあらわれるまでには年単位の時間がかかる、というのが私の持論です。
» 参考:トレーニング効果が競技成績向上に結びつく実感を得るには年単位の時間がかかる
マイナスを取り除くOR防ぐという貢献
見落とされがちなのが、S&Cコーチはプラスを提供するだけでなく、マイナスを取り除くOR防ぐことでも競技力向上に貢献できる、という点です。
たとえば、アスリートやチームと新規に契約をして、トレーニング指導を開始したとします。
すでに述べたように、自分が提供するトレーニング指導が実を結んで競技力向上に繋がるまでには、それなりの時間がかかります。
地道にコツコツと継続するしかありません。
その一方で、自分の前任者が提供していたトレーニング指導の質が悪く、プラスを提供するどころかむしろ足を引っ張ってしまっていたとしたら、どうでしょうか?
たとえば、健康的なフォームを徹底して指導しておらず、とにかく重い重量を挙げるようなウエイトトレーニングをやらせていたり、運動量のマネジメントをせずにヘロヘロになるまでとにかく走り込むような持久力トレーニングをやらせていたり。
結果として、トレーニングがケガや痛みに繋がったり、疲労が過剰にたまって練習や試合でのパフォーマンスに悪影響を与えていたりしたかもしれません。
そういう前任者から引き継いだ場合は、そのような不適切なやり方をストップするだけでも、競技力向上に貢献することができます。
つまり、もともとあったマイナスを取り除くことで、プラスマイナス合計ではプラスにすることができる、ということです。
そして、このマイナスを取り除くという貢献は、時間がかからず、すぐにできます。やめればいいだけですから。
ほかの例をあげると、重要な大会に向けての最終調整期間中に、追い込むような練習・トレーニングをしようとしているアスリートやチームがいたとします。
拙著「ピーキングのためのテーパリング」でも書いたように、これはコンディション調整が失敗するリスクが高いダメなやり方です。
疲労が抜けきらずに、逆にコンディションが下がった状態で重要な大会に臨むことになるリスクが大です。
つまり、競技力向上にとってはマイナスなやり方です。
そんな場合に、コンディション調整の専門家でもあるS&Cコーチとして、そのような間違ったコンディション調整のやり方をやめるよう説得をして、適切なテーパリングのやり方をアドバイスすることでも、競技力向上に貢献できるはずです。
未来に起こりうるマイナスを防ぐ、ということです。
このような貢献の仕方は、重要な大会前のテーパリングだけにかぎらず、あらゆる場面でのコンディション調整にアドバイスすることで、実現することが可能なものです。
ただし、そのためには、S&Cコーチ側が「フィットネスー疲労理論」をはじめとするコンディショニングの概念を理解しておくことが必須ですが。
まとめ
プラスを提供するだけでなく、マイナスを取り除くOR防ぐことでも競技力向上に貢献できる、という考え方を紹介しました。
前者が実を結ぶまでには時間がかかるので、比較的すぐに効果の出る後者と組み合わせることで、より早い段階から結果を出す可能性を高めることができるはずです。
トレーニング効果が競技力向上に結びつくまでの長い期間、信頼してもらってトレーニングを継続してもらうためにも、短期的な効果を出せるような手段も持っておくことが戦略としても有効です。
数ヶ月で契約を切られてしまったら、プラスの効果を出せるものも出せなくなってしまうので。
動画 フィットネスー疲労理論
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【編集後記】
息子が生まれて怒涛の1ヶ月がすぎました。
沐浴とか抱っこでだいぶ腰がやられています。
まあ、今だけだから、と思って楽しんでいます。