#786 メカニズムから仮説をたてるのは重要だけど、実験してみたら仮説どおりにいかないこともある

 

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先日以下のようなツイートをしました:

 

ツイッターの140文字だけでは伝わりきらないかもしれないので、深堀りしてブログ記事にしてみます。

 

 

トレーニングにおける「メカニズム論」とは?

まずは、上記のツイートで私が「メカニズム論」と呼んでいるものについて説明します。

簡単に言うと、すでにわかっているメカニズム(=身体の仕組み)をもとに、「こういうメカニズムがあるんだから、このトレーニングをやったらこういう効果があるはずだ」という感じで、論理的に考えて仮説を立てることを指します。

 

わかりやすい例としては、「ホルモン仮説」と呼ばれているものが挙げられます。

「ホルモン仮説」については、過去にブログ記事を書いているので、そちらをまずはお読みください。

» 参考:「筋肥大のためにはセット間レストを短くすべき!」という考え方は、科学界では否定されつつある

 

要約すると、「ホルモン仮説」とは;

  • 成長ホルモンは筋肉におけるタンパク質合成を促進する作用がある
  • ウエイトトレーニングにおいては、セット間レストを短くしたほうが血中の成長ホルモン濃度が高くなる

という既知のメカニズムをもとにして、「ウエイトトレーニングおいては、セット間レストを短くしたほうが筋肥大効果が高い」と論理的に考えたものを指します。

この「ホルモン仮説」をもとに、1990年代頃から多くのトレーニング関係の教科書では、「筋肥大をするためにはレストは短く設定しましょう」と提唱されていました。

 

 

メカニズム論だけで断定的に語るのがダメな理由

一見、合理的な説明がなされているような「ホルモン仮説」ではありますが、近年ではスポーツ科学界で否定されつつあります。

というもの、実際にレストを短くする場合と長くする場合とで数週間〜数カ月間トレーニングをしてみて比較すると、両者で筋肥大の程度に差がない、もしくはレストが長いほうが筋肥大の程度が大きい、という研究結果が報告され始めたからです。

おそらく、レストを短くしてしまうと扱える重量が下がってしまうORこなせるレップ数が少なくなってしまうため、結果としてトレーニング量(volume load)が減ってしまい、筋肥大を引き起こす刺激が弱まってしまうことが大きな原因と考えられます。

つまり、「ホルモン仮説」では「トレーニング後の成長ホルモン血中濃度」という1つの要因だけをもとに筋肥大効果の良し悪しを予測しており、他の要素(挙上重量、レップ数、volume load)の影響を見落としていたということです。

 

このようなケースは「ホルモン仮説」に限られるものではありません。

メカニズムから考えると「こうなるはずだ」と思われた仮説が、実際に実験をしてみるとそのとおりにいかない、場合によっては否定される、なんてことは珍しくありません。

これは、仮説を立てるときに見落としていた要因があったり、そもそも未知の要因が影響していたり、ということが原因としては考えられます。

仮説はあくまでも仮説にすぎないのです。

実際に仮説どおりにいくかどうかは、実験をやってみて検証してみないとわからないのです。

 

そもそもメカニズム論だけですべてが解決されてしまうのであれば、研究なんてやる必要がないってことになってしまいます。

研究というのは、仮説をたてて、それを検証する作業なわけなので。

だから、メカニズム論だけで断定的に語っている人をみると、研究者の多くは「それって仮説にすぎないよね」「まだ検証されてないよね」「そんな断定的に語ったらダメでしょ」と思うはずです。

私自身も、そういう人は胡散臭く感じます。

 

 

メカニズムをもとに仮説を立てるのはOK

メカニズム論だけで断定的に語るのはダメ、と批判したものの、メカニズムをもとに仮説を立てること自体を否定するつもりはありません。

研究の最初のステップは、現時点でわかっている事実をもとにして仮説を立てることですから。

まずは仮説を立てないと実験して確かめることもできないので。

 

また、現場でトレーニング指導をするS&Cコーチの立場から考えても、メカニズムをもとに論理的に推測することはOKです。

というより、むしろS&Cコーチとして重要な能力の1つでもあります。

トレーニング指導に必要なことすべてに対して、実験によって確かめられた科学的知見が存在しているわけではないからです。

研究者であれば、「この件についてはまだ十分な研究がされていないので現時点では確実なことは何も言えず、今後の研究が必要だ」と言えば良いのですが、実際に現場で決断をしないといけないS&Cコーチはそんなこと言ってられないので。

 

ただし、

  • 実際に実験によって確かめられた科学的知見
  • メカニズムにもとづいて立てられた(まだ検証されていない)仮説

の2つは、わけて考える必要があります。

トレーニング指導においてさまざまな決断を下すときの材料として、どちらを扱っているのかは、S&Cコーチとして認識しておきたいところです。

また、他者が発信している情報をインプットするときも、どちらのタイプの情報なのかは意識しておいたほうがいいでしょう。

 

 

まとめ

仮説はあくまでも仮説であり、実験で確かめてみたらそのとおりいかないこともある、ということは認識しておく必要があります。

それを踏まえた上で、現場でトレーニング指導をするS&Cコーチは、仮説を立てて、それにもとづいてトレーニング指導を進めることも必要になります。

バランスよく、さまざまな「エビデンス」を活用して、その時点でベストと考えられるトレーニング指導を提供する努力をすることがプロフェッショナルの努めでしょう。

» 参考:「エビデンスに基づくトレーニング指導」っていうのは難しいことではなく、当たり前のことです

 

 

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【編集後記】

息子の沐浴に悪戦苦闘しています。腰から上背部まで、背中全体がバキバキになります・・・。

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