#660 持久系アスリートが軽い負荷で高レップ数(しかも追い込むまで)の筋トレをやらないほうがいい理由を科学的に説明してみた

※本ブログはアフィリエイト広告を利用しています

 

Candra winata CYOFvtpOIpU unsplash

 

ウエイトトレーニングにおける「low load vs. high load」

ここ5年ほどの間、ウエイトトレーニングに関する研究の世界では、「low load vs. high load」というのが1つのホットトピックになっています。

これまで、筋肥大のためには、ある程度の高重量(たとえば1RMの70%以上)を用いてウエイトトレーニングを実施するのが必要だと考えられてきました。

しかし、ここ最近では、1RMの50%以下のような軽い重量であっても、もうそれ以上持ち上げられなくなるまで追い込んでトレーニングをすれば(repetition failure)、高重量と同程度の筋肥大効果を得ることができるとするデータが報告されるようになってきたのです。

もし、これが事実なのであれば、筋肥大のために重要なのは「負荷の大きさ」ではなく「repetition failureまで追い込むこと」ということになります。

このトピックに関連した論文については、以前にも本ブログで取り上げました。

» 参考:学術論文を批評的に読むということ①

 

ここ最近は、「low load vs. high load」に関連する論文の数も増えてきて、このテーマについてメタ分析をした結果も発表されています(Schoenfeld et al. 2017)。

そのメタ分析の結果としては:

  • ①筋肥大効果については、low loadとhigh loadで差がない
  • ②筋力向上については、high loadのほうが効果が高い

という傾向が見えたということです。

これは、このテーマに関する複数の論文を私が読んで抱いていたイメージと一致しています。

つまり、repetition failureまで追い込むという条件下では、軽い重量でウエイトトレーニングをしても、重い重量を用いるのと同じくらい筋肥大効果はあるけど、筋力向上効果では劣るということです。

 

このデータをどう解釈したらいいのかについては、いろいろな見方があると思います。

ウエイトトレーニングをやる目的であったり、ウエイトトレーニングの内容を選ぶときの優先順位だったりによって、解釈の仕方は大きく異なるでしょう。

たとえば、筋肉を大きくさせたいような人(例:ボディビルダー)の視点と、挙上重量を増やしたいような人(例:パワーリフター)の視点では、このデータの見え方が違うはずです。

このデータをどう解釈するのか、その正解は1つではないのです。

 

 

持久系アスリートが軽い負荷で高レップ数やらないほうがいい理由

一般的には、上で例に挙げたように、ボディビルダーやパワーリフターの関係者が興味を示すような「low load vs. high load」というテーマですが、今回は、持久系アスリートの視点でこのデータを解釈してみます。

おそらく、持久系アスリートの視点から「low load vs. high load」の最新研究結果について考えるというのは、なかなか思いつかないアイデアのはずです。

われながら、これを思いついたときには、「俺って天才か!?」と興奮したほどです。

ま、実際は私が天才だからではなく、常に論文を読み、常にブログを書くためにネタを探し、常に自分の頭で考え続けているからこそ、思いついたのですが。

やはり、S&Cコーチも論文を読むこと・ブログを書くことがオススメです。

 

話をもとに戻しまして、持久系アスリートが競技力向上に繋げるためにウエイトトレーニングを取り入れる場合、よくある典型的な間違いが「軽い負荷で高レップ数やる」というものです。

おそらく「持久系競技には持久力が必要なんだからウエイトトレーニングも高レップ数で実施しないとダメなんだ〜!」とか「重い重量でウエイトトレーニングやったら筋肉は太くなって体重が増えすぎちゃうよ!」という短絡的な考えにもとづいているのだと推測されますが、これは完全にシロウトの考えです。

こんな間違った考え方にもとづいて、間違ったやり方(軽い負荷・高レップ数)でウエイトトレーニングをやっても、パフォーマンス向上には結びつかないでしょう。

むしろ逆効果になるリスクさえあります。

 

そんなことは、そもそもなぜウエイトトレーニングをやるのか?という根本的な考え方を理解できていればわかることです。

それについては、過去に本ブログで説明してあるので、そちらをお読みください。

» 参考:持久系アスリートだからといって、ウエイトトレーニングを低負荷・高レップ数でやらせるなんて、シロウトの考えです

 

リンク先のブログで説明したように、「そもそも論」で考えれば、持久系アスリートだからといってウエイトトレーニングを「軽い負荷で高レップ数やる」のがいかに愚かな考えなのかは一目瞭然のはずです。

さらにとどめを刺すために、そのやり方がいかに間違っているのかを「low load vs. high load」の研究結果をもとに考えてみます。

 

持久系アスリートがウエイトトレーニングを「軽い負荷で高レップ数やる」というのは、「low load vs. high load」の議論における「low load」型のトレーニングとほぼ一致します。

で、すでに説明したように、low loadはhigh loadと同じくらい筋肥大効果はあるけど、筋力向上効果は劣るのです。

となると、まず、「high loadだと筋肉が太くなって体重が増えちゃうからlow loadのほうがいい」という考え方は否定されます。

筋肥大効果は同じくらいなので(限界まで追い込めば)。

実際のところ、競技練習でかなりの運動量をこなしている持久系アスリートの場合、重量にかかわらず、ウエイトトレーニングをやったところで、大きな筋肥大が起こる可能性は低いと考えられます。

「干渉作用」という現象が起こるのが理由ですが、ここでは深堀りしません。

» 参考:動画 コンカレントトレーニング入門

 

また、筋力向上効果を考えると、low loadはhigh loadに劣るので、low loadをあえて選択する理由はありません。

できるだけ筋力向上効果は抑えつつ、筋肥大効果を最大化したい、なんて考える持久系アスリートはいないでしょうから。

したがって、たとえ持久系アスリートであっても、ウエイトトレーニングにおいては高重量を低レップ数で実施したほうがメリットが大きいのです。

 

こんなことを言うと「持久系アスリートがウエイトトレーニングをやる理由は最大筋力の向上ではなく、筋持久力の向上だ!」と反論されるかもしれません。

じゃあ、持久系アスリートにとって必要な筋持久力ってなんなのでしょうか?

軽い負荷をたとえば50レップとか100レップとか持ち挙げる能力のことですか?

50レップなら数分間でこなせると思うのですが、数分間だけ力を発揮するような筋持久力を向上させることが、たとえば2時間を超えて走るようなマラソン選手にとって、どう意味があるのでしょうか?

むしろ、2時間以上力を発揮するような筋持久力を鍛えるために、ウエイトトレーニングにおいても2時間以上ノンストップで動き続けるというのであれば、まだそちらのほうが理屈は通ります。

しかし、それだったらウエイトトレーニングなんかじゃなくて、普通に走り込めばいいはずです。

わざわざバーベルとかダンベルとかを持ってやるようなことではありません。

 

 

まとめ

ここ最近ホットトピックとなっている「low load vs. high load」の研究結果をもとに、持久系アスリートが軽い負荷で高レップ数(しかも追い込むまで)のウエイトトレーニングをやらないほうがいい理由について考えてみました。

YouTubeやインスタグラムで、エクササイズのやり方等の情報を集めるのは容易になってきました。

しかし、そもそもウエイトトレーニングをやる方向性の段階で間違ってしまうと、エクササイズ選択やエクササイズのフォームがバッチリだったとしても結果には繋がりません。

指導者であれば、正しい方向性にアスリートを導けるように、常に自分の頭で考え続ける必要があります。

アスリートであれば、正しい方向性に導いてくれるような指導者から指導を受けることができれば、手っ取り早く競技力向上に繋げやすいでしょう。

 

さらにいうと、エクササイズのフォームについても、どういうやり方が正しいかは方向性によって変わるので、その2つを切り離して考えるのは難しいです。

正しい方向性を示した上で、それに沿ったやり方でエクササイズのフォームを教えてくれる指導者を探してみてください。

もちろん、私にご依頼いただくのがベストです。

トレーニング指導のご依頼はコチラから

 

本ブログ記事で紹介した内容をさらに詳しく解説している動画教材を販売しています。

他のトピックについても網羅しているので、持久系競技のためのウエイトトレーニングについてさらに知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。

動画 持久系競技のためのウエイトトレーニング

 

 

|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||

【編集後記】

昨日は「トレーニングのパフォーマンスを測る」セミナーを受講しました。

参加者の2/3くらいが知り合いでびっくり。

自分の周りに勉強熱心な人が多いのは嬉しいことです。

で、セミナーで1番印象に残ったのがこちらの動画です。