一見、当たり前のようですが、ときどき忘れてしまいがちなことを書いてみます。
自分自身に言い聞かせるという意味も込めて。
フォームが崩れて声がけしても修正できなかったケース
先日、アスリートのウエイトトレーニングを指導していた時に起きた出来事です。
大会に出場していたため、しばらくウエイトトレーニングをやっておらず、久しぶりに再開した最初のセッションでした。
オーバーヘッドプレスの1セット目(全3セット中)をやっている時に、指定されたレップ数はこなせていたのですが、フォームが崩れていました。
具体的には、コンセントリック初期に腰が反ってしまい、バーが身体から離れてしまっていたのです。
指定されたレップ数をこなせていたとはいえ、これには2つの点で問題があります:
- ①腰への負担が増えて、ケガや痛みに繋がりかねない
- ②肩の筋力を鍛えたいのに、刺激が胸の筋肉に逃げてしまう
久しぶりのウエイトトレーニングだったので、ちょっと身体の動かし方を忘れていただけかと思い、フォームのエラー修正のための「声がけ」をしました。
「声がけ」は英語では「キューイング(cueing)」と呼ばれているものです。
具体的には「バーを前に押して顔から離れないように、顔の近くにキープしたまま真上に押そう」とか「ケツ・お腹・もも前に力を入れよう」といった趣旨の声がけをしました。
で、結果としては、最後の3セット目でもエラーの修正はできませんでした。指定されたレップ数はこなせましたが。
フォームのエラーが修正できなかった原因として
- フォームのエラーを見定める私の目が不確かだった
- エラーは正しく認識していたけど、それを修正するための声がけが下手だった
という可能性もありますが、今回に関してはそれはないという自信がありました。
そこで私が判断したのは「単純に肩の筋力不足だった」ということです。
一時的に疲労が溜まっていたのか、しばらくウエイトトレーニングができておらず筋力が落ちていたか、どちらかです。
だから、肩の筋力不足を補うために、無意識に胸の筋肉を使おうとして、腰を反るようなフォームになってしまっていたのでしょう。
このように、フォームが崩れていて、声がけをしても修正できず、その原因が単純に筋力不足にあると想定される場合、適切な解決策は「重量を減らすこと」です。
そこで、次回オーバーヘッドプレスをやる時には、大幅に重量を減らしてオーバーヘッドプレスをやるようアスリートに指示をしました。
「なんだ、そんな単純なことか!」と思われるかもしれませんが、意外に忘れがちなことではないでしょうか。
私も今回のケースでは、遅くとも2セット目が終わった段階で「単純に肩の筋力不足が原因だろう」と判断し、3セット目で重量を下げてやってもらうべきでした。
その判断が遅れてしまったと反省しているところです。
そして、この失敗を忘れずに私の記憶に残るようにと、このブログ記事を書くことにしました。
フォームが崩れたときに重量を下げるという判断をするために
今回、私の判断を遅らせた原因の1つに「指定されたレップ数はこなせていた」という事実があります。
これが仮に、5レップやる予定が3レップしかこなせなかったのであれば、「重量が重すぎるから下げよう」と判断することは簡単だったでしょう。
しかし、フォームは崩れているものの指定されたレップ数はこなせていただけに、重量を下げることよりも声がけでエラーを修正することを優先したのです。
その一方で、「指定されたレップ数はこなせていた」にもかかわらず、次回は大幅に重量を下げるという判断を下しました(判断は遅れましたが)。
なぜでしょうか?
それは、「できるだけ重いバーベルを頭上に持ち挙げる」ことが目的でオーバーヘッドプレスをやってもらっているわけではなく、「健康的に、特定の筋肉(肩)や動き(vertical push)の筋力を向上させる」ことが目的だからです。
そのために、わざわざ面倒くさいフォームを指定してやってもらっているのです。
» 参考:Over-Head Press(外部サイト、有料)
もし、前者が目的なのであれば、腰を反らしたフォームのほうが、肩よりも筋力の強い胸も使えるので、目的には適っているはずです。
オーバーヘッドプレスの挙上重量を競い合うスポーツに参加するのであれば、それで良いと思います。
実際、ウエイトリフティング競技では昔「クリーン&プレス」という種目が存在し、その動画をYouTube等で検索して見ていただければ、かなり腰を反って胸の筋肉を使うようなフォームでやっていたことがわかるはずです。
しかし、究極的には競技力向上に繋げるために、肩の筋力やvertical方向に押す筋力を向上させることが有効だという判断のもとで、その目的を達成するためにオーバーヘッドプレスを実施するのであれば、それに則したフォームで実施することが必要です。
なんでもかんでも重い重量を持ち上げられればいいというわけではありません。
この考え方は、オーバーヘッドプレス以外のエクササイズにも当てはまります。
フォームが崩れた時に、重量を下げるという判断を下すためには
- そもそも何の目的でそのエクササイズを実施しているのか
- その目的を達成するために適切なフォームはどういうフォームなのか
の理解が必要不可欠です。
そのうえで、フォームが崩れた時に、必要な声がけをしてもフォームが修正されなかったら、単純に筋力不足だなと判断して、重量を下げるという解決策を取ることになるわけです。
まとめ
私としては、今回のケースは反省すべき失敗です。
もう1セット早く、重量を下げるという判断をするべきでした。
しかし、今回、ブログ記事としてこの経験を書き残すことで、今後同じようなシチュエーションに出くわした時に「もしかしたら単純に筋力不足だから、重量を下げたほうがいいのでは?」という選択肢が思い浮かぶ可能性が高まるはずです。
もしブログを書いていなかったら、トレーニング指導中にちょっと思い浮かんだこともすぐに忘れてしまっていたかもしれません。
「あ、ブログのネタになるな」と考えて、実際にブログ記事を書く過程で、自分の行動や思考を振り返り、考える機会を作ることができました。
ブログを書くことで、確実にS&Cコーチとしての腕は磨かれるのです。
読者の役に立ちつつ、自分の腕も磨けるという一石二鳥のブログ執筆をぜひともやってみてください。
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【編集後記】
昨日は妻と娘とお台場にドライブ。
billsでリコッタパンケーキを食べました。
美味しゅうございました。