#627 高強度インターバルトレーニング(HIIT)はそれほど高強度ではない!?

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Chase kinney 801570 unsplash

 

アスリートの持久力を向上するための手段として、「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」が注目を集めています。

私もブログで何度か取り上げていますし、HIITをテーマにセミナーも開催しています。

また、実際にさまざまな競技のアスリートに対して、HIITプログラムを提供してやってもらってもいます。

 

そんなHIITですが、名前のなかに「高強度」と入っているにもかかわらず、実はそれほど高強度ではない、と言ったら、どう思われますか?

 

 

高強度インターバルトレーニング(HIIT)における運動強度

議論を単純にするため、「走る」という運動様式を用いた「ラン系のHIIT」に話を絞ります。

※コンセプトは、自転車やローイングetcの他の運動様式にも当てはまります。

 

一般的に、HIITの運動強度は、最大酸素摂取量に相当する走速度(vVO2maxまたはMAS)を目安に設定されることが多いです。

私の主観でしかないですが、研究や現場で使われるプロトコル等を見ると、だいたい100~120% vVO2max程度の強度が一般的かな〜と思います。

 

この強度は比較的キツいため、このスピードを維持したまま5分も10分も走り続けることは難しいです。

だからこそ、間に休憩を挟んでランを繰り返す「インターバル形式」を採用するわけです。

» 参考:高強度インターバルトレーニング(HIIT)が流行っているけど、そもそも「インターバル形式」を採用する理由って何?

 

 

高強度インターバルトレーニング(HIIT)はそれほど高強度ではない!?

  • 最大酸素摂取量というのは有酸素能力の上限の閾値である
  • インターバル形式を採用しないと、継続して走ることができないくらいキツい

ということを考えると、HIITを「高強度」と呼ぶことに問題があるとは思えないかもしれません。

しかし、視野をちょっと広げてみて、短距離の全力スプリントにおける最大スピード(MSS; maximal sprinting speed)とvVO2maxを比較してみると、違った見え方に気づくはずです。

 

MSSは一般的に、40-50mほどの全力スプリントを実施して求めます。

具体的な計算の仕方は、どんな測定装置を使えるかによって異なります。

レーダー・レーザー式の速度計を使えるのであれば、スプリント中のスピードをずーっと測定しておいて、その中のピーク値をMSSとします。

もし、光電管等しか使えないのであれば、10mごとにゲートを設定しておいて、10mスプリット毎の平均スピードを計算し、その中で最も高い値をMSSとします。

 

MSSの求め方がどうあれ、コンセプトとしては、MSSは全力スプリントをした時の最高スピードのことを指します。

このMSSと比較してみると、vVO2maxはだいぶ遅いです。

たとえば、Sandfordら(in press)の研究によると、800mランナーのMSSとvVO2maxは以下のとおりです:

  • MSS:33.68 ± 0.63(km/hr)
  • vVO2max*:22.76 ± 0.50(km/hr) *論文中はMASと表現

割合で考えてみると、vVO2maxはMSSの約68%にすぎないということになります。

また、仮にHIIT中にvVO2maxの120%のスピードで走るとしても、MSSの約81%にすぎません。

 

これを図でビジュアル的に見てみると、以下のようになります。

スクリーンショット 2019 03 13 18 54 53

つまり、何が言いたいのかというと、HIITで一般的に設定される強度(=走スピード)は、MSSと比べると低いということです。

したがって、HIITは「高強度」という言葉が名前の中に入っていますが、実際のところはそれほど高強度ではないと捉えることもできるのです。

MEMO

ただし、HIITの中でも「sprint interval training」とか「repeated sprint interval training」と呼ばれるタイプのものは、30秒間または3-7秒間の運動中は全力でスプリントをするので、走スピードもMSSに近くなり、「高強度」と呼ぶことに問題はありません。

 

 

まとめ

「高強度」インターバルトレーニングと呼ばれるHIITですが、実はそれほど高強度ではない、という考え方を紹介しました。

これだけの話だと「あ、そう。で、だから、なんなんだよ!」と言われてオシマイになってしまいそうです。

しかし、MSSとvVO2maxとでは、走速度にだいぶ差があるということをここで認識しておいていただくと、「Anaerobic Speed Reserve」と呼ばれる別のコンセプトを理解することに繋がっていきます。

「Anaerobic Speed Reserve」というコンセプトは、HIITの運動強度を設定する上で非常に重要になってくるものであり、S&Cコーチとして押さえておくべきコンセプトの1つです。

具体的に「Anaerobic Speed Reserve」が何なのかについては、今後、ブログで紹介する予定です。

動画 非持久系競技のためのHIIT

 

2020/9/25追記:Anaerobic Speed Reserveについてブログを書きました。

» 【Anaerobic Speed Reserve】高強度インターバルトレーニング(HIIT)の運動強度を設定する時に知っておきたいコンセプト

 

 

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【編集後記】

娘が順調に体重を増やしており、沐浴がどんどん腰にきつくなってきています。最近は腰の痛みをかばうあまり、左股関節に痛みが出てきました。でも、沐浴できるのもあとわずかなので、この幸せを噛み締めながら頑張りたいと思います。