以前にブログでも宣伝しましたが(コチラ)、昨日JISSスポーツ科学会議が開催されました。私がオーストラリアの大学院に留学していた時の恩師であるDr. Robert Newtonが特別講演のスピーカーとして招待され、『High Performance Athlete Assessment and Training: Latest Methodologies』というタイトルでお話をされました。
講演内容メモ
講演を聞いて私がメモした内容をランダムに紹介したいと思います。
- 筋の「力ー速度関係」から理論的に考えると、単に最大筋力を向上させるだけでパワーも向上させることができる
- 筋力が弱いアスリートにおいてパワーを向上させたい場合、高重量筋力トレーニング(75-90% 1RMでスクワット)と軽重量パワートレーニング(0&30% 1RMでジャンプスクワット)のどちらも同じくらい効果がある
- 筋力が強いアスリートは弱いアスリートと比較して、パワートレーニングを実施した時の効果がより大きい傾向があり、その効果(あるいはパワートレーニングによる適応)がより早く見られる
- したがって、筋力が弱いアスリートがパワー向上のためにトレーニングを実施する場合、まずは高重量筋力トレーニングを実施したほうが効果的かつ効率的である(筋力とパワーの両方を向上させることができるから)
- じゃあどの程度の筋力を目指せば良いのか?→1つの目安として「スクワット1RMが体重の2倍」を目指すと良い→筋の「力ーパワー関係」によると、負荷が最大筋力値の約1/3程度の時にパワーが最大になるので、スクワットの最大筋力が体重の2倍(自体重を含めると3倍)ということは自体重のみでジャンプ等をすると、その負荷が最大筋力値の約1/3程度になるのでパワーが最大化される可能性が高い
- 筋はそれ自体がホルモン等を分泌する器官であり、骨や脂肪組織などに影響を与えることができる
- 身体内の環境を「同化(=anabolic)」状態にしておく(例:高いテストステロン値/低いコルチゾール値)ことによって、疲労からの回復を早めたりケガのしづらい身体を作ったりすることが可能→レジスタンストレーニングを活用することで、ドーピング違反になるような薬に頼ること無く、同化状態を作ることができる
- 競技シーズン中でも、レジスタンストレーニングを少なくとも7-10日間に1回は実施することによって、筋力・パワー・体重・走スピードetcを維持することが可能になる
- 競技シーズンが始まると試合や練習が中心になり、レジスタンストレーニングに時間を割いてくれなくなる競技コーチが多い
まとめ
とりあえず「これは!!」と思ったことをメモっただけなので、取り留めもない感じです。
Dr. Newtonが伝えたかったことをシンプルにまとめると『筋力トレーニングはどんな競技のアスリートにとっても必要なベーシックなトレーニングであり、オフシーズンであろうがシーズン中であろうが1年中実施し続けるべきものである』ということだと思います。これは私自身も前から考えていたことであり、他の多くのS&Cコーチにとっても当たり前な考え方だと思います。
しかし、競技コーチやアスリートはそこまで筋力(とそれを向上させるトレーニング)の重要性を理解していないケースが多いです(特にシーズン中に継続して筋力を鍛えることの重要性)。今回のJISSスポーツ科学会議にはS&C専門家だけではなく競技コーチも多数参加されていたので、そういった方々がDr. Newtonの講義を聞いて筋力(トレーニング)の重要性を少しでも認識してもらえたら助かるな〜と期待しています。
2016/9/21追記:Dr. Newtonの講演のストリーミング映像がJISSのHPにアップされていました。Dr. Newtonの映像が私のPCでは映らないのですが、スライドは見れて音声も聞けます。興味のある方はチェックしてみてください↓
特別講演「ハイパフォーマンスアスリートのためのコンディショニング:最新の研究結果と現在の傾向」
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【編集後記】
今週はDr. Newtonの受け入れ準備やお世話、接待等で忙しく、精神的にも肉体的にもかな〜り疲れました。でも久しぶりにDr. Newtonと会ってS&Cに関して話をするうちに「やっぱりS&Cは面白い分野だな〜」という想いを強くしました。再び研究をやってみたい気持ちも少しだけ刺激されました。何より、Dr. Newtonのような素晴らしい研究者を「私の恩師です!」と言えることは非常に誇らしいことだと改めて感じました。残念なのは、Dr. Newtonのスゴさを理解できる人が日本には少ないということでしょうか・・・。